ニュース
2023年02月09日
ハムやソーセージの添加物が糖尿病リスクを高める 「超加工食品」が糖尿病や肥満の原因?

ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉などに含まれている添加物が、2型糖尿病のリスクを高めている可能性がある。
「超加工食品」は、工業的な過程を経て作られており、色・風味・食感を調整したり、保存期間を延ばすために、さまざまな食品添加物が使用されている。
超加工食品は、糖分や塩分、脂肪を多く含むものも多い。食べ過ぎると肥満や糖尿病、がんなどのリスクが上昇するおそれがあるという研究も発表された。
ハムやソーセージ、ベーコンなどに含まれる添加物は安全?
亜硝酸塩は、ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉などの、特徴的な色や風味を高めるために使用されている食品添加物。 その亜硝酸塩が、2型糖尿病のリスクを高めている可能性があるという研究を、フランスのソルボンヌ パリ ノール大学が発表した。 硝酸塩は、自然の水や土壌にも含まれる成分で、通常摂取している程度では、それ自体はとくに人体に有害なものではあない。 しかし、ヒトの体内で還元され亜硝酸塩に変化すると、発がん性などのある化合物の生成に関与している可能性が指摘されている。一部の国の公衆衛生当局では、食品添加物として亜硝酸塩などを使用するのを制限することが検討されているという。加工肉の食品添加物が多いと糖尿病リスクは上昇
研究グループは、フランスで2009年に開始された大規模研究「NutriNet-Santé」に参加した10万4,168人のデータを解析した。 この研究は、15歳以上のフランス人を対象に、病歴・社会人口統計・食事・生活スタイルなどの、健康に関わる主要な情報を収集する目的で実施されている。 その結果、ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉に含まれる食品添加物などを由来とする亜硝酸塩が多いと、2型糖尿病を発症するリスクが高いことが示された。 亜硝酸塩の摂取量がもっとも多い群では、もっとも少ない群に比べ、2型糖尿病の発症リスクが1.5倍に上昇した。 これまでも、体内の亜硝酸塩は、発がん性などのあるニトロソ化合物の生成に関与し、血糖を下げるインスリンの働きが悪くなるインスリン抵抗性を促す可能性が指摘されている。 「2型糖尿病などの代謝障害への、食事で摂取する硝酸塩や亜硝酸塩の影響については、これまでよく分かっていませんでした。食事添加物と2型糖尿病などとの関連を調査したのは、今回の研究がはじめてです」と、同大学栄養疫学研究チームのベルナール スルール氏は言う。 「ただし、今回の研究は、自己申告のデータにもとづくものであり、今後はバイオマーカーを使用して、亜硝酸塩や硝酸塩への曝露の影響について、生物学的に確かめる研究が必要です。また、コホート研究の結果を、一般人口にあてはめるのは限界があります」としている。「超加工食品」はがんのリスクを高める可能性も

超加工食品の消費量が10%増えるとがんリスクは6%増加
「超加工食品は多くの場合、比較的安価で便利なので、大量に販売されています。しかし、多くは高カロリーで、脂肪・塩分・糖質が多く含まれ、良質なタンパク質や食物繊維などは少ないことに注意する必要があります」と、同大学公衆衛生学部のエステル ヴァモス氏は言う。 「超加工食品には、保存料などの人工添加物も含まれています。肥満・2型糖尿病・心血管疾患など、さまざまな疾患のリスクを高めることと関連しているという報告は多くあります」としている。 研究グループは今回、英国バイオバンクに参加した、19万7,426人の40~69歳の成人のデータを解析した。参加者の健康状態を10年間にわたり追跡して調査し、全体的ながんの発症リスクと、34種類のがんのリスクとの関連を調べた。 さらに、超加工食品の消費量が10%増えるごとに、がん全体による死亡率は6%増加し、乳がんでは16%、卵巣がんでは30%、それぞれ死亡率は増加した。社会の食環境を早急に見直す必要が
これまでの研究でも、とくに英国人は欧州でも超加工食品を多く消費しており、その摂取量が多いほど、成人の肥満や2型糖尿病の発症リスクが高くなることが示されている。 「英国では、子供の体重増加も問題になっており、とくに小児期から青年期にかけて肥満が増加しています。この年代の子供や若者が一般的に、超加工食品を多く食べていることと関連している可能性があります」と、ヴァモス氏は指摘する。 「私たちの体は、超加工食品やそれに含まれる添加物に対して、加工度が最小限で栄養価の高い新鮮な食品と同じようには反応しないかもしれません」と、同大学公衆衛生学部のキアラ チャン氏は言う。 「超加工食品はどこにでもあり、消費を促進するために価格は安く設定されており、売り上げを伸ばすために魅力的なパッケージや広告が施されています。超加工食品から健康を守るために、社会の食環境を早急に見直す必要があります」と指摘している。 Nitrite additives associated with increased risk of type 2 diabetes (PLOS 2023年1月17日)https://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.1004149 (PLOS Medicine 2023年1月17日)
Ultra-processed foods may be linked to increased risk of cancer (インペリアル カレッジ ロンドン 2023年2月1日)
Ultra-processed food consumption, cancer risk and cancer mortality: a large-scale prospective analysis within the UK Biobank (eClinicalMedicine 2023年1月31日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
食事療法の関連記事
- 魚を食べている人は糖尿病リスクが少ない 魚は脳の健康にも良い 中年期の食事改善は効果が高い
- 朝食をしっかりとると糖尿病が改善 血糖管理に大きく影響 朝食で「お腹ポッコリ」肥満を予防
- 「超加工食品」の食べすぎは糖尿病リスクを高める 筋肉の質も低下 「自然な食品」はリスクを減らす
- 糖尿病の食事に「ブロッコリー」を活用 アブラナ科の野菜が血糖や血圧を低下 日本でも指定野菜に
- 糖尿病の人はビタミンやミネラルが不足 「食の多様性」が糖尿病リスクを下げる 食事バランスを改善
- 糖尿病の人は脂肪肝にご注意 ストレスはリスクを高める 緑茶を飲むと脂肪肝が減少
- 「玄米」で糖尿病を改善 食事では「低GI食品」を活用 血糖値を上げにくい新しい米を開発
- ウォーキングなどの運動は糖尿病の人に良い 運動で食欲も抑えられる 認知症の予防にもつながる
- アルコールの飲みすぎは危険 糖尿病・高血圧・肥満のある人は肝臓病リスクが2.4倍に上昇 飲酒により糖尿病リスクが上昇
- 【Web講演を公開】2月は「全国生活習慣病予防月間」
今年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」