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2023年01月27日
コーヒーが糖尿病や脂肪肝のリスクを低下 コーヒーを飲むと寿命が延びるという報告も

コーヒーを飲む習慣が、2型糖尿病の人の脂肪肝を抑制するのに役立つ可能性があるという研究が発表された。
コーヒーを1日に2~3杯飲んでいる人は、心血管疾患のリスクが低く、寿命が長い傾向があることも示されている。
コーヒーに含まれるカフェインやポリフェノールといった天然成分が効果をもたらしていると考えられている。
ただし、コーヒーの飲み過ぎにも注意が必要で、コーヒーに含まれるカフェインを過度に摂取すると、不眠や中毒がもたらされるおそれもある。コーヒーの安全な摂取量は1日3~5杯までだという。
コーヒーを飲んでいる糖尿病の人は脂肪肝が少ない
肝臓に脂肪が多くたまった状態が脂肪肝。脂肪肝には、アルコールを飲み過ぎている人がなりやすいアルコール性の脂肪肝と、アルコールをあまり飲んでいないのに肝臓に脂肪がたまってしまう非アルコール性の脂肪肝がある。 「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」は、アルコールを除くさまざまな原因で起こる脂肪肝が引き起こす肝障害の総称。放置していると肝臓の病気が進行して、肝炎や肝硬変、肝臓がんになるリスクが高まる。 ポルトガルのコインブラ大学の研究で、コーヒーを飲む習慣が、肥満や過体重のある2型糖尿病の人のNAFLDの重症化を軽減するのに役立つ可能性が示された。 コーヒーに含まれるカフェインやポリフェノールといった天然成分が効果をもたらしていると考えられている。コーヒーの天然成分が肝臓の酸化ストレスを軽減?
研究では、肥満や過体重のある156人の男女を対象に、24時間尿から、コーヒーの摂取量などを調査した。うち98人は2型糖尿病があつた。 その結果、コーヒーの摂取量が多い人は脂肪肝のスコアが低く、肝硬変になるリスクが低いことが分かった。とくに肥満と2型糖尿病のある人では、コーヒーの摂取量が多いほど、NAFLDの重症度が低い傾向があることが示された。 「NAFLDのある人の多くは、肥満・2型糖尿病・脂質異常症・高血圧などをともなっています。原因として多いのは、高カロリーの食事や運動不足などの、不健康な生活スタイルです」と、同大学神経科学・細胞生物学センターのジョン ジョーンズ氏は言う。 「コーヒーを習慣として飲むことは、NAFLDなどの慢性肝疾患による肝硬変などのリスクを軽減することに関連していることが示されました。肝臓の状態を良くすることは、2型糖尿病の重症化の抑制にもつながります」 「さらに研究が必要ですが、コーヒーに含まれるポリフェノールなどの生理活性成分が、肝臓の酸化ストレスを軽減し、繊維化のリスクを減らしている可能性があります」としている。コーヒーを飲むと寿命が延びるという報告も

コーヒーを1日に2~3杯飲んでいる人は死亡リスクが低い
その結果、すべての種類のコーヒーの摂取は、あらゆる原因による死亡リスクの減少と関連していることが示された。 期間中に6.2%(2万7,809人)の人が死亡したが、1日にコーヒーを2~3杯飲んでいる人は、コーヒーを飲まない人に比べ、挽いた豆で淹れたコーヒーを飲んでいる人で27%、インスタントコーヒーを飲んでいる人で11%、カフェイン抜きのコーヒーを飲んでいる人で14%、それぞれ死亡リスクが低かった。 さらに、期間中に9.6%(4万3,173人)の人が心血管疾患と診断されたが、コーヒーの摂取は、心血管疾患の発症リスクの減少とも関連していた。 1日コーヒーを2~3杯飲んでいる人は、心血管疾患のリスクがもっとも低く、挽いた豆のコーヒーで20%、インスタントコーヒーで9%、カフェイン抜きのコーヒーで6%、それぞれ死亡リスクが低かった。 不整脈のリスクも、コーヒーを飲む習慣によって減少することが示された。期間中に6.7%(3万100人)が不整脈と診断されたが、不整脈のリスクは、挽いた豆のコーヒーを1日に4~5杯飲んでいる人で17%低く、インスタントコーヒーを1日に2~3杯飲んでいる人では12%低かった。 なお参加者全体で、インスタントコーヒーを飲んでいる人は44.1%、豆を挽いて淹れたコーヒーを飲んでいる人は18.4%、カフェイン抜きのコーヒーを飲んでいる人は15.2%、コーヒーを飲まない人は22.4%だった。 「コーヒーを軽度から中程度摂取する習慣は、健康的な生活スタイルの一部とみなされるべきかもしれません」と、キスラー教授は指摘している。コーヒーを飲む習慣は「妊娠糖尿病」のリスクも低下
シンガポール国立大学医学部などによる別の研究では、妊娠後にコーヒーを飲んでいると、「妊娠糖尿病」を経験した女性の2型糖尿病の発症リスクが低下することが示されている。 妊娠糖尿病は、妊娠中に発症または発見された、糖尿病と診断されるほどではない軽い糖代謝異常。妊娠糖尿病を経験した女性は、多くは産後に血糖値は正常化するものの、20年~30年後には2型糖尿病を発症するリスクが高くなるとみられている。 研究グループは、妊娠糖尿病の病歴をもつ4,500人以上の女性を25年以上追跡して調査し、長期のコーヒー摂取とその後の2型糖尿病の発症リスクとの関連を調べた。 その結果、カフェイン入りのコーヒーを飲んでいる女性は、まったく飲まない女性に比べ、2型糖尿病の発症リスクが低いことが示された。糖尿病リスクは、コーヒーを1日に1杯以下飲んでいる女性で10%、2~3杯の女性で17%、4杯以上の女性で53%、それぞれ低下した。コーヒーの飲み過ぎにもご注意 1日3~5杯まで
「これは、コーヒーに含まれるポリフェノールなどの天然の微量栄養素や、生理活性成分によるものと考えられます。こうした生理活性成分は、野菜や果物、大豆、ナッツ、全粒穀物などにも含まれます。こうした健康的な食品をバランス良く食べることが勧められます」と、同大学産科・婦人科のクイリン チャン教授は言う。 「ただし、コーヒーの過剰摂取にも注意が必要です。コーヒーに含まれるカフェインを過度に摂取すると、不眠や中毒がもたらされるおそれがあります。砂糖やミルクの使い過ぎにも注意が必要です。また一般的に、妊娠している女性や胎児、子供に対するコーヒーの安全性については十分に分かっていません」と、注意を促している。 欧州食品安全機関(EFSA)のカフェインの安全性に関するレビューによると、コーヒーの適度な摂取量は1日3~5杯(カフェイン 400mg)までだという。 New research reveals increased coffee consumption may reduce severity of non-alcoholic fatty liver disease in those with type 2 diabetes (Institute for Scientific Information on Coffee January 2023年1月12日)Increased Intake of Both Caffeine and Non-Caffeine Coffee Components Is Associated with Reduced NAFLD Severity in Subjects with Type 2 Diabetes (Nutrients 2022年12月20日)
Coffee drinking is associated with increased longevity (欧州心臓病学会 2022年9月27日)
The impact of coffee subtypes on incident cardiovascular disease, arrhythmias, and mortality: long-term outcomes from the UK Biobank (European Journal of Preventive Cardiology 2022年9月27日)
Drinking coffee regularly after pregnancy may lower the risk of type 2 diabetes for women who had diabetes during pregnancy (シンガポール国立大学 2022年12月13日)
Habitual coffee consumption and subsequent risk of type 2 diabetes in individuals with a history of gestational diabetes - a prospective study (American Journal of Clinical Nutrition 2022年11月14日) Scientific Opinion on the safety of caffeine (EFSA Journal 2015年3月27日)
カフェインの過剰摂取について (農林水産省 2022年9月12日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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