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2021年05月21日

外食やテイクアウトのメニューにカロリー表示を 健康的な食品を選べて糖尿病や肥満のリスクも低下

 レストランやカフェ、テイクアウトなどのメニューやラベルにカロリー表示があると、消費者が健康的な食品を選べるようになり、肥満や2型糖尿病のリスクを低下できるという調査結果が発表された。
 英国では外食メニューなどにカロリー表示をすることが義務づけられる。コロナ禍では、健康的な食品を選択するようにするための戦略はますます重要になっている。
カロリー表示で肥満や糖尿病に対策
 英国政府は2022年4月から、レストラン、カフェ、テイクアウトなど、250人以上の従業員を抱える外食産業に、提供する食品のメニューやラベルにカロリーを表示することを義務づけることを決めた。

 増加している肥満や2型糖尿病などに対策するための措置で、家庭向け外食産業を利用する人により多くの情報を伝え、より健康的な選択を行えるようにしようという狙いがある。

 英国の成人の3人の2人(63%)が、小学生でも3人に1人が肥満や過体重だという。肥満や過体重により、年間に9,400億円(61億ポンド)の経済的な損失が生じているとしている。

 新型コロナのパンデミックにより、肥満が健康にもたらす悪影響はより深刻なものになっている。肥満は新型コロナを重症化させる危険因子でもある。
外食のカロリーが分かれば健康的な食品を選べる
 「レストランや家庭で、ご自身とご家族のために、より健康的な食品を選べるようにすることが望まれます。そのために、注文した食べ物や飲み物についての正確な情報に簡単にアクセスできる仕組み作りが必要です」と、ジョー チャーチル公衆衛生大臣は述べている。

 保健省の英国公衆衛生局(PHE)の調査によると、外食などのメニューにカロリー表示が載っていることに、国民の79%が賛成しているという。

 PHEは、肥満や2型糖尿病に取り組み、健康的な食事や運動の習慣化を促し、メンタルヘルスケアを改善することで、国民の健康をレベルアップするための全国的な取り組みを進めている。
健康的なオプションを得られるようにするべき
 英国糖尿病学会(Diabetes UK)は、レストランやカフェ、テイクアウトなどのすべての店舗のメニューにカロリー表示を義務付けることを英国政府に求める、「Food Upfront」キャンペーンを開始し、署名を集めている。

 英国で購入できるすべての食品や飲料に栄養ラベルを貼ること義務付けるとともに、高カロリーで栄養価の低いジャンクフードの広告を制限することも求めている。

 「肥満は2型糖尿病の最大の危険因子です。英国でリスクが高い人は1,360万人に上ると推定されています」と、同学会では述べている。

 「政府はテイクアウトのサービスを提供しているレストランやカフェなどのチェーンに、栄養表示をした食品ラベルを付けることを義務づけしますが、この取組みをもっと徹底してすべての店舗に広め、健康リスクのある人々が健康的なオプションを得られるようにするべきです」としている。
脂肪・糖質・塩分がひと目で分かる栄養ラベル
 バース大学やブリストル大学の研究によると、ピザやハンバーガー、サンドイッチなど調理済み食品に栄養表示をし、含まれる塩分、糖質、カロリーなどを分かりやすくすると、消費者はより健康的な食品を選ぶようになる。

 英国の栄養ラベルは、健康のためになるべく減らしたい脂肪・飽和脂肪酸・糖質・塩分といった栄養素の量を、赤(高)、茶色(中)、緑(低)の3色で表示した信号機スタイルになっている。

 研究グループが2005年7月~2008年7月に2万707世帯を対象に行った調査によると、栄養ラベルが表示されている店舗で買い物をした消費者は平均して、月間に総カロリーを588Kcal、体に悪い飽和脂肪酸を14g、糖分を7g、ナトリウム(塩分)を0.8mg、それぞれ減らしていた。

 「食品に栄養ラベルを表示することで、消費者が買い物のときにより健康的な食品を選びやすくなり、さらに買い物かごに入れた食品の栄養を家庭で確認できるようになるという、二重の効果を期待できます。食品メーカーがより高品質の食品を提供するよう、動機付けを与えることにもなります」と、バース大学経済学部の主任研究員であるエレオノラ フィチェーラ氏は言う。

英国の加工食品などに貼られた栄養ラベル
3色に分けて表示し脂肪・飽和脂肪酸・糖質・塩分の量がひと目で分かるように工夫してある

コロナ禍で食品選択はますます重要
 米タフツ大学などの研究によると、飲食店のメニューにカロリーを表示し、消費者が低カロリーの食事を選べるようになると、肥満が減少し、心血管疾患や2型糖尿病のリスクも低下する。

 研究グループは、米国の35~80歳の成人を対象に実施した健康と栄養に関する調査データを用いて、予測モデルにもとづく研究を実施した。

 消費者が外食店でメニューの栄養表示をみて注文するようになり、生涯にわたり低カロリーの食事を選ぶようになると、心血管疾患は1万4,698人(うち死亡は1,575人)、2型糖尿病は2万1,522人、それぞれ減少するという。

 メニューのカロリー表示により、医療費は1兆1,000億円(104億ドル)、生産性の低下などの社会的損失も1兆3,000億円(127億ドル)、それぞれ削減できると推定している。

 米食品医薬品局(FDA)は2018年に、20店舗以上の外食チェーンを対象に、メニューなどへのカロリー表示を義務付けたが、現在は新型コロナが収束するまでの一時的な措置として、カロリー表示についての柔軟な対応を認めている。

 「肥満や糖尿病など健康問題は、40年以上にわたり増大していますが、現在はそれに新型コロナも加わっています。新型コロナにより、人々が健康的な食品を選択するようにするための戦略はますます重要になりました」と、タフツ大学栄養科学政策大学院のダリウシュ モザファリアン教授は述べている。

Calorie labelling on menus to be introduced in cafes, restaurants and takeaways(英国政府 2021年5月12日)
Calorie Labelling To Be Made Compulsory In Restaurants, Cafes And Takeaways(英国糖尿病学会 2021年5月13日)
Food Upfront - Campaigning For Clear Food Labelling(英国糖尿病学会)
Food Labels(国民保健サービス 2018年6月5日)
Nutrition labelling is improving nation's diet - new study(バース大学 2020年8月12日)
The response to nutritional labels: Evidence from a quasi-experiment(Journal of Health Economics 2020年7月)
Calorie data on menus could generate significant health, economic benefits(American Heart Association 2020年6月4日)
Health and Economic Impacts of the National Menu Calorie Labeling Law in the United States: A Microsimulation Study(Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes 2020年6月4日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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