ニュース

2022年01月18日

糖尿病の人の多くは「がん」を予防できる 糖尿病と肥満ががんの危険因子 

 2型糖尿病や肥満の人は、そうでない人に比べ、がんを発症するリスクが高いことが知られている。しかし、良好な血糖コントロールを維持し、健康的な体重を維持していれば、がんの発症を大幅に減らせることが、スウェーデンのヨーテボリ大学の研究で示された。

 血糖コントロールが良好で、肥満症を治療した人は、そうでない人に比べ、がんの発症が60%減少したことが示された。

2型糖尿病と肥満はがんの危険因子

 2型糖尿病と肥満は、がんの危険因子であることが知られている。肥満症を治療して、体重をコントロールすると、糖尿病のコントロールも良くなり、血糖値を正常に維持しやすくなるという報告がある。

 肥満のある人が体重を減らしコントロールすると、がんのリスクを減らせるが、これに良好な血糖コントロールが加わると、がんの発症はさらに減少することが、スウェーデンのヨーテボリ大学の研究で示された。

 2型糖尿病と肥満のある患者では、がんのリスクを減少するために、血糖コントロールを良好に保つことがとりわけ重要であることが示された。詳細は、米国糖尿病学会(ADA)が刊行する医学誌「Diabetes Care」に発表された。

肥満症を治療し、血糖コントロールが良好な人はがんリスクが60%減少

 研究は、同大学が主導して実施している「スウェーデン肥満研究(SOS)」の介入試験のデータや、スウェーデンのがん統計などのデータを解析したもの。

 研究グループは、肥満手術を受け肥満症を治療した2型糖尿病患者393人のグループと、同じ臨床的な特徴のある308人の対照グループと比較した。対照グループは重度の肥満と2型糖尿病があるものの、肥満手術を受けていなかった。

 その結果、21年(中央値)の追跡期間に、肥満症を治療したグループは、がんを発症するリスクが37%低下した。肥満症を治療しなかったグループは、がんの発症が24%(74人)に上ったが、治療したグループは体重を大幅に減少し、がんの発症は17%(68人)に抑えられた。

 さらに、がんの発症がもっとも少なかったのは、肥満症を治療し、血糖コントロールが良好である人であることが明らかになった。2つを同時に達成していた人は、がんの発症が60%減少したことが示された。

 10年間にわたり良好な血糖コントロールを維持し、正常な血糖値を保っていたグループは、がんの発症が12%(102人中12人)に抑えられた。これに対し、糖尿病のコントロールが良好でないグループでは、がんの発症が22%(335人中75人)に上った。

血糖値と体重を良好にコントロールしてがんを予防

 「今回の研究で、2型糖尿病の患者さんの多くは、がんを予防することが可能であることが示されました。血糖コントロールとがんの予防の関係についての理解を深める重要な研究です」と、同大学サルグレンスカ アカデミー分子医学部のカイサ シェーホルム氏は言う。

 「肥満と2型糖尿病の両方が、世界的に急増しており、この2つはがんのリスクを高めます。がんによる早死のリスクの増加は、世界的な社会問題になっています。今後10~15年間で、肥満は喫煙よりも多くのがんの症例を引き起こす可能性があると推定されています」と、同学部のマグダレナ タウベ氏は言う。

 「肥満と糖尿病、がんに対策するための戦略を急いで策定する必要があります。今回の研究は、肥満と2型糖尿病の両方がある患者さんのがんを予防するための重要なガイダンスを提供することにつながります」としている。

Glucose control is a key factor for reduced cancer risk in obesity and type 2 diabetes (ヨーテボリ大学 2021年12月6日)
Association of Bariatric Surgery With Cancer Incidence in Patients With Obesity and Diabetes: Long-Term Results From the Swedish Obese Subjects Study (Diabetes Care 2021年11月19日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲