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2022年08月17日

「緑茶」が糖尿病とメタボのリスクを減少 血糖値を下げ腸の健康も改善 1ヵ月の摂取で効果

 緑茶を摂取することで、血糖値を下げられ、メタボリックシンドロームが改善するだけでなく、腸の健康も改善できるという研究を、米オハイオ州立大学が発表した。

 肥満やメタボのある人を対象とした研究で、緑茶の成分を4週間摂取すると、血糖値が低下し、メタボのリスクが減少し、腸の炎症も抑えられ、腸の健康を改善できることが示された。

緑茶のカテキンには強い抗酸化作用がある

 「2型糖尿病や肥満・メタボのある人は多くの場合、かかりつけの医師より、食事療法と運動療法で体重をコントロールすることを勧められます」と、オハイオ州立大学人間栄養学部のリチャード ブルーノ教授は言う。

 「しかし、さまざまな理由で、生活スタイルを改善するのは難しく、体重を減らすことができない人は多いのです。糖尿病や肥満・メタボを改善でき、無理なく生活に取り入れられる、より効果的な食事法が求められています」。

 緑茶に含まれるポリフェノールであるカテキンには、内臓脂肪や体脂肪を減らす効果や、コレステロールを減らしたり、活性酸素を除去する抗酸化作用があるという報告がある。

 「緑茶を摂取することで、血糖、コレステロールや、中性脂肪などの値が改善することを示した報告は多くあります。今回の研究では、緑茶の有効成分をより手軽に摂取できるようにし、さらには緑茶が腸の健康にもベネフィットをもたらすかを検証しました」と、ブルーノ教授は述べている。

カテキンなどの緑茶成分を28日間摂取

 メタボリックシンドローム(メタボ)は、心臓病や2型糖尿病などの健康上のリスクを高める5つの要因[内臓脂肪の蓄積・高血圧・低HDL(善玉)コレステロール・高血糖・高中性脂肪]のうち、3以上が重なっている状態。メタボは、米国人の3分の1に影響をもたらしているという。

 研究グループは、緑茶を摂取することで、メタボに関連する健康リスクを改善でき、さらには、腸の炎症を軽減できるかを調べた。

 研究グループは、40人の米国成人に参加してもらい、ランダム化二重盲検クロスオーバー比較試験を行った。21人は平均年齢が40歳で、体格指数(BMI)が35で肥満・メタボだった。また、19人は平均年齢が34歳で、BMIが22で健康だった。

 参加者に、抗酸化作用のあるカテキンなどの緑茶成分を含む食品を、28日間摂取してもらった。摂取したのは、1日に緑茶5杯分に相当する量で、890mgの緑茶カテキンが含まれていた。参加者に続く28日間は、緑茶成分を含まない食品を摂取してもらった。

 それに先立つ2019年には、マウスに緑茶成分を摂取させる実験を行っており、肥満の改善と健康リスクの減少、さらには腸の健康も改善する効果を得られることを確かめていた。

緑茶を摂ると空腹時血糖値が低下 腸の健康も改善

 その結果、緑茶の成分を摂取した参加者のすべてが、空腹時血糖値が低下したことが分かった。肥満・メタボの人だけでなく、対照群の健康な人も、血糖値が改善した。

 研究グループは、研究期間に参加者に、野菜・果物・お茶などの抗酸化物質が多く含まれる食品をあまり食べないようにアドバイスしており、この結果は緑茶の成分による効果であることが示された。

 さらには、参加者のすべてが、腸由来の炎症が減少し、糞便サンプル中の炎症誘発性タンパク質が減少したことが示された。

 腸には、栄養素を吸収するだけでなく、細菌などが体内へ入ることを防ぐために、腸管上皮細胞によりバリアする働きもある。「リーキーガット症候群(腸管漏出症候群)」は、このバリア機能が低下し、炎症を誘発する有害な未消化物や老廃物、腸内細菌などが漏れだし、軽度の慢性炎症が引き起こされた状態。

 緑茶を摂取すると、小腸の透過性が減少し、リーキーガット症候群が改善することが示唆された。

腸由来の炎症は肥満やインスリン抵抗性などのリスクを高める

 なお、リーキーガット症候群の原因となるのは、ジャンクフードの食べ過ぎなどの不健康な食事、過度の飲酒、慢性的なストレス、2型糖尿病、炎症性腸疾患などさまざまだという。

 食べ過ぎなどで腸内環境が乱れて、腸内で善玉菌の働きが鈍くなり、悪玉菌を抑えられなくなり、腸壁の粘膜がダメージを受けやすくなることも、腸の健康を低下する原因と考えられている。

 「緑茶成分を摂取することで、メタボリックシンドロームのある人だけでなく、健康な人でも血糖値が低下し、腸由来の炎症と透過性を減少できたのは、予想外の発見でした」と、ブルーノ教授は言う。

 「緑茶を1ヵ月摂取することは、メタボのある人と健康な人の両方に健康効果をもたらしました。血糖値の低下には、リーキーガット症候群と腸の炎症の改善が影響している可能性があります」としている。

メタボを改善するために生活スタイル全般を見直す必要が

 「内臓脂肪の蓄積などによって引き起こされるメタボリックシンドロームは、病気と診断されるほどではなく、薬物療法が必要とならないにしても、健康リスクは大きい状態です」と、ブルーノ教授は指摘する。

 「腸由来の炎症は、肥満やインスリン抵抗性などの、心臓疾患のリスクを高める代謝障害とも関連があると考えられます。腸の健康を改善し、リーキーガット症候群を減らすことは、こうした代謝障害の原因になる軽度の炎症を軽減することにつながる可能性があります」としている。

 ただし、研究は1ヵ月という短い限られた期間のみ行われたもので、そうした短い期間のみでメタボを治療できるとは考えない方が良いという。

 「メタボリックシンドロームの背後には、食事や運動不足、ストレスなど、不健康な生活スタイルが原因としてあります。メタボを改善するために、ご自分の生活スタイルを見直す必要があります」としている。

 「そのうえで、緑茶を摂取することで、メタボに関連する健康リスクを改善し、さらには、腸の炎症を軽減でき、少なくとも部分的に腸の健康を改善できる可能性を示せたのは、大きな励みになります。緑茶は、日本や中国などでもっとも良く飲まれていて、安価であり、米国でも入手しやすくなってきました」。

 「メタボを予防・改善し、健康な状態に逆転させる助けになる食生活の解明が求められています」と、ブルーノ教授は述べている。

Green tea extract promotes gut health, lowers blood sugar (オハイオ州立大学 2022年7月26日)
Catechin-Rich Green Tea Extract Reduced Intestinal Inflammation and Fasting Glucose in Metabolic Syndrome and Healthy Adults: A Randomized, Controlled, Crossover Trial (Current Developments in Nutrition 2022年6月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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