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2024年12月23日

運動が糖尿病や肥満の人の脳を活性化 ウォーキングなどの運動が脳のインスリンの働きを改善

 ウォーキングなどの運動に取り組むことで、体重や内臓脂肪が減り、脳でのインスリンの働きも改善することが明らかになった。

 座ったまま過ごす時間を減らし、なるべく体を動かすようにし、睡眠を十分にとることが、脳の活性化につながることも分かった。

 運動は、仕事や家事、学業などの合い間の、ちょっとした時間にも行うことができる。計画的な運動でなければならない必要はないとしている。

ウォーキングなどの運動が脳でのインスリンの働きを改善

 ウォーキングなどの運動に取り組むことで、体重や内臓脂肪が減り、脳でのインスリンの働きも改善することが明らかになった。

 運動は、代謝を改善し、健康全般に良いだけでなく、脳の機能も改善することが明らかになっている。今回の研究で、とくに2型糖尿病や肥満のリスクのある人にとって、運動の効果は高いことが示された。

 肥満や過体重のある人では、血糖値を下げるインスリンの働きが悪くなるインスリン抵抗性が起こりやすい。インスリン抵抗性は脳にも起こり、認知力の低下や認知症の発症のリスクを高めるとみられている。

 研究は、ドイツのテュービンゲン大学やドイツ糖尿病研究センターなどによるもの。研究グループは、過体重や肥満があり、1日に座ったまま過ごす時間の多い、運動不足の21〜59歳の21人の参加者に、ウォーキングなどの有酸素トレーニングに8週間取り組んでもらう実験を行った。

 運動プログラムに参加することで、参加者の脳のインスリン感受性がどのように変化するかを、機能的MRI(磁気共鳴画像)とインスリンの鼻腔内投与を組み合わせて調べた。

運動は糖尿病のリスクを減らし脳の機能も改善する

 その結果、運動に取り組むことで、体重や内臓脂肪が減り、脳のインスリン感受性が改善することが明らかになった。

 脳のインスリンの働きが改善した人は、骨格筋の細胞のミトコンドリアのエネルギー代謝が良くなり、空腹感が減り、認知機能も改善していた。

 ミトコンドリアは、細胞内にある小器官で、エネルギー生成などの役割を担っており、「細胞のエネルギー工場」とも呼ばれている。

 「今回の研究により、運動不足の人が8週間の運動に取り組むと、脳のインスリンの作用を回復できることを実証しました」と、同大学で代謝神経イメージングを研究しているステファニー クルマン教授は言う。

 「脳のインスリン反応性の改善は、より健康的な体脂肪の分布と、空腹感の減少につながることも示されました。運動に取り組み、体重を減らすのに成功した人だけでなく、わずかな体重減少しか得られなかった人でも、脳機能は改善していました」としている。

 運動を習慣として行うことで、脳のインスリン抵抗性を減らすことは、糖尿病のリスクを低下するだけでなく、脳の機能の改善にもつながるとしている。

運動による脳の活性化は24時間続く

 糖尿病のリスクのある人が、血糖値が高い状態が続くと、脳の健康も損なわれやすくなる。

 とくに中年期に糖尿病と診断された人は、糖尿病を適切に管理できていないと、20年後に記憶力や認知能力の深刻な問題を抱える可能性が高くなるという報告もある。

 しかし運動に取り組むことで、脳が活性化し、その効果は24時間持続することが、英国のユニバーシティ カレッジ ロンドンの別の新しい研究で明らかになった。

 座ったまま過ごす時間を減らし、なるべく体を動かすようにし、睡眠を十分にとることが、脳の活性化につながることも分かった。

 「運動の短期記憶への効果は、これまで考えられていたよりも長く続き、翌日まで続く可能性があることが示されました」と、同大学疫学・健康研究所のミカエラ ブルームバーグ氏は言う。

運動に取り組むことで睡眠も改善

 研究グループは、50~83歳の男女76人を対象に、活動量計を8日間装着してもらい、認知テストを毎日受けてもらう実験を行った。

 その結果、ウォーキングなどの中強度から高強度の運動や身体活動を行った人は、翌日の記憶力テストの成績が良く、作業記憶やエピソード記憶が良好である傾向が示された。運動に取り組むと、睡眠が改善しやすいことも分かった。

 運動は、脳への血流を増やし、さまざまな認知機能を助けるノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質の分泌を刺激するとみられている。

 「健康改善のために勧められる運動は、心拍数を上げる、中強度から高強度の活発な運動です」と、ブルームバーグ氏は言う。

 「速歩きでのウォーキング、階段上り、体操、ジョギング、自転車こぎ、エアロビクス、水中運動、テニスなどの球技、ダンスなど、すべての運動は効果を期待できます。息がはずみ、ややきついと感じるくらいの運動が勧められます」。

 こうした運動は、仕事や家事、学業などの合い間の、ちょっとした時間にも行うことができる。計画的な運動でなければならない必要はないとしている。

 「運動に取り組むことで、睡眠を改善でき、とくに深い睡眠が増えることが、記憶力の向上に寄与している可能性もあります」と、ブルームバーグ氏は指摘している。

Blue light at night increases the consumption of sweets in rats (摂食行動学会 2019年7月9日)
Exercise restores brain insulin sensitivity in sedentary adults who are overweight and obese (JCI Insight 2022年9月22日)
Short-term cognitive boost from exercise may last for 24 hours (ユニバーシティ カレッジ ロンドン 2024年12月10日)
Associations of accelerometer-measured sedentary behavior and physical activity with sleep in older adults (Journal of the Formosan Medical Association 2024年12月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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