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2023年01月10日

腸内細菌は糖尿病に影響 善玉菌が糖尿病から保護 腸内環境を健康にする方法とは?

 あるタイプの腸内細菌が2型糖尿病のリスクを高めていて、糖尿病から保護する働きをしている腸内細菌もあることを示した研究が発表された。

 腸内環境を健康にする方法も提案されている。腸内環境について、血圧から糖尿病、体重管理まで、健康とのさまざまな関連が解明されてきている。

腸内環境は糖尿病にも影響

 人の腸内には、500~1,000種類、100兆個と推定される腸内細菌が生息している。さまざまな種類の菌が一面に広がる様子がお花畑に見えることから、腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ばれている。

 腸内フローラを構成する腸内細菌は大きく、▼有害な物質をつくる悪玉菌、▼良い働きをする善玉菌、▼それ以外の日和見菌に分かれる。

 腸内フローラのバランスの乱れは、さまざまな体の不調や、ウイルスなどに対する免疫やアレルギー、うつ病や認知症の発症などのメンタルヘルスにまで影響しているとみられており、注目されている。

糖尿病から保護する働きをしている腸内細菌

 米国のシダーズ サイナイ医療センターの研究によると、あるタイプの腸内細菌が2型糖尿病のリスクを高めている可能性がある。糖尿病から保護する働きをしている腸内細菌もあるという。

 腸内細菌のひとつであるコプロコッカス属は、消化や吸収をサポートしたり、免疫機能に関わる働きをする善玉菌とみられている。ほとんどの人はコプロコッカス属の菌を保有しているが、人によって多かったり少なかったりする。

 研究グループは、腸内にこのコプロコッカス属の菌を多くもっている人は、インスリン感受性が高く、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きやすい傾向があることを突き止めた。

 この菌は、インスリン感受性に対して有益な効果をもつ細菌のネットワークを形成していると考えられる。逆に、フラボニフラクター属と呼ばれる腸内細菌を多くもっている人は、インスリン感受性が低い傾向があることも分かった。

野菜などに含まれる食物繊維などが腸内環境を改善

 研究グループは今回、40歳~80歳の米国人を2018年から追跡しており、今回の研究ではそのうちの糖尿病と診断されたことのない352人のデータを分析した。期間中に、28人が糖尿病、135人が糖尿病予備群と判定された。

 これまでも、野菜や穀類などに含まれる食物繊維やオリゴ糖は、腸内細菌により分解されて、短鎖脂肪酸になり腸内環境を改善しているという研究が報告されている。短鎖脂肪酸は、エネルギー源として利用されたり、基礎代謝の向上、免疫の調整などに関わっていると考えられている。

 フラボニフラクター属の菌は、酪酸を生産する働きもするので、実際の腸内細菌の働きやバランスは、もっと複雑なものと考えられるという。また、今回の研究は米国の白人を対象に行ったもので、他の地域や人種に同じことがあてはまるかも分かっていない。

 「腸内細菌叢の違いが、糖尿病のリスクに影響しているのか、それとも糖尿病であることが、腸内細菌叢の違いをもたらしているのかも不明です。今後の研究で解明したいと考えています」と、同病院の内分泌遺伝学研究室の所長であるマーク グダルジ氏は言う。

 米国では、「マイクロバイオーム・インスリン縦断的評価研究(MILES)」と呼ばれる多施設研究が進行中で、グダルジ氏はこの研究の主任研究者も務めている。

 「どの腸内細菌が、糖尿病を予防・治療するために有用であるかを突き止めるために、さらに研究が必要ですが、おそらく今後5年から10年以内に成果を出せるだろうと予測しています」としている。

腸内環境をこうして改善

腸内細菌と高血圧・糖尿病・体重管理との関連を解明

 ペンシルベニア州立大学の研究によると、腸内フローラを健康にするために、以下の2つのことが役立つと考えられる。

善玉菌のエサとなる食品を積極的に食べる
 野菜・穀類・大豆・海藻・イモ類・果物などに含まれる食物繊維は、消化されずに腸まで届き、善玉菌の栄養になる。また、オリゴ糖も、ビフィズス菌などの善玉菌の栄養となり、それらを増やす効果がある。

 食物繊維やオリゴ糖を含む食品を積極的に取り入れることで、腸内の善玉菌を増やし、その働きを活発にし、腸内環境を改善することを期待できる。

 食物繊維は、水に溶ける「水溶性」と水に溶けにくい「不溶性」がある。このうち水溶性食物繊維には、糖質の吸収をゆるやかにして食後血糖値の急な上昇を抑えたり、コレステロールなどの吸収を遅らせる働きもある。
ヨーグルトや漬物などの発酵食品を食べる
 ヨーグルトや漬物などの発酵食品には、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が多く含まれている。これらの食品を摂取することで、腸内の善玉菌を増やせる。

 発酵食品に含まれる善玉菌の効果として、整腸作用(有害菌の排除、便秘・下痢の改善)、血圧降下作用、免疫調節によるアレルギー抑制作用なども報告されている。

 なお日本食は、ヨーグルトやチーズなどの発酵食品に加えて、納豆・味噌・醤油・お酢・ぬか漬けなど、発酵食品が豊富にあるのが特長のひとつだ。

 「平均的な米国人は、理想的な食事スタイルはからかけ離れた食事をしています。おいしく健康的な食事をすることで、腸内環境を改善でき、誰もが恩恵を受けられるようになる可能性があります」と、同大学栄養科学部のペニー クリス-イーサトン教授は述べている。

 ヒトの体に共生する細菌などの微生物は、総じてマイクロバイオーム(細菌叢)と呼ばれている。「マイクロバイオームを適切に調整し、全体的な健康を高められるようにするために、さらに多くの研究が必要となりますが、腸内細菌叢について、血圧から糖尿病、体重管理まで、健康とのさまざまな関連が解明されてきています」としている。

Gut bacteria may play a role in diabetes (シダーズ サイナイ医療センター 2023年1月3日)
Butyrate-Producing Bacteria and Insulin Homeostasis: The Microbiome and Insulin Longitudinal Evaluation Study (MILES) (Diabetes 2022年8月12日)
Peanuts and herbs and spices may positively impact gut microbiome (ペンシルベニア州立大学 2022年12月2日)
Peanuts as a nighttime snack enrich butyrate-producing bacteria compared to an isocaloric lower-fat higher-carbohydrate snack in adults with elevated fasting glucose: A randomized crossover trial (Clinical Nutrition 2022年10月)
Herbs and Spices Modulate Gut Bacterial Composition in Adults at Risk for CVD: Results of a Prespecified Exploratory Analysis from a Randomized, Crossover, Controlled-Feeding Study (Journal of Nutrition 2022年11月)
Gut microbes disturbed by COVID-19 infection, especially with antibiotics (ラトガース大学 2022年11月28日)
Research suggests gut microbiome plays a role in lifestyle's effects on dementia risk (ベイクレスト高齢者医療センター 2022年10月11日)
The Role of the Gut Microbiome in Diet and Exercise Effects on Cognition: A Review of the Intervention Literature (Journals of Gerontology: Series A 2022年8月17日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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