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2024年02月08日

植物性タンパク質を食べると糖尿病リスクが減少 大豆タンパクで健康的な老化を促進

 植物性のタンパク質を食べている人は、年齢を重ねても全体的に健康的であり、2型糖尿病・心臓病・がん・認知症などのリスクが低いことが、4万8,000人以上の中年女性を対象とした新しい研究で明らかになった。

 植物性タンパク質が豊富に含まれる大豆が食べることで、インスリン感受性が向上して糖尿病のリスクが低下し、心血管疾患のリスクが低下するという研究も報告されている。

植物性タンパク質を食べている人は糖尿病などのリスクが低い

 植物性食品からタンパク質を多くとっている人は、2型糖尿病・心臓病・がん・認知症などのリスクが低いことが、4万8,000人以上の中年女性を対象とした調査で明らかになった。

 植物性のタンパク質を食べている人は、年齢を重ねても、全体的に健康的である傾向があることが示された。研究は、米国のタフツ大学人間栄養研究センター(HNRCA)によるもの。

 タンパク質は、肉・卵・牛乳・乳製品などに多く含まれる「動物性タンパク質」と、豆類・大豆・全粒穀物・野菜・ナッツなどに含まれる「植物性タンパク質」に分けられる。

 「中年期に動物性タンパク質と植物性タンパク質をバランス良く食べていた人は、年齢を重ねても健康であることが示されました。動物性食品を食べすぎている人は多いので、植物性食品を増やすことが勧められます」と、同センターで食品・栄養・加齢学を研究しているアンドレス アルディソン コラート氏は言う。

植物性タンパク質を食べて健康的な老化を促進

 研究グループは、米国で実施されているコホート研究である「看護師健康調査(NHS)」に参加した4万8,762人を対象に、1984年~2016年に追跡して調査した。研究開始時の参加者の年齢は38歳~59歳だった。

 その結果、植物性タンパク質を多くとっている人は、年齢を重ねても健康的である可能性が46%高いのに対し、動物性タンパク質を食べすぎている人は、健康を維持している可能性が6%低いことが示された。

 「動物性タンパク質に偏った食事をしている人は、2型糖尿病や心臓病などの慢性疾患のリスクが高いことが示されました」と、アルディソン コラート氏は言う。

 一方、植物性タンパク質を多く食べている人は、悪玉のLDLコレステロールや血圧が低く、インスリン感受性が良好で、血糖値を下げるインスリンの効きが良い傾向がみられた。

 植物タンパク質を多く含む食事スタイルにより、食物繊維、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素、野菜などに含まれる色素などの成分で抗酸化作用が強いポリフェノールも摂取できるとしている。

 「中年期に食事を見直して、とくに植物性タンパク質を十分にとるようにすると、健康的な老化が促され、高齢になっても健康状態を良好に維持しやすくなると考えられます」としている。

大豆を食べると糖尿病リスクが低下 植物性タンパク質が豊富

大豆やイソフラボンが糖尿病や心臓病のリスクを減少

 豆腐・納豆・枝豆・厚揚げ・がんもどき・おから・豆乳・みそ・しょうゆなどの大豆食品は日本食に欠かせない。大豆には良質な植物性タンパク質が豊富に含まれている。

 大豆が食べることで、インスリン感受性が向上して糖尿病のリスクが低下し、心血管疾患のリスクが低下することが、米国のマサチューセッツ大学による別の研究で示されている。

 大豆には、タンパク質・炭水化物・脂質に加えて、食物繊維・ミネラル・ビタミン、さらには「大豆イソフラボン」と呼ばれる微量成分が含まれる。

 研究では、イソフラボンを豊富に含む大豆食品を食べると、糖尿病や心臓病などのリスクが減少することが明らかになった。大豆食品を食べると、コレステロールが下がり、血糖値が正常より高い状態になる耐糖能異常の改善を期待できるという。

 「大豆イソフラボンが、インスリン感受性を媒介する受容体を活性化し、グルコースの取り込みを改善し、糖尿病を改善する効果をもたらしている可能性があります」と、同大学で栄養学を研究しているヨンチョル キム氏は言う。

大豆食品をよく食べている日本人女性は糖尿病リスクが低い

 日本の国立国際医療研究センターなどによる大規模研究「JPHC研究」でも、大豆食品をよく食べている女性で、2型糖尿病のリスクが低下することが示されている。

 研究グループが、日本人6万人を対象に5年間追跡したところ、とくに2型糖尿病のリスクの高い肥満や閉経後女性で、糖尿病の発症が減ることが示された。大豆食品やイソフラボンがインスリン感受性(インスリンの効きやすさ)を改善している可能性が指摘されている。

 女性では、女性ホルモンであるエストロゲンが、糖の代謝や脂肪細胞の調節、脂質生成の阻害などの働きをしている。イソフラボンは女性ホルモンと構造が似ているため、弱いながら同様の作用があると考えられるとしている。

牛肉や豚肉の替わりに「大豆ミート」を利用

 カナダのトロント大学栄養科学部のデイビッド ジェンキンス教授は、「ビヨンド ミート」や「インポッシブル フーズ」といった米国の食品テクノロジー企業が、動物性の脂肪の多い牛肉や豚肉の代替として、大豆などの植物性食品を使用した「大豆ミート」を開発し、大きな話題になっていることを指摘している。

 「ビヨンド ミート」などは、大豆やエンドウ豆などを主原料として、「本物の肉と同じ味の食品」を目指して開発された。植物だけを使用しているが、焼くと肉汁が滴り、匂いも肉そのものだという。すでに米国の大手の外食チェーンは、牛肉や鶏肉の代わりに大豆を使ったメニューも取り入れているとしている。

Diets Rich in Plant Protein May Help Women Stay Healthy as They Age (タフツ大学 2024年1月17日)
Dietary protein intake in midlife in relation to healthy aging - results from the prospective Nurses' Health Study cohort (American Journal of Clinical Nutrition 2024年2月)
Nutrition researchers track down how soy reduces diabetes risk (マサチューセッツ大学 2009年10月1日)
Daidzein and the daidzein metabolite, equol, enhance adipocyte differentiation and PPARgamma transcriptional activity (Journal of Nutritional Biochemistry 2010年9月)
Soy Protein and Isoflavones Influence Adiposity and Development of Metabolic Syndrome in the Obese Male ZDF Rat (Annals of Nutrition and Metabolism 2007年3月14日)
Heart-healthy effects of soy consistent over time, University of Toronto meta-study finds (トロント大学 2019年6月27日)
Soy product and isoflavone intakes are associated with a lower risk of type 2 diabetes in overweight Japanese women (Journal of Nutrition 2010年3月)
Beyond Meat - The Future of Protein
大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A (内閣府食品安全委員会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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