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2024年03月07日

ワカメなどの「海藻」が糖尿病や肥満のリスクを低下 HbA1cが改善し内臓脂肪も減少 注目される「海の幸」

 ワカメ・コンブ・ヒジキ・モズク・メカブなどの海藻を食事に取り入れると、2型糖尿病やメタボ・肥満のリスクを減らすのに役立つという報告が発表されている。

 食事では、海藻やサラダなどの食物繊維を含む食品から食べはじめ、その後でごはんなどの糖質を含む食品をいっしょに食べる、「食べる順番」による食事法などが提案されている。

 味噌汁などに使われるワカメやアカモクなどに含まれる天然の色素成分に、2型糖尿病や肥満を改善する作用があることも分かってきた。

海藻が糖尿病や肥満のリスクを減少

 ワカメ・コンブ・ヒジキ・モズク・メカブなどの海藻は、食物繊維、カリウムなどのミネラル、タンパク質などが含まれ、低カロリーだ。海藻の摂取は、日本の⾷事バランスガイドなどでも推奨されている。

 海藻に含まれる食物繊維は、2型糖尿病やメタボ・肥満のリスクを減らすのに役立つと考えられている。その効果については、食物繊維が消化管からの糖の吸収を遅くしたり、食物中の脂質を吸着して吸収されにくくするといったことが考えられている。

 また、食物繊維が腸内細菌叢の組成や代謝物を変化させることで、腸内環境を改善し、腸管内の炎症を抑えるのにつながることも分かってきた。

ワカメなどの海藻を糖尿病の人の食事に活用

 海藻のなかでもワカメは、日本食に欠かせない食材だ。日本人は古くからワカメを食べてきた。海藻は日本では馴染み深い食品だが、欧米ではあまり食べられていない。食文化は多様化しており、海藻の健康効果は世界から注目されている。

 ワカメなどを食べることで、⾷後の⾎糖値や脂質の上昇が抑えられるという研究も発表されている。海藻をよく食べる人では、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患の発症リスクが低いことは、日本人を対象とした大規模な調査でも示されている。

 乾燥カットワカメであれば、保存が効き、水戻しをすればいつでも食べられるので、利便性が高い。ふだんの食事にワカメを使った料理を一品加えることは、すぐに取り組める食事法になる。

海藻をよく食べる人は、虚血性心疾患の発症リスクが低いことが、日本人8万6,113人を20年間追跡した大規模な調査で明らかに

出典:国立がん研究センター、2019年

「食べる順番」も食後の血糖上昇に影響

 近年、「食べる順番」によっても、食後の血糖上昇を抑えられることが注目されている。

 食事をはじめてから、5分間くらいは、サラダや海藻などの食物繊維を含む食品、魚料理などのタンパク質や脂質を含む食品を食べ、その後でごはんなどの糖質を含む食品をいっしょに食べる食事法などが提案されている。

 食物繊維を豊富に含む野菜や海藻を先に食べることで、食後の血糖上昇を抑えられ、体重も減少できることが報告されている。1~2ヵ月の血糖値の平均が反映されるHbA1cが改善するという研究も発表されている。

 糖質の多い食品を食べる前に、食物繊維やタンパク質、脂質を含む食品を食べることで、GLP-1とよばれる消化管ホルモンの分泌が促され、胃の動きをゆるやかにすることで、食後高血糖を改善できると考えられている。

海藻成分の「フコキサンチン」などが注目 糖尿病や肥満を改善

 北海道函館地域産業振興財団や北海道大学などが参加している「海藻活用研究会」は、函館で産学官が連携し、海藻の機能性の研究や有効活用、産業化をはかる活動をしており、2月にはシンポジウムも開催した。

 海藻に含まれる成分として、「フコキサンチン」や「フコイダン」などが注目されている。

 このうち、味噌汁などに使われるワカメやアカモクなどに含まれるフコキサンチンは、光合成に必要な天然の色素成分で、優れた抗酸化作用があり、2型糖尿病や肥満を改善する作用があると期待されている。

 北海道大学などが実施した60人が参加したヒト試験では、1日に2mgのフコキサンチンを8週間とったグループでは、1~2ヵ月の血糖値の平均をあらわすHbA1cが下がった。

 151人の肥満女性を対象に行われた別の試験では、1日に2.4mgのフコキサンチンの摂取を16週間続けることで、体重やウエスト周囲径が減り、体脂肪や肝臓の脂肪の増加も抑えられていることが示された。

 「肥満に対策するために、栄養バランスの良い食事を続け、運動を習慣として行うことが勧められますが、海藻に含まれるフコキサンチンを摂取することも役立つ可能性があります」と、北海道大学水産科学研究院の宮下和夫教授が米国化学会(ACS)の学術集会で発表している。

 「ただし、海藻に含まれるフコキサンチンは吸収されにくいので、体重減少の効果を引き出すには、大量の海藻を毎日食べる必要があります。フコキサンチンを活性化して、錠剤などにして摂取する方法を開発することを考えています」としている。

Effects of Undaria pinnatifida (Wakame) on postprandial glycemia and insulin levels in humans: a randomized crossover trial (Plant Foods for Human Nutrition 2019年8月15日)
ヒトにおけるわかめ摂取が食後脂質代謝に与える影響 (⽇本栄養・⾷糧学会誌 2019年72巻6号)
Seaweed intake and risk of cardiovascular disease: the Japan Public Health Center-based Prospective (JPHC) Study (American Journal of Clinical Nutrition 2019年9月13日)
Dietary instructions focusing on meal-sequence and nutritional balance for prediabetes subjects: An exploratory, cluster-randomized, prospective, open-label, clinical trial (Journal of Diabetes and Its Complications 2019年10月19日)
A simple meal plan of 'eating vegetables before carbohydrate' was more effective for achieving glycemic control than an exchange-based meal plan in Japanese patients with type 2 diabetes (Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition h 2011年3月9日)

海藻活用研究会
フコキサンチンの体内動態 (農業・食品産業技術総合研究機構)
Reduction of HbA1c levels by fucoxanthin-enriched akamoku oil possibly involves the thrifty allele of uncoupling protein 1 (UCP1): a randomised controlled trial in normal-weight and obese Japanese adults (Journal of Nutritional Science 2017年2月14日)
The effects of Xanthigen in the weight management of obese premenopausal women with non-alcoholic fatty liver disease and normal liver fat (Diabetes, Obesity and Metabolism 2009年12月22日)
Brown Seaweed Contains Promising Fat Fighter, Weight Reducer (米国化学会 2006年9月11日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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