ニュース

2022年09月27日

糖尿病の人の認知症を「7つの生活スタイル」で予防 実行すると認知症リスクは54%減少

 米国神経学会(AAN)は、▼健康的な食事、▼運動を習慣として行う、▼座ったままの時間を減らす、▼社会的交流を活発にするなど、「7つの健康的な生活スタイル」が、糖尿病の人の認知症リスクを低下させることが、17万人近い人を対象とした研究で明らかになったと発表した。

 7つの健康的な生活スタイルのすべてを実行している糖尿病の人は、あまり実行していない糖尿病の人に比べ、認知症の発症リスクが54%減少した。

 「今回の研究では、2型糖尿病のある人は、生活スタイルをより健康的にすることで、認知症リスクが大幅に低下できる可能性があることが示されました」と、研究者は述べている。

7つの健康的な生活スタイルで認知症リスクが低下

 米国神経学会(AAN)は、▼健康的な食事、▼運動を習慣として行う、▼座ったままの時間を減らす、▼社会的交流を活発にするなど、「7つの健康的な生活スタイル」が、糖尿病の人の認知症リスクの低下と関連があるという研究を発表した。研究成果は、同学会の医学誌「Neurology」に掲載された。

 認知症の効果的な治療法はまだ開発されていないので、予防することが重要になっている。生活スタイルに関連するさまざまな要因が、認知症を発症するリスクに影響をもたらすことが分かってきた。

 「2型糖尿病は、世界の成人の10人に1人が罹患しており、パンデミックといえる勢いで増えています。さらに、糖尿病のある人では、認知症を発症するリスクが上昇することが知られています」と、中国の上海交通大学医学部病院部長であるルー インリー氏は言う。

 「今回の研究で、健康的な生活スタイルを幅広く組み合わせることで、認知症のリスクを相殺できるかを調査しました。その結果、7つの健康的な生活スタイルを生活に取り入れている糖尿病の人は、そうでない人に比べ、認知症のリスクが低いことが明らかになりました」。

16.8万人の7つの生活スタイルを調査

 「UKバイオバンク」は、遺伝的素質や環境因子が健康にもたらす影響を調査している、英国の大規模な前向きコホート研究。研究グループは、UKバイオバンクに参加した、研究開始時に認知症を発症していなかった、60歳以上の16万7,946人を対象に調査した。

 研究グループは、参加者に対し7つの生活スタイルについてアンケート調査を行い、0~7点のスコア計算をした。

 7つの生活スタイルとは次の通り――。

タバコを吸わない
 タバコは、動脈硬化や腎臓病、がんなど、さまざまな病気のリスクを高める。もちろん糖尿病にも良くない。
 禁煙すればリスクは減る。タバコを吸う習慣のある人は、いまさらやめても遅いと諦めず、禁煙外来を利用するなどして、禁煙に取り組むことが大切。

健康的な食事
 野菜、全粒穀物、大豆、魚、豆類、ナッツ類、海藻、果物などの健康的な食品を十分に食べ、動物性脂肪の多い加工肉や赤身肉は食べ過ぎない。
 朝食を毎日食べ、高カロリーの食品の間食はしない。適正な体重を維持する。

運動を習慣として行う
 運動には「血糖値が下がる」「血圧を下がる」「中性脂肪が減る」「肥満を改善できる」など、さまざまな効果がある。
 ウォーキングなどの中強度の運動を週に2.5時間(1日30分程度)以上、または75分間の高強度の運動を行うのが目標。

座ったまま過ごし時間を減らす
 運動以外にも、仕事や家事などで、なるべく体を活発に動かすようにする。
 座ったまま過ごし時間が長引いたときには、ときどき立ち上がって体を動かす。テレビの視聴時間は1日4時間未満に制限する。

適度なアルコール摂取
 適度なアルコール摂取量は、男性は1日2ドリンク(純アルコール換算で20g)まで、女性は1日1ドリンク(同10g)まで。
 アルコール量20gは、ビール(ロング缶)1本(500mL)、チューハイ(レギュラー缶)1本(350mL)、日本酒1合(180mL)、焼酎1杯(100mL)、ワイン2杯(120mL)、ウイスキー2杯(60mL)に相当する。
 アルコールの適量には個人差があるので、どの程度のお酒の量で自分がどんな状態になるかを知っておくことも大切。

睡眠をしっかりとる
 睡眠時間は1日に7~9時間が理想的。
 不眠・睡眠不足が続くと、日中の活動に支障をきたすだけでなく、うつ病や動脈硬化、糖尿病などのリスクも高まる。
 寝つきの悪さは生活スタイルを見直すことで改善できる。不眠に悩む人は専門家に相談を。

社会的交流を活発にする
 さまざまな人と頻繁に社会的に接触し、身体活動や知的な活動を増やす。
 社会活動への参加は、認知機能とメンタルヘルスの改善と関連がある。社会的なつながりを深めることで、認知機能の低下のリスクを防げる可能性がある。

7つの生活スタイルのすべてを実行すると認知症リスクは54%減少

 平均12.3年の追跡期間に、4,351人が認知症を発症した。糖尿病のある人は、血糖値が正常の糖尿病のない人に比べ、認知症の発症リスクが高いことが示された。

 糖尿病があり、生活が不健康であると、認知症リスクは大きく上昇することも示された。7つの健康的な生活スタイルのうち、スコアが7点ですべてを実行している糖尿病のない人に比べ、スコアが2点以下の糖尿病の人は、認知症リスクは4倍に上昇した。

 さらに、糖尿病とともに生きる人は、7つの健康的な生活スタイルの実行数が多いほど、認知症の発症リスクが減少することが明らかになった。

 7つの健康的な生活スタイルのうち、すべてを実行していてスコアが7点の糖尿病の人は、0~2点とあまり実行していない人に比べ、認知症のリスクが54%低かった。

健康的な生活スタイルが1つ増えるごとに認知症リスクは11%減少

 7つの生活スタイルを、2つ以下しか実行していない糖尿病の人では、0.69%が認知症を発症したが、すべてを実行している糖尿病患者の人では、認知症の発症は0.28%に抑えられていた。

 実行している健康的な生活スタイルが1つ増えるごとに、認知症リスクは11%減少した。このスコアと認知症のリスクとの関連性は、服用している治療薬や血糖管理の影響を考慮しても認められた。

 なお全体では、7つの生活スタイルのすべてを実行している人の割合は9%、6つが24%、5つが30%、4つが22%、3つが11%、0~2が4%だった。

 「今回の研究では、2型糖尿病のある人は、生活スタイルをより健康的にすることで、認知症リスクが大幅に低下できる可能性があることが示されました」と、インリー氏は言う。

 「糖尿病の人の治療サポートや支援をしている医師や医療従事者は、生活スタイルの改善を強く推奨することを考えるべきです。生活スタイルを変更することで、全体的な健康が改善するだけでなく、認知症の予防または発症の遅延にも寄与できる可能性があります」としている。

 なお、今回の研究は、参加者の生活スタイルについて自己申告のアンケートによって調査しており、参加者がすべての詳細を正確に覚えていない可能性があることや、時間の経過にともなう生活スタイルの変化についても把握できていないなど、限界があることを指摘している。

Seven healthy lifestyle habits may reduce dementia risk for people with diabetes: A good night's sleep, social contact and exercise among healthy habits (米国神経学会 2022年9月14日)
Association of Combined Healthy Lifestyle Factors With Incident Dementia in Patients With Type 2 Diabetes (Neurology 2022年9月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲