ニュース
2021年05月24日
糖尿病の食事に「グリセミック・インデックス」を導入 血糖値の急上昇を避ける食べ方
- キーワード
- ライフスタイル 血糖自己測定(SMBG) 食事療法
「グリセミック インデックス(GI)」は、炭水化物がどれだけ血糖値を上げるかを示す尺度。
カナダのトロント大学などが、20ヵ国の13万7,851人を対象とした調査で、GIが高い食事をしていると、心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死のリスクが上昇することを確かめた。
「血糖値をすぐに上げてしまう食品を摂り過ぎていると、寿命を縮めてしまうおそれがあることを、気にとめておく必要があります」と、研究者は述べている。
カナダのトロント大学などが、20ヵ国の13万7,851人を対象とした調査で、GIが高い食事をしていると、心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死のリスクが上昇することを確かめた。
「血糖値をすぐに上げてしまう食品を摂り過ぎていると、寿命を縮めてしまうおそれがあることを、気にとめておく必要があります」と、研究者は述べている。
「グリセミック・インデックス(GI)」は食後血糖値の上昇を示す指数
「グリセミック・インデックス(GI)」は、食後血糖値の上昇度を示す指数のこと。糖質が多く食物繊維の少ない食品や飲料はGIが高いことが多い。たとえば、白米などの精製穀物は玄米などの全粒穀物よりもGIが高いことが知られている。
一般的に、血糖値が上がりやすいのは、すぐエネルギーになりやすいごはんやパン、お菓子、高カロリーの清涼飲料などの炭水化物の多い食品とされている。ついでタンパク質の多い肉類や魚類、卵、乳製品など、さらには油の多い食品が続く。
三大栄養素のひとつである炭水化物は、体内で消化吸収される糖質と、消化されにくい食物繊維に分かれる。糖質はすぐにエネルギーになりやすく、血糖値を上げやすい。
同じ量の炭水化物を含む食品でも、糖質や食物繊維などの量により、血糖値が急激に上昇するものとおだやかに上昇するものがある。日本でも根強い人気がある「低GIダイエット」や「低炭水化物ダイエット」は、炭水化物の摂り方に着目した食事法だ。
FAO(国際連合食糧農業機関)と世界保健機関(WHO)が1998年に、「血糖の反応に対する食品の影響を知るための指標として利用できる。2型糖尿病と耐糖能障害の臨床にも応用できる可能性がある」というレポートを出し、GIは注目されるようになった。
GIについての科学的なエビデンスが求められている
グリセミック・インデックス
血糖値を上げやすい食品(高GI食品)と
上げにくい食品(低GI食品)がある
血糖値を上げやすい食品(高GI食品)と
上げにくい食品(低GI食品)がある
出典:シドニー大学
高GIの食事を続けていると心筋梗塞や脳卒中が増える
カナダのトロント大学などがこのほど、20ヵ国の35~70歳の13万7,851人が対象(高所得国4ヵ国、中所得国11ヵ国、低所得国5ヵ国)の、規模の大きい研究を医学誌「ニューイングランド ジャーナル オブ メディシン」(NEJM)に発表した。
研究グループは、カナダのマクマスター大学やハミルトンヘルスサイエンスによる人口健康研究所(PHRI)などにより運営されている「前向き都市農村疫学調査」(PURE)を通じて、35~70歳の男女13万7,851人を9.5年間(中央値)追跡して調査した。
その結果、GIがもっとも高い食事をしていたグループでは、もっとも低いグループに比べ、心筋梗塞、脳卒中、心不全、および心血管死のリスクが、ベースライン時に心血管疾患既往がないと21%、心血管疾患既往のあると51%、それぞれ高くなることが分かった。
対象国には、高所得国4ヵ国(カナダ、スウェーデン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)、中所得国11ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、イラン、マレーシア、パレスチナ、ポーランド、南アフリカ)、低所得国5ヵ国(バングラデシュ、インド、パキスタン、タンザニア、ジンバブエ)が含まれた。
対象者のGIは、ベースライン時に行った28項目からなる食事質問票から判定した。その結果、GI値の平均は82.6で、地域別にみると、欧州と北米は76.7、南米は79.7、アフリカは85.3、中東は77.9、南アジアは83.3、東南アジアは85.4、中国は86.2だった。
GIについて、さらに多くの研究により科学的なエビデンスが集積されることが待たれている。今回のトロント大学による研究報告は、糖尿病の食事療法でGIをどう活用するかについて、一石を投じるものになると期待されている。
炭水化物がメインの食品はすべてが同じというわけではない
Glycemic index, glycemic load, carbohydrates, and type 2 Diabetes(Diabetes Care 2013年12月)
Glycemic index, glycemic load, and risk of type 2 diabetes: results from 3 large US cohorts and an updated meta-analysis(American Journal of Clinical Nutrition 2014年7月)
Dietary glycemic index, glycemic load and incidence of type 2 diabetes in Japanese men and women: the Japan public healthcenter-based prospective study(Nutrition Journal 2013年12月27日)
Global study finds diet high in poor-quality carbohydrates increases heart disease and death(トロント大学 2021年3月1日)
Glycemic Index, Glycemic Load, and Cardiovascular Disease and Mortality(New England Journal of Medicine 2021年4月8日)
Glycemic Index(シドニー大学)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
食事療法の関連記事
- ダイエット飲料と加糖飲料はどちらもMASLDリスク
- フライドポテトは2型糖尿病のリスクを高める
- 科学的データで見る「ラーメンを食べる頻度」と「健康リスク」の関係
- 植物性食品中心の食事は慢性疾患の併発を予防する
- 健康的な食事と運動は飲酒による肝臓のダメージを抑制して死亡を減らす
- GLP-1受容体作動薬で痩せるには生活習慣改善が大切
- 【コーヒーが糖尿病リスクを低減】コーヒーを飲んでいる人はフレイルや死亡のリスクも低下
- 糖尿病の人は「サルコペニア」にご注意 筋肉の減少にこうして対策 何歳からでも予防・改善が可能
- 野菜や玄米の「植物ステロール」が糖尿病や肥満を改善 コレステロールを低下させインスリン抵抗性を軽減
- 高血圧対策では減塩が必要 魚介系ラーメンは血圧を上げない? こんな食事は食塩が多くなりやすい

医療・健康情報グループ検索