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2022年04月27日

糖尿病とともに生きる人の負担を軽減 糖尿病にともなう困難をどうサポートする?

 糖尿病とともに生きる人は、ときには困難な状況に立ち向かわなければならないことがある。糖尿病にともなう困難に対し、どのように支援すれば良いか?

 「糖尿病の管理は簡単なことではありませんし、常に完璧にできる人はいません。少し失敗したというときでも、明日のために気持ちを切り替えることも大切です」と、専門家はアドバイスしている。

糖尿病とともに生きるのはハードなこと

 英国糖尿病学会の糖尿病専門看護師で療養指導士のエスター ウォルデン氏は、糖尿病診療に18年間携わっている。「糖尿病とともに生きる多くの人々から、糖尿病についての悩みや経験についてお聞きしてきました」と述べている。

 「うまくいかないときにどんな工夫をしたか、どのように糖尿病がもたらす課題を克服したか、他人から助けを引き出したかなど、心強い物語が多く聞かれました」。

 「しかし、糖尿病とともに生きることは、1年365日休みなくハードな仕事に取り組むことに似ています。また、社会には糖尿病に対する誤解や偏見が少なくありません。糖尿病の人は、そうした人々の無理解と戦いながら、難しい選択を迫られることがあります」と、ウォルデン氏は言う。

糖尿病に対する誤解や偏見

 たとえば、糖尿病についてよく知らない人は、インスリンを使っている患者は、糖尿病が悪化したから注射をしなければならないのだと誤解をすることが少なくない。

 しかし、実際にはインスリン治療は糖尿病治療の最終手段ではない。2型糖尿病の治療では、血糖コントロールを良好に保つために、早い段階からインスリン治療を始めることも多い。飲み薬にインスリンを追加するなど、簡単に始められる方法もある。

 早めにインスリン治療を開始すると、血糖値を下げようと頑張ってきた膵臓を休ませることができ、膵臓の疲れがとれることで、インスリンの分泌量がまた増えてくることもある。

 また、2型糖尿病を発症したのは、生活スタイルが不健康でだらしがないからだという誤解も根強い。

 たしかに2型糖尿病の発症には、食べ過ぎや運動不足、ストレスといった環境的な因子も関わっているが、遺伝的な因子も大きく影響することが明らかになっている。たとえば体質としてインスリンの分泌量が少なめの人は、糖尿病になりやすいことが知られている。

1型糖尿病の人は毎日180以上多く決定をしている

 米国のスタンフォード大学の研究によると、1型糖尿病とともに生きる人は、糖尿病ではない人に比べて、自分の健康について毎日180以上多く決定をしているという。これは5分ごとに1つの決定をしていることに相当する。

 糖尿病とともに生きる人々は、注射するインスリンの量や、いつ注射するか、食事で何を食べるか、いつ血糖値を測定するか、活動を安全に行うためにどうするかなど、毎日信じられないほど多くの重要な健康上の決定をしている。これは、多くの糖尿病の人にとってストレスになっている。

 さらには、1型糖尿病について十分に理解されておらず、2型糖尿病との違いを理解されていないことが、誤解や偏見につながり、1型糖尿病の人の治療や生活を困難にしている。

 調査によると、1型糖尿病の人の55%が不安やストレスを、46%がうつを、50%が疲れや倦怠感が増すのを経験したことがある。極度のストレスがかかったり、ストレス下にある期間が長引くと、「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になることもある。

チーム医療にメンタルヘルスの専門家が参加

 多過ぎる悩みに直面すると、ストレスになり、合理的でない決定を下したり、自分自身のことをあまり気にかけなくなることがある。糖尿病の治療に十分に取り組めなくなり、危険な合併症のリスクが高まる。

 「糖尿病とともに生きていくことは、困難で葛藤に満ち、決して単純なことではありません。糖尿病に押しつぶされ、燃えつきてしまう人もいます。そうした人々をサポートする仕組みが必要です」と、同大学ヘルスケア部のミーガン マホーニー氏は言う。

 燃え尽き症候群を防ぐために、マホーニー氏が提案しているのは2つの方法だ。1つは医師・看護師・薬剤師・栄養士などの医療スタッフがメンバーとなり、緊密に協力しあいながら患者を支援するチーム医療を構築すること。

 もう1つは、チーム医療にメンタルヘルスの専門家を交えることだ。糖尿病とともに生きる人々のメンタルの健康を長期的にサポートする専門家も必要だという。「専門的な医療スタッフが、それぞれの専門性をいかしながら、個々の患者さんの話によく耳を傾けることが重要です」としている。

新しいテクノロジーが糖尿病患者の生活を改善

 糖尿病の治療に新しいテクノロジーを取り入れることも、糖尿病とともに生きる人々を支援するのに役立つと期待されている。

 米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)は、糖尿病患者の自己管理を向上させる新しいテクノロジーとして、▼持続血糖値モニター(CGM)、▼自動化されたインスリンポンプ、▼スマートインスリンペン、▼スマホなどの糖尿病アプリを挙げて、「糖尿病治療に革新的な変化をもたらす可能性があります」と述べている。

 「こうした新しいテクノロジーが、糖尿病患者さんの生活を改善するという証拠は増えています。たとえば、持続血糖モニター(CGM)は、インスリン療法を必要とする1型糖尿病と2型糖尿病の患者さんにとって、臨床的・心理社会的・行動的な結果の改善に関連していることが示されています」と、NIDDKのプライマリケア医で糖尿病専門医のタマラ オザー氏は言う。

 「1型糖尿病患者さんにとっては、インスリンポンプの自動的にインスリンを送達するシステムが進歩しており、インスリンポンプ療法が大きく変わる可能性もあります」。

 ただし、こうした新しいテクノロジーはまだ登場したばかりで、医療費が高い傾向があり、アクセスできる患者は限られる。今後の技術革新により価格を下げて、より多くの人がアクセスできるようにすることが課題になっているという。

常に完璧にできる人はいない

 「糖尿病の管理は簡単なことではありませんし、常に完璧にできる人はいません。困難を感じたり、少し失敗したというときでも、明日のために気持ちを切り替えることも大切です。血糖自己測定で表示された血糖値に一喜一憂しないで、長期的な視点をもつことが必要です」と、英国糖尿病学会のウォルデン氏は言う。

 「糖尿病とともに生きることは、一生続く長いコースのマラソンを走ることに似ているかもしれません。はじめからマラソンができる人はいません。たとえば週に2回の短距離から始めて、すこしずつ積み上げていきと、距離をのばすことができます。小さな勝利を重ねることができるようになり、治療に対するモチベーションを維持できるようになります」としている。

Easing The Burden For People With Diabetes (英国糖尿病学会 2022年3月15日)
New research shows how to keep diabetics safer during sleep (スタンフォード大学 2014年5月8日)
Patients, clinicians benefit from team-based care model, study finds (スタンフォード大学 2021年12月16日)
The stress of making diabetes decisions (Open Access Government 2021年5月12日)
The Role of Inflammation in Depression and Fatigue (Frontiers in Immunology 2019年7月19日)
How Can You Help Patients Use New Diabetes Technologies? (米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所 2022年4月6日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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