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2023年01月25日

「ファストフード」が糖尿病を悪化させる 脂肪肝リスクが上昇 糖質や脂肪の摂り過ぎにご注意

 ファストフードは手軽に利用でき便利だが、糖尿病リスクを上昇させる一因になっているという研究が発表された。

 ファストフードを多く利用する食事スタイルは、2型糖尿病や心臓病のリスクを高めることが示された。ファストフードの利用では、容易にカロリーを摂り過ぎてしまうという。

 ファストフードを過度に利用していると、脂肪肝のリスクも上昇する。

 「脂肪肝のリスクの高い人に、食事や栄養についての情報や教育を提供する必要があります」と、研究者はコメントしている。

ファストフード中心の食事は健康に悪い

 ファストフードは手軽に利用でき便利だが、糖尿病リスクを上昇させる一因になっているという研究が発表された。

 ファストフードとは、短時間で調理でき、注文してからすぐ食べられる手軽な食品のこと。ハンバーガー・ホットドッグ・ピザ・フライドチキン・ドーナツ・ケーキ・丼もの・ラーメン・お好み焼きなどがある。

 健康志向の高まりを受けて、ファストフードにも健康的なメニューは増えているものの、依然としてその多くはポーションサイズが大きく、高カロリーで、脂肪・糖質・塩分が多く、栄養価は低い。

 たまに利用するのなら良いが、ファストフードを中心とした食事スタイルは健康に悪いことが、世界中の多くの研究で示されている。

ファストフードは食べ過ぎになりやすい

 ファストフードをよく利用している人は、それに含まれるカロリーを大幅に過小評価してしまう傾向があり、容易にカロリーを摂り過ぎてしまうという調査結果も報告されているので、注意が必要だ。

 米ハーバード大学医学部が、米国の1,877人の成人、1,178人の若年者、330人の小児を対象に行った調査によると、ファストフード店を利用している人の3分の2は、注文したファストフードのカロリーを過小評価し、4分の1はカロリーを500kcal以上も少なく見積もっていた。

 米国では、大手の外食チェーン店は、メニューにカロリーなどの表示をすることが義務付けられているが、カロリー表示をよく見ない人が多いという。

関連情報

ファストフードは糖尿病や心臓病のリスクを高める

 米ミネソタ大学による研究で、ファストフードを多く利用する食事スタイルは、2型糖尿病や心臓病のリスクを高めることが示されている。

 研究グループは、シンガポールに在住している約5万2,000人の市民の食生活を、1993年から16年間にわたり調査した。

 その結果、ファストフードを週に1回以上利用している人は、利用していない人に比べ、心臓病で死亡するリスクが20%高く、利用頻度が週に2~3回に増えると、リスクは50%高くなり、さらに週に4回以上になると、リスクは80%近くまで上昇することが分かった。

 また、ファストフードを週に2回以上食べていると、2型糖尿病の発症リスクが27%上昇することも示された。

 「米国や西洋からはじまったファストフードは、グローバリゼーションの高まりを受けて、世界中に広がっています。その多くは、健康に対して悪影響をもたらしています。伝統的なより健康的な食事スタイルの価値を見直すべきです」と、ミネソタ大学公衆衛生学部のアンドリュー ウーデゴール氏は述べている。

ファストフードを食べ過ぎると脂肪肝のリスクも上昇

 南カリフォルニア大学による別の研究によると、2型糖尿病や肥満のある人が、ファストフードを過度に利用していると、「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」のリスクが上昇する。

 「脂肪肝」は、肝臓に脂肪がたまった状態。脂肪肝を放置していると、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などのリスクが高まるだけでなく、糖尿病にも悪い影響があらわれる。

 脂肪肝は、その原因によって分類されており、ひとつはアルコールの飲み過ぎによる脂肪肝で、アルコール性脂肪肝と呼ばれている。これに対し、アルコールはそれほど飲まない人が発症するのが、非アルコール性脂肪肝。

 脂肪肝が悪くなると、肝臓が硬くなる肝硬変や、肝不全、肝がんなどに進行することもあり、命にもかかわる。

糖質や脂肪の多い食品を食べ過ぎると肝臓に負担が

 研究では、2型糖尿病や肥満のある人が、1日のカロリー摂取量の20%以上をファストフードから摂っていると、ファストフードをあまり食べないかまったく食べない人に比べて、肝臓の脂肪レベルが大幅に上昇することが示された。

 とくに糖質や脂肪が過剰に含まれる高カロリーのファストフードであると、少し食べただけでも肝臓に負担がかかる可能性があるという。

 「ファストフードを1日1回利用するくらいであれば、害は少ないと考えられますが、1日のカロリーの5分の1以上をファストフードから摂っている人は、肝臓が危険にさらされているおそれがあります」と、同大学健康科学部のアニ カーダシアン氏は言う。

食事や栄養についての情報や教育の提供が必要

 「脂肪肝を改善するために、生活スタイルを改めることが重要です。アルコールを飲み過ぎている人は節酒をして、肥満が原因の人は、健康的な食事と、運動の習慣化により、適正体重に戻す計画をたてることをお勧めします」と、カーダシアン氏は指摘している。

 「とくに食事の改善は重要なので、2型糖尿病や肥満があり、脂肪肝のリスクの高い人には、食事や栄養についての情報や教育の提供を奨励することを求めています」としている。

 研究グループは、保健福祉省による「米国健康栄養調査(NHANES)」の2017~2018年のデータから、脂肪肝の検査を受けていて食事調査にも協力した、約4,000人の成人について調査した。

 参加者の52%がファストフードを利用していていて、1日のカロリー摂取量の20%以上をファストフードから摂取している人は29%に上った。

Consumers largely underestimating calorie content of fast food (ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2013年5月23日)
Consumers' estimation of calorie content at fast food restaurants: cross sectional observational study (ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2013年5月23日)
Fast food intake increases risk of diabetes and heart disease in Singapore (米ミネソタ大学医療センター 2012年7月2日)
Western-Style Fast Food Intake and Cardiometabolic Risk in an Eastern Country (Circulation 2012年7月2日)
Consumption of fast food linked to liver disease: Risk of liver damage is highest for those with obesity or diabetes (南カリフォルニア大学 2023年1月10日)
Food environment and diabetes mellitus in South Asia: A geospatial analysis of health outcome data (Clinical Gastroenterology and Hepatology 2023年1月10日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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