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2024年06月05日

糖尿病の人は胃がんのリスクが高い どうすれば対策できる? 胃がんを予防するための6つの方法

 胃がんは、日本人にも多いがんで、死亡原因の上位に入っている。糖尿病のある人は胃がんのリスクが15%高いことが、日本人を含む約56万人のアジア人を対象とした研究で明らかになった。

 胃がんは、健康診断やがん検診などで早期に発見し治療を行えば、生存率は高い。胃がんによる死亡者数を減少させるために、積極的な取り組みが行われている。

 胃がんを予防するために、食事をはじめとする生活スタイルの改善も重要であることも分かってきた。胃がんを予防・改善するために6つの対策が提案されている。

糖尿病の人は胃がんリスクが高い

 胃がんは、日本人にも多いがんで、死亡原因の上位に入っている。胃がんは、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞ががん細胞になり、増えていくことで発症する。早い段階では自覚症状はあまりないが、進行しがんがより深く進むと、大腸や膵臓、肝臓などにも広がっていく。

 胃がんの症状は、胃の痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などがある。食事がつかえる、体重が減る、といった症状がある場合は、進行性の胃がんがある可能性もある。

 日本人を含む55万8,981人のアジア人を対象とした研究で、糖尿病のある人は胃がんのリスクが15%高いことが明らかになった。研究は、国立がん研究センターなどが、中国・日本・韓国・インドの12件の前向きコホート研究を解析したもの。

 胃がんのリスクは、とくに糖尿病と診断された後の最初の10年間は4.7倍に上昇した。ただし、糖尿病の治療を続け血糖値を管理すると、胃がんのリスクは減少する可能性がある。この研究でも、糖尿病と診断された後の10年間以降は、胃がんのリスクは低下した。

 これまでの研究でも、糖尿病により血糖値が高かったり、血中のインスリンレベルが高いと、慢性炎症などにより、肝臓・膵臓・子宮・結腸・乳・膀胱など、さまざまな部位のがんのリスクが上昇することが示されている。

糖尿病のある人は胃がんリスクが高い
糖尿病の治療を続ければリスクは減少する可能性が

出典:国立がん研究センター、2022年

関連情報

ピロリ菌を除菌すれば胃がんリスクを減らせる

 胃がんは、日本人が多くかかるがんだが、健康診断やがん検診などで早期に発見し治療を行えば、生存率は高い。

 日本を含む東アジアでは、胃がんになる人の割合が高いことが知られている。日本でも、胃がんによる死亡者数を減少させるために積極的な取り組みが行われている。

 胃がんの原因として大きいのは、ピロリ菌(ヘリコバクター ピロリ)と呼ばれる細菌だ。ピロリ菌は、長い期間をかけて感染範囲を広げ、最終的には胃全体まで広がって胃炎や潰瘍、胃粘膜の萎縮を発症させる。

 国立がん研究センターなどが12万3,576人を対象に行った調査では、ピロリ菌の陽性者では、胃がんリスクは5倍に上昇することが示された。隠れた陽性者を含めると、リスクはさらに倍加するという。

 ただし、1週間程度の簡単な除菌治療で、ピロリ菌による病気を予防し、治癒できることも分かっている。ピロリ菌の除菌は、抗生物質を飲むだけで苦痛もともなわない。

 日本ヘリコバクター学会によると、日本でピロリ菌に感染している人は、年々減少しているものの、3,000万人以上に上る。とくに50歳以上の人で感染している割合が高い。

 ピロリ菌を除菌することで、新しい胃がんの発生リスクを3分の1に減らせるという。

胃がん予防では食事などの生活スタイルの改善も重要

男性では喫煙、女性では塩分のとりすぎが胃がんリスクを高める

 胃がんを予防するために、ピロリ菌の除菌以外にも、食事をはじめとする環境的な要因が重要と考えられている。

 韓国の国立がん対策研究所などが、がんの病歴のない40~74歳の成人3,539人を対象に行った調査では、男性では喫煙、女性では塩分のとりすぎが、胃がんの危険因子として大きいことが示された。

 さらに、男女とも運動不足とアルコールの飲みすぎは、胃がんのリスクを高めるという。胃がんのリスクの高い人ほど、がん検診を受ける頻度が低い傾向があることも分かった。

 米国の調査でも、胃がんを予防・改善するために、生活スタイルの改善が重要であることが示されている。

 「予防的な介入を講じ、がん検診を受けていれば、胃がんの発症とそれによる死亡の、かなりの部分を回避できると考えています」と、米国国立がん研究所がん疫学・遺伝学部門のコンスタンサ カマルゴ氏は述べている。

胃がんを予防・改善するために必要な6つの対策

  • 喫煙は胃がんのリスクを高める。タバコを吸う習慣のある人に、禁煙のためのサービスや治療を提供する。
  • 塩分のとりすぎも胃がんのリスクを高める。塩分の摂取量を減らすのは、高血圧の予防・改善にも有用なので、減塩を勧める。
  • 胃がんのリスクが高いのは、「50歳以上の成人」「男性」「喫煙者」「胃がんの家族歴のある人」であることが分かっている。がんリスクの高い人が、定期的ながん検診や、ピロリ菌の検査を受けられるようにする。
  • 胃がんを発症した人には、質の高い治療を提供する。医療従事者が専門的なトレーニングを受けられるようにする。
  • がんを発症した人を登録した大規模なデータベースを構築し、がん対策の政策の立案に役立てる。
  • 抗菌薬に対して細菌の一部が耐性を得て、薬が効かなくなる「薬剤耐性」にも対策する。ピロリ菌に対して抗菌薬が効くが、耐性菌に変化しないようにするため、抗菌薬は適切に使用するようにする。

糖尿病と胃がん罹患および死亡との関連 (国立がん研究センター)
Diabetes and gastric cancer incidence and mortality in the Asia Cohort Consortium: A pooled analysis of more than a half million participants (Journal of Diabetes 2024年5月16日)
ヘリコバクター・ピロリ菌感染と胃がん罹患との関係 (国立がん研究センター)
Effect of Helicobacter pylori Infection Combined with CagA and Pepsinogen Status on Gastric Cancer Development among Japanese Men and Women: A Nested Case-Control Study (Cancer Epidemiology, Biomarkers and Prevention 2006年7月11日)
Recommendations for gastric cancer prevention and control in the Americas (Lancet Regional Health 2023年10月6日)
Cluster of lifestyle risk factors for stomach cancer and screening behaviors among Korean adults (Scientific Reports 2023年10月16日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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