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2022年06月13日

「大豆食品」が糖尿病リスクを減少 コレステロールや血糖が下がる


 豆腐・納豆・枝豆・みそ・しょうゆ・厚揚げ・がんもどき・おから・豆乳などの大豆食品は、日本食に欠かせない。

 大豆を食べている人は、コレステロールが減り、糖尿病のリスクが減少するという研究が発表されている。

 日本を含むアジアでも、大豆食品をよく食べている人は、糖尿病リスクが低いことが、多くの研究で確かめられている。

 納豆や豆腐、枝豆などの、植物性タンパク質が豊富に含まれる大豆食品を食べ、動物の肉を食べ過ぎない食事スタイルは健康につながりやすい。

大豆を食べている人はコレステロール値が低い

 日本には、豆腐・納豆・枝豆・みそ・しょうゆ・厚揚げ・がんもどき・おから・豆乳・蒸し大豆などの大豆食品が多い。日本食が世界的に人気の高い理由のひとつは、大豆食品をよく食べるからだ。

 カナダのトロント大学の研究によると、大豆タンパク質を多く摂っている人は、コレステロール値が低い。大豆は「グリセミック インデックス(GI)」も低く、血糖値も上げにくいという。

 研究チームは、46件のランダム化比較試験を解析した。大豆をよく食べている人は、総コレステロール値と悪玉のLDLコレステロール値の両方が低い傾向があることが示された。

 「大豆によるコレステロール値の減少率は5%未満と少ないものですが、他の植物性食品と組み合わせて食べると、より強い効果を期待できます」と、同大学栄養科学部のデイビッド ジェンキンス教授は言う。

大豆には植物性タンパク質が豊富に含まれる

 「大豆が糖尿病の予防に対して、直接的な効果があるというわけではありませんが、大豆には植物性タンパク質が豊富に含まれ、健康に有用なビタミンやミネラルも含まれています」と、ジェンキンス教授は言う。

 「大豆は、植物性タンパク質と食物繊維の優れた供給源になりえます。糖尿病の人には、タンパク質と食物繊維を十分に摂ることが勧められます」

 「大豆には、体に良いn-3系(オメガ3)脂肪酸も含まれます。サバやイワシなどの青魚に多く含まれるEPA・DHAなどもn-3系脂肪酸です。大豆には、鉄・マンガン・カリウム・マグネシウムといったミネラル、ビタミンも含まれます」。

 さらに、大豆にもイソフラボンも含まれていて、糖尿病の人にとって、血圧を下げるという大きな潜在的メリットも期待できるとしている。

大豆は低GIで血糖値を上げにくい

 「グリセミック インデックス(GI)」は、炭水化物がどれだけ血糖値を上げるかを示す尺度。糖質が多く食物繊維の少ない食品や飲料はGI値が高く、血糖値を上げやすいことが多い。たとえば、白米などの精製穀物は、玄米や麦ごはん、雑穀などの全粒穀物よりもGI値が高いことが知られている。

 大豆はGI値が低く、血糖値を上げにくい。植物性食品をベースとした食事にぜひ取り入れたい食品だとしている。

 日本でも、脂肪の多い動物肉の代わりに、大豆などを使用した代替肉が登場しており、大きな話題になっている。「私たちは植物ベースのタンパク質を選べる時代に移行しつつあります。植物ベースの食品を入手しやすくする支援も求められています」と、ジェンキンス教授は述べている。

動物性タンパク質の一部を植物性に置き換えると

 肉などの「動物性タンパク質」の一部を、大豆などの「植物性タンパク質」に置き換えることで、心血管疾患や2型糖尿病のリスクが減少するという研究も発表されている。

 米国国立がん研究所(NCI)によると、ふだんの食事に含まれる動物性タンパク質を少し、植物性タンパク質に置き換えるだけで、心血管疾患などによる死亡リスクが低下する可能性がある。

 研究グループは、米国で実施されているコホート研究に参加した、男性23万7,036人と女性17万9,068人のデータを解析した。

 その結果、動物性タンパク質の3%を植物性タンパク質で置き換えた人は、16年間の追跡期間で全死因による死亡リスクが10%減少し、心血管疾患の死亡リスクも、男性で11%、女性で12%、それぞれ減少していた。

 筋肉はタンパク質でできており、合成と分解が常に繰り返されているので、食事でタンパク質をしっかり摂ることが必要だ。動物性タンパク質はアミノ酸スコアが高く、良質なタンパク源になるが、食べ過ぎると、飽和脂肪酸やコレステロールが増えるおそれがある。

大豆食品を食べていると2型糖尿病のリスクが減少

 日本人を対象とした研究でも、豆腐など大豆食品を食べていると、2型糖尿病のリスクが減少することが示されている。

 「JACCスタディ」は、日本人の生活習慣ががんや2型糖尿病などの生活習慣病とどのように関連しているかを調べるために、1988年に約12万人が参加して開始されたコホート研究。

 大阪大学などの研究グループは、JACCスタディに参加した40~79歳の健康な日本人の男性と女性計2万1,925人を対象に、前向き研究を実施し、食事での大豆の摂取量と2型糖尿病のリスクとの関連を調べた。

 5年間の追跡期間中に、593人が2型糖尿病を発症したが、女性では、豆腐の摂取量が多いと、2型糖尿病の発症リスクが減少することが示された。この関連は、過体重や肥満の女性や、閉経後の女性の間でより強くなった。

 中国・上海の6万4,227人の女性を平均4.6年間して調査した研究でも、大豆を食べている人は、2型糖尿病のリスクが低いことが示されている。シンガポールの4万3,176人を対象とした調査でも、大豆食品をよく食べている人は、2型糖尿病のリスクが低下していた。

 「大豆食品は長い間、高品質のタンパク質と健康的な脂肪の供給源とみられてきました。日本を含むアジアで、肥満やそれに関連する代謝障害の頻度が低いのは、大豆の摂取量が多いことがアジアの食事スタイルで特徴的であることが貢献している可能性があります」と、研究者は述べている。

Heart-healthy effects of soy consistent over time, University of Toronto meta-study finds (トロント大学 2019年6月27日)
Soy product and isoflavone intakes are associated with a lower risk of type 2 diabetes in overweight Japanese women (Journal of Nutrition 2010年3月)
Higher Intake of Plant Protein Compared to Animal Protein Associated with Lower Mortality (米国立がん研究所 2020年7月13日)
Association Between Plant and Animal Protein Intake and Overall and Cause-Specific Mortality (JAMA Internal 2020年7月13日)
Soy Intake and Risk of Type 2 Diabetes Among Japanese Men and Women: JACC Study (Frontiers in Nutrition 2022年1月10日)
Legume and soy food intake and the incidence of type 2 diabetes in the Shanghai Women's Health Study (American Journal of Clinical Nutrition 2008年1月1日)
Soy intake and risk of type 2 diabetes mellitus in Chinese Singaporeans (European Journal of Nutrition 2011年11月18日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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