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2022年08月18日

植物肉や大豆ミートは健康に良く環境にもやさしい 糖尿病の人は動物肉を食べない方が良い?

 大豆などを使った「植物肉」は、動物性の肉に代わるもので、健康増進に役立つだけでなく、環境保護の点でも優れているという研究が発表された。

 食品加工の技術が進め、動物性の肉とそれほど変わらない味わいや食感、満足度を再現した植物肉は増えている。

 「植物ベースの肉を食事に取り入れるのは、健康のために、もっとも簡単に取り組める方法となる可能性があります」と、研究者は述べている。

 動物性の脂肪の多い赤身肉やハム・ソーセージなどの加工肉を食べ過ぎていると、糖尿病リスクが上昇するという、大規模な調査の結果も発表されている。

普及が進んでいる植物肉は健康に良い

 スーパーやコンビニなどで、大豆などを使った「植物肉」をご覧になったことはあるだろうか。

 「植物肉」とは、大豆、エンドウ豆、ソラ豆、小麦といった植物性原料を使用した代替肉のことで、「プラントベースミート」「大豆ミート」とも呼ばれている。

 食品加工の技術が進み、動物性の肉とそれほど変わらない味わいや食感、満足度を再現した商品が増えており、最近では冷凍食品やファストフードでも、植物肉を取り入れたメニューは増えている。

 植物由来の植物肉は、食物繊維が含まれ、動物性の肉と比べて、悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪を上昇させる飽和脂肪酸が大幅に抑えられている。

 植物肉は、米国のビヨンド ミートやインポッシブル フーズといった食品会社が旗振り役となり普及が進み、欧米や日本で普及が進み急成長している

植物肉は健康だけでなく環境にもやさしい

 動物性の肉に代わる「植物肉」は、健康増進に役立つだけでなく、環境保護の点でも優れているという研究を、英国のバース大学が発表した。

 「全粒穀物や玄米などの、精製されてない穀物には、食物繊維が豊富に含まれています。また、低脂肪の乳製品を利用すると、飽和脂肪酸の摂取を減らすことができます。でも、それらを毎日の食事に取り入れるのは大変だと思っている人は少なくありません」と、バース大学心理学部のクリストファー ブライアント氏は言う。

 「動物性の肉の代わりに、植物ベースの肉を食事に取り入れるのは、もっとも簡単に取り組める方法となる可能性があります。植物肉は、より健康的で、環境にもやさしく、消費者の好みや行動を考慮した、持続可能な解決策となるかもしれません」としている。

植物肉は動物肉に比べ環境負荷が少ない

 研究グループは、植物性食品がもたらす健康と環境への影響や、消費者の行動などを調べた43件の研究をレビューした。

 ある調査によると、植物由来の肉や乳製品を食べている消費者のほぼ90%は、植物性の食品を好んで食べるが、ときには肉や魚も食べる柔軟なベジタリアンである「フレキシタリアン」だった。

 別の研究では、動物性の加工肉に比べ、味・食感・価格がよく似ている植物由来の肉があれば、動物性の代わりに利用したいと考えている消費者が多いことが示された。この研究では、動物性の肉を植物ベースの食品に置き換えると、二酸化炭素(温室効果ガス)の排出量を減らせることも示されている。

 また、ある研究では、ドイツ産牛肉の消費量の5%をエンドウ豆ベースの代替肉に置き換えると、温室効果ガスの排出量を年間に最大で800万トン削減できることが示された。

 別の研究では、ビーフハンバーガーに比べ、植物肉を使ったハンバーガーは、温室効果ガスの排出量が最大で98%少ないことが分かった。

 研究者によると、動物肉の生産には多くの農地や水が必要となるが、植物肉であればそうした環境負荷は少なくて済むという。

関連情報

植物肉で持続可能な開発を実現

 「多くの研究は、温室効果ガスの排出や水利用、土地利用の点で、植物性食品は動物性食品に比べて、持続可能な開発のためにはるかに有利であることを指摘しています。動物性食品の代替として植物性食品を利用することで、幅広い健康上のベネフィットを得られる可能性があります」と、ブライアント氏は言う。

 「ここ数年、植物ベースの食品の生産者は、信じられないほどの大きな進歩を遂げています。味や食感、調理方法などを改善できる大きな可能性が依然としてあります。また、ビタミン含有量を増やすなど、栄養を改善するために材料とプロセスを革新できる可能性もあります」。

 動物肉に比べ植物肉は健康上のベネフィットがある一方で、ブライアント氏は、個々の健康に影響をおよぼす要因は、全体的なカロリー消費や運動・活動レベルなど多様であることも認めている。

 「食事スタイルを改善し、健康全体をより良くするために、どのような方法が効果的かを知るために、より多くの研究が必要となりますが、より健康的で、よりおいしい食品を提供できるようになれば、持続可能な開発を実現するための選択肢を増やすことにつながります」としている。

動物肉を食べ過ぎると糖尿病や肥満のリスクは上昇
魚や大豆を食べるとリスクは低下

 赤身肉やハム・ソーセージなどの加工肉を食べ過ぎている人は、糖尿病の発症リスクが上昇することが、シンガポールで実施された大規模調査で示されている。

 研究には、45~74歳の6万3,257人のシンガポール在住の成人が参加。11年追跡して調査した結果、赤身肉の摂取量がもっとも多いグループでは、もっとも少ないグループに比べ、糖尿病の発症リスクが23%上昇した。

 一方で、赤身肉を魚類や植物性食品に置き換えると、糖尿病リスクは減少することも判明した。

 動物肉は、タンパク質、鉄、亜鉛、ビタミンBなどの栄養素の優れた供給源になる。しかし、食べ過ぎると体に害をもたらすと考えられている。

 「赤身肉や加工肉など動物性食品を食べ過ぎている人は、魚類、乳製品、大豆、豆類などの食品に置き換えることを考えるべきです」と、デューク シンガポール国立大学医学部のコー ウン プエイ教授は述べている。

 「食事から動物肉を完全に取り除く必要はありませんが、毎日の食事で、とくに動物性脂肪の多い赤身肉の摂取量を減らし、脂肪の少ない肉や魚、または大豆などの植物性のタンパク質食品や乳製品に置き換えると、糖尿病リスクを下げられる可能性があります」。

 米糖尿病学会(ADA)は糖尿病の人に対し、野菜を十分に摂り、全粒粉や精製されていない穀類、豆類、大豆、低脂肪の牛乳や乳製品を選ぶことを推奨している。魚も週に2回以上食べることを勧めている。

Plant-based meat 'healthier and more sustainable than animal products' - new study (バース大学 2022年7月29日)
Plant-based animal product alternatives are healthier and more environmentally sustainable than animal products (Future Foods 2022年12月)
Eating meat linked to higher risk of diabetes (デューク シンガポール国立大学医学部)
Meat, Dietary Heme Iron, and Risk of Type 2 Diabetes Mellitus: The Singapore Chinese Health Study (American Journal of Epidemiology 2017年8月22日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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