ニュース

2023年08月29日

「ビタミンD」が糖尿病リスクを低下 心臓病・認知症・新型コロナのリスクも低減 どんな食品に多い?

 ビタミンDには、体内のカルシウム吸収を促して骨を増強したり、体内のタンパク質の働きを活性化し、筋肉の増強を促す作用などもある。

 ビタミンDの不足は、命に関わるさまざまな疾患と関連していることが分かってきた。

 ビタミンDが足りている人は、2型糖尿病のリスクが低下するという、新しい研究が発表された。

 ビタミンDが足りていない人は、心血管疾患・認知症・新型コロナの後遺症のリスクが上昇することも報告されている。

ビタミンDには大切な働きがある

 ビタミンDには、体内のカルシウム吸収を促して骨を増強したり、体内のタンパク質の働きを活性化し、筋肉の増強を促す作用などもある。

 ビタミンDは、サバ・アジ・サケ・マグロ・サンマ・イワシ・シラスといった魚や、卵、チーズ、シイタケ・エリンギなどのキノコ類などに多く含まれている。

 肉や魚などのタンパク質が足りていなかったり、過度の食事制限をしている人、ごはんなどの炭水化物を中心とした食事をしている人では不足しがちになる。

 またビタミンDは、紫外線を浴びることで、皮膚で生成される。そのため、日光を浴びることの少ない人や、高緯度地域に住んでいる人は不足しがちになる。

ビタミンDが1000万人以上の糖尿病リスクを低下

 血中のビタミンD濃度の高い人は、2型糖尿病の発症リスクが低いという研究結果を、米国内科学会(ACP)が発表した。ビタミンDは、血糖値を下げるインスリンの分泌や、糖代謝などでも多くの役割をになっているとみられている。

 米タフツ大学医療センターの研究グループは、ビタミンDが糖尿病リスクにおよぼす影響を比べた3件の臨床試験を分析した。

 2型糖尿病の発症率は、3年間の追跡期間で、ビタミンDを十分に摂取していた成人では22.7%だったが、足りていない成人では25%に上った。ビタミンDの摂取により、糖尿病リスクは15%減少した。

 「これを、世界で糖尿病とともに生きる成人3億7,400万人にあてはめると、ビタミンDの補給により、1,000万人以上の糖尿病の発症を予防したり、遅らせることができることになります」と、同センター糖尿病・内分泌代謝部のアナスタシオス ピタス氏は述べている。

ビタミンDが心臓病リスクも減少

 それ以外にも、ビタミンDの摂取に関する研究は、世界中で増えている。ビタミンDの不足は、命に関わる深刻な疾患とも関連していることが分かってきた。

 心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患(CVD)は、世界的に主な死因のひとつになっており、高齢化が進む日本でも増加している。

 オーストラリアのメルボルン大学やシドニー大学などの研究で、ビタミンDを補給している高齢者は、摂取していない高齢者に比べ、主な心血管イベントの発症率が9%低いことが示された。

 とくに心臓発作の発症率は19%低く、冠動脈血行再建の割合は11%低かった。研究グループは、2014年~2020年に、60歳~84歳の高齢者2万1,315人を対象に調査した。

ビタミンDが認知症の予防にも役立つ可能性

 英国のエクセター大学やカナダのカルガリー大学による別の研究では、ビタミンDの摂取は認知症の予防にも役立つ可能性が示された。

 研究グループは、米国国立アルツハイマー病医療センターに登録された、平均年齢71歳の高齢者1万2,388人を対象に、10年間追跡して調査した。研究開始持には参加者はすべて認知症ではなかった。

 その結果、ビタミンDを摂取していた高齢者は、認知症の診断が最大で40%少ないことが明らかになった。

 ビタミンDの効果は、男性に比べて女性の方が大きく、またアルツハイマー型認知症のリスクと関連があることが知られているAPOEe4遺伝子をもっている人で大きかった。

 「これまでの研究でも、ビタミンDの値が低い高齢者は、認知症のリスク高いことが示されています」と、同大学精神科のザヒノール イスマイル教授は述べている。

 「ビタミンDは、アルツハイマー病の特徴のひとつである、脳内のアミロイドの除去に関与し、また認知症の発症に関与する別のタンパク質であるタウの蓄積から脳を保護するのに役立っている可能性が考えられます」としている。

ビタミンDの過剰摂取にも注意が必要

 ただし、サプリメントなどによるビタミンDの過剰摂取には注意が必要としている。ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、過剰摂取をすると健康障害が起こる可能性がある。

 「ビタミンDのとりすぎにより、高カルシウム血症になり、血管や腎臓、心筋、肺などに多量のカルシウムが沈着するおそれがあります」と、ピタス氏は指摘している。

 「各国の食事ガイドラインで推奨されているビタミンDの上限量を守ることが大切です」としている。

新型コロナの後遺症リスクもビタミンDが足りないと上昇

 ビタミンDが不足している人が新型コロナに感染すると、長期にわたる後遺症のリスクが高まることも判明した。この研究は、イスタンブールで開催された欧州内分泌学会(ESE)の年次学術集会で発表された。

 これまでもビタミンDが不足している人は、新型コロナが重症化しやすいことが報告されている。新型コロナを発症し入院した患者の50~70%が、長期にわたる後遺症を罹患するとみられている。

 研究は、イタリアのヴィータ サルーテサンラファエル大学などが、51~70歳の患者100人を入院後6ヵ月調査したもの。

 その結果、新型コロナで最初に入院したときと、退院から6ヵ月後の血中のビタミンDの値を測定したところ、新型コロナに罹患していない患者に比べて、長期罹患した患者のビタミンDの値が低いことが判明した。

 「研究結果は、新型コロナの感染が確認された患者を対象に、ビタミンDの検査も行う必要がある可能性を示唆しています」と、同大学内分泌代謝科学研究所のアンドレア ジュスティナ教授は言う。

 「新型コロナとビタミンD欠乏症との関連を確認するために、より大規模な調査が必要となります」とし、「ビタミンDの摂取が、長期にわたる新型コロのリスク軽減にどう影響するかを調べる研究も進行中です」と付け加えている。

Vitamin D supplementation may lower diabetes risk for the more than 10 million adults with prediabetes (米国内科学会 2023年2月6日)
Vitamin D and Risk for Type 2 Diabetes in People With Prediabetes: A Systematic Review and Meta-analysis of Individual Participant Data From 3 Randomized Clinical Trials (Annals of Internal Medicine 2023年3月)
Vitamin D supplements may reduce risk of serious cardiovascular events in older people (ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2023年6月28日)
Vitamin D supplementation and major cardiovascular events: D-Health randomised controlled trial (ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2023年6月28日)
Taking vitamin D could help prevent dementia, study finds (エクセター大学 2023年3月1日)
Vitamin D supplementation and incident dementia: Effects of sex, APOE, and baseline cognitive status (Alzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring 2023年3月1日)
Low levels of vitamin D linked to long COVID (欧州内分泌学会 2023年5月13日)
Low Vitamin D Levels Are Associated With Long COVID Syndrome in COVID-19 Survivors (Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2023年4月13日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲