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2023年01月26日

糖尿病の人はがんリスクが高い 大腸がんリスクは2.4倍 予防のために何が必要?

 2型糖尿病とともに生きる人のがんによる死亡率は、糖尿病でない人に比べ、大幅に高いことが、大規模な調査で明らかになった。

 ただし、糖尿病の医療は進歩しており、糖尿病の合併症のひとつである心血管疾患で亡くなるリスクは減少していることも分かった。

 別の調査では、2型糖尿病のある人で、がんの発症がもっとも少なかったのは、血糖管理が良好で、肥満の治療もしている人だった。2つを達成できていると、がんの発症は60%減少するという。

糖尿病の人はがんのリスクが高い

 2型糖尿病とともに生きる人のがんによる死亡リスクは、糖尿病でない人に比べ、大幅に高いことが、英国の13万人超の成人を対象とした調査で明らかになった。

 2型糖尿病の人のがん死亡率は、一般集団に比べ、全がんで18%、乳がんで9%、大腸がんで2.4倍、それぞれ高かった。

 さらには、肝臓(男女)、膵臓がん(男女)、子宮内膜がん(女性のみ)では、糖尿病の人のがん死亡率はそれぞれ約2倍に上昇した。

 研究は、レスター大学糖尿病研究センターなどのスーピン リン氏らによるもの。研究成果は、欧州糖尿病学会(EASD)が刊行している「Diabetologia」に掲載された。

 研究グループは、英国の一般診療データベースである「Clinical Practice Research Datalink」に1998年~2018年に登録された、2型糖尿病と新規診断された35歳以上の成人13万7,804人のデータを解析した。

糖尿病のある人も長生きできる時代になった

 ただし、糖尿病の医療は進歩しており、糖尿病の合併症のひとつである心血管疾患で亡くなるリスクは減少していることも分かった。

 これまで、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患により死亡する人が多かったが、過去数十年間で予防と治療が進歩しており、高齢者の心血管疾患の死亡率は減少しているという。

 心血管疾患は、日本人の死因でも上位になっているが、死亡率は年々減ってきている。代わりに増えているのはがんだ。英国でも、がんで亡くなる人がもっとも多い。

 「医療の進歩により、糖尿病があっても治療を続けていれば、多くの人は、糖尿病のない人と同じように長生きできるようになってきました。このことは同時に、がんなどの高齢化にともない増える疾患を経験し、死亡する可能性が高まったことも意味しています」と、リン氏は言う。

 「ただし、糖尿病の治療や検査、糖尿病とその合併症の管理、早期がんの診断、がん治療などが進歩していることは、糖尿病のある人にも多くに利益をもたらしていると考えられます」としている。

 研究でも、2型糖尿病のある人のがんによる死亡率は、75歳と85歳では増加したものの、55歳と65歳では減少していることが示された。

関連情報

がんは糖尿病患者の死因の首位に

 研究では、2型糖尿病のある人は、とくに膵臓がん、肝臓がん、子宮内膜がんなどのリスクが高まることが示された。これには、血糖値とインスリン値の上昇、インスリン抵抗性、慢性炎症に長期間さらされることなどが潜在的に影響していると考えられるとしている。

 「2型糖尿病患者さんの主な死因として、がんが心血管疾患を抜き、首位になった可能性があります。がん予防戦略は、とくに高齢者や肝臓がん、大腸がん、膵臓がんなどの一部のがんについては、少なくとも心血管疾患の予防と同程度の注意を払う必要があります」と、リン氏は言う。

 また、2型糖尿病の女性の乳がんによる死亡率は、20年間の期間で年間4.1%増加したことも示された。全国的な報告では、この期間の乳がん死亡率は低下していることが示されている。

 「とくに2型糖尿病の女性に対して、乳がん検診を受ける機会を拡大する必要があると考えられます。がん検診により、どのような人がより利益を得やすいかを知るために、費用対効果などについての調査も必要となります」。

 さらに、喫煙の有無でもがん死亡率には差が出た。がん死亡率の変化率は、タバコを吸わない人では改善したが、喫煙者では悪化した。

 糖尿病のある喫煙者のがん死亡リスクはとくに高いので、個別の介入を検討する必要があるとしている。

 「現在の医療政策と構造は、喫煙者よりも非喫煙者に利益をもたらしている可能性があります。禁煙プログラムなどによる介入は、がんと全死因による死亡率の減少に貢献できる可能性があります」と、リン氏は指摘している。

糖尿病の人のがんを予防
がんを防ぐために何が効果的か?

 2型糖尿病や肥満の人は、そうでない人に比べ、がんを発症するリスクが高いことが知られている。しかし、良好な血糖管理を維持し、健康的な体重を維持していれば、がんの発症を大幅に減らせることが、スウェーデンのヨーテボリ大学の研究で示されている。

 研究は、同大学が主導して実施している「スウェーデン肥満研究(SOS)」の介入試験のデータや、スウェーデンのがん統計などのデータを解析したもの。

 2型糖尿病のある人で、がんの発症がもっとも少なかったのは、血糖管理が良好で、肥満もある場合はその治療も受けている人だった。2つを達成できている人は、がんの発症が60%減少したことが示された。

 10年間にわたり良好な血糖管理を維持し、正常な血糖値を保っていた人は、がんの発症が12%に抑えられたが、糖尿病の管理が良好でない人では、がんの発症は22%と2倍近くに上昇した。

 「2型糖尿病と肥満は、世界的に急増しています。この2つはがんのリスクも高めます。がんによる早死のリスクの増加は、世界的な社会問題になっています」と、同大学分子医学部のマグダレナ タウベ氏は言う。

 「今回の研究は、糖尿病の治療とがん予防の関係についての理解を深めるための重要なものです。糖尿病や肥満、がんに対策するための戦略を急いで策定する必要があります」としている。

UK study shows increased cancer mortality in people with type 2 diabetes (Diabetologia 2023年1月24日)
Inequalities in cancer mortality trends in people with type 2 diabetes: 20 year population-based study in England (Diabetologia 2023年1月24日)
Glucose control is a key factor for reduced cancer risk in obesity and type 2 diabetes (ヨーテボリ大学 2021年12月6日)
Association of Bariatric Surgery With Cancer Incidence in Patients With Obesity and Diabetes: Long-Term Results From the Swedish Obese Subjects Study (Diabetes Care 2021年11月19日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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