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2024年01月23日

糖尿病の人が新型コロナやインフルエンザに感染すると肺炎が重症化しやすい どうすれば防げる? 治療法を開発

血糖値を下げて血糖管理を良くすると感染症対策に

 糖尿病のある人が、血糖値が高い状態が続き、新型コロナやインフルエンザなどのウイルス性感染症に感染し発症すると、深刻な肺疾患に進展するリスクが高いことが知られている。

 糖尿病を治療し、血糖値を適切に管理することで、糖尿病の人が重症化しやすい肺感染症のリスクを減少できることが分かった。

 「糖尿病のある人は、高血糖や低血糖を防ぎながら、血糖管理を良好に維持することが重要です」と、研究者は述べている。

血糖値が高いと新型コロナやインフルエンザが悪化しやすい

 糖尿病のある人が、血糖値が高い状態が続き、新型コロナやインフルエンザなどのウイルス性感染症に感染し発症すると、深刻な肺疾患に進展するリスクが高いことが知られている。

 2020年初頭に新型コロナのパンデミックがはじまったときに、新型コロナに感染し発症した糖尿病患者は、肺に炎症が起こやすいことが多く報告された。新型コロナにより死亡した感染患者の35%は糖尿病だったという報告もある。

 新型コロナウイルスは鼻やのどに感染しやすく、さらに肺も感染すると肺炎を引き起こす。新型コロナウイルスは、細胞のACE2という受容体と結合して侵入するが、肺の細胞にはこのACE2が多くあるため、感染しやすい

血糖値が高いとウイルスに対する免疫反応を活性化できなくなる

 血糖値が高い状態が続くと、免疫で重要な働きをしている樹状細胞の一部が破壊され、機能不全になる。

 その結果、免疫反応を活性化できなくなり、肺炎が起こることを、イスラエルのワイツマン科学研究所が明らかにした。研究成果は、科学誌「Nature」に発表された。

 樹状細胞は全身に分布しており肺にもある。ウイルスなど異物をなかに取り込み、その異物の特徴(抗原)をリンパ球(免疫細胞)に伝える働きをしている。

 「樹状細胞はゲートキーパーのような働きをしており、免疫応答を活性化するために重要ですが、血糖値が高いと、肺の樹状細胞の働きが悪くなります」と、同研究所老化生物学センターの所長であるのエラン エリナフ教授は言う。

 研究グループは今回、血糖値が高くなっている糖尿病のマウスを使った実験で、新型コロナウイルスの感染時に肺の樹状細胞の機能が阻害されるメカニズムを明らかにした。

 糖代謝に異常があると、代謝副産物が蓄積され、遺伝子発現の正常なコントロールが著しく妨害され、異常な免疫タンパク質の産生が引き起こされることも分かった。

血糖値を下げて血糖管理を良くすると肺感染症を防げる

 血糖値が高くなっている1型糖尿病と2型糖尿病のマウスは、いずれもウイルス性の肺感染症を発症すると、免疫反応が著しく損なわれ、重度の肺炎を発症し、最終的には死にいたった。

 しかし、血糖値を下げるインスリンを投与し、血糖管理を適切に行うと、樹状細胞が免疫応答を生成する能力が回復し、生命を脅かす深刻な肺感染症を防げることが分かった。

 「血糖値が高くなっている人が、新型コロナやインフルエンザのようなウイルス性感染症にかかると、肺の樹状細胞の正常な機能が阻害されやすいメカニズムが明らかになりました」と、エリナフ教授は言う。

 「糖尿病を治療し、血糖値を適切に管理することで、糖尿病の人が重症化しやすい肺感染症のリスクを減少できると考えられます。糖尿病のある人は、高血糖や低血糖を防ぎながら、血糖管理を良好に維持することが重要です」としている。

 血糖値が正常化しない糖尿病患者では、高血糖によって引き起こされる遺伝子の調節障害を逆転させる薬剤を投与し、樹状細胞の機能を正常に戻す治療法の開発も進められている。

New study reveals how high blood sugar makes lung infections worse; the findings may lead to a strategy for reversing this susceptibility (ワイツマン科学研究所 2023年12月14日)
Lung dendritic-cell metabolism underlies susceptibility to viral infection in diabetes (Nature 2023年12月13日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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