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2024年05月27日

今年も猛暑に 「良い睡眠」で対策 睡眠不足は糖尿病を悪化 暑い夏の夜でもぐっすり眠る3つの方法

 気候変動にともなう気温の上昇は、多くの人の健康に影響している。気温上昇は多くの人の睡眠にも悪影響をもたらしていることが明らかになった。

 十分な睡眠をとれていない人は、2型糖尿病のリスクが高いことも分かった。睡眠不足が慢性化すると、食事を健康的にするだけでは糖尿病リスクを下げられないという。

 睡眠を改善するために3つの方法が提案されている。「簡単な工夫をすることで、睡眠の悩みをもつ人を助けられる可能性があります。睡眠を妨げる習慣をやめることも大切です」と、研究者は指摘している。

気温上昇は睡眠にも悪影響をもたらしている

 気候変動の影響により、各地で高温の記録が大幅に更新されている。この先も高温傾向が続き、湿度も高くなり、蒸し暑さが増すと予想されている。

 気候変動にともなう気温の上昇は、多くの人の健康に影響している。デンマークのコペンハーゲン大学などの研究によると、気温上昇は睡眠にも悪影響をおよぼす。

 「平均気温の上昇は、人々の睡眠にも悪影響をあたえていることが分かりました。気温上昇により2099年までに、睡眠時間が1人あたり年間に50~58時間減少する可能性があります」と、同大学で気候災害などの研究をしているケルトン マイナー氏は言う。

 研究グループは、68ヵ国の4万7,000人以上の成人の睡眠記録700万件を含むデータベースを解析した。その結果、とくに夏に気温が30度以上の夜が続くと、睡眠時間は平均して14分強短くなるという。気温が上昇するにつれ、睡眠時間が7時間未満になる可能性も高まる。

 「睡眠を良好にとれていることが、健康や回復力、生産性を高めるために不可欠ですが、とくにエアコンが整備されていない家の多い途上国などで、気温上昇の影響は深刻です」としている。

十分な睡眠をとれていないと糖尿病リスクが上昇

 十分な睡眠をとれていない人は、2型糖尿病のリスクが高いことが、スウェーデンのウプサラ大学の調査で明らかになった。睡眠不足が慢性化すると、食事を健康的にするだけでは糖尿病リスクを下げられないという。

 「これまでの研究で、睡眠時間が短いと2型糖尿病のリスクは高まるものの、野菜を食べるなどの健康的な食事スタイルにより、リスクをある程度減らせることが示されています」と、同大学生物科学部で睡眠を研究しているクリスチャン ベネディクト氏は言う。

 「しかし、睡眠不足が慢性化すると、健康的な食事だけでは糖尿病のリスクを減らすことはできないことが分かりました」としている。

 研究グループは、英国の約50万人が参加している大規模なデータベースである「UKバイオバンク」に登録された、平均年齢が56歳の成人24万7,867人を対象に、10年以上追跡して調査した。

 その結果、睡眠時間が少ない人は糖尿病リスクが高く、とくに1日の睡眠時間が6時間未満の人は、7~8時間の人に比べて、2型糖尿病を発症するリスクが16%から41%上昇することが判明した。

 食事のスコアが高く、健康的な食事をしている人でも、睡眠時間が少ないと糖尿病リスクは高いままだった。

 「糖尿病のリスクを減らすために、食事スタイルを改善することは大切ですが、睡眠を見直すこともやはり必要です。ふだんから十分な睡眠をとることを心がけることが大切です」と、ベネディクト氏は指摘している。

睡眠を改善する方法 1
運動をする習慣があると睡眠が改善

 それでは、良い睡眠をとれるようにするために、どうすれば良いのだろうか? 睡眠の質を良くするために、ウォーキングなどの運動をする習慣が大切であることが、南オーストラリア大学による別の研究で明らかになった。

 研究グループは、平均年齢が12歳の小児1,168人と、平均年齢が44歳のその保護者1,360人を対象に調査を実施。その結果、中強度から高強度の運動をする習慣のある人は、睡眠障害が少なく、睡眠の質が良く、疲労が軽減されている傾向があることが分かった。

 「良い睡眠をとることが大切であることを、ほとんどの人は知っていますが、ぐっすり眠るのに苦労し、睡眠の悩みをもっている人は多くみられます」と、同大学で健康科学・看護学を研究しているリサ マトリチアーニ氏は言う。

 「大人も子供も、適度な運動を行うことを習慣にすると、睡眠の質が向上し、疲労感も減ることが分かりました」。

 「睡眠を直接妨げる習慣をやめることも大切です。朝起きたら朝日を浴びて体内時計を調整し、日中に起きているときはなるべく活動的に過ごし、夜遅くまでテレビやスマホを見るのは睡眠の質が低下する原因になるのでやめるなども必要です」としている。

睡眠を改善する方法 2
夜はジャンクフードを食べないようにする

 夜に高カロリーのジャンクフードを食べる習慣も、睡眠の質を低下させる原因になることが、スウェーデンのウプサラ大学による別の研究で示されている。

 「これまでの疫学研究でも、私たちが食べるものは、睡眠に影響することが分かっています。不健康な食生活と睡眠不足は、どちらも公衆衛生上のリスクを高めます」と、同大学で細胞生物学を研究しているジョナサン セデルナエス氏は言う。

 研究グループは、15人の標準体重の男性を対象に、研究室で睡眠を数日間とってもらう試験を行った。カロリーは同じだが、健康的な食事と不健康な食事をランダムな順番でとってもらい、睡眠への影響を調べた。

 その結果、参加者が不健康な食事をしたときは、健康的な食事をしたときに比べて、深い睡眠を示す徐波活動が少なくなることが分かった。

 「基本的に、夜に不健康な食品を食べると、睡眠が浅くなることが示されました。不健康なジャンクフードは、糖質と飽和脂肪酸が多く、食物繊維は少なく含まれ、高カロリーです。睡眠を改善するために、健康的な食事をとることも大切です」と、セデルナエス氏は指摘している。

睡眠を改善する方法 3
眠れないときにはリラックス行動を

 眠れないときには、無理に眠ろうと焦らないようにして、なるべく自分がリラックスできる行動をすると効果が高いという研究を、米国のインディアナ大学が発表した。

 眠れないときにイライラして時計ばかりを見ると、ますます眠れなくなるおそれがあるという。生活にちょっとした変化を加えることで、睡眠の質を向上できる可能性がある。

 「眠れない夜には、睡眠を十分にとれていないことを心配し、いま何時なのか、ふたたび眠りにつくまでにどのくらいの時間がかかるのか、また明日は何時に起きなければならないかといった考えで頭がいっぱいになりがちです」と、同大学心理・脳科学部のスペンサー ドーソン氏は言う。

 「しかしこうした行動は、眠りを促すためにはあまり役にたちません。かえってストレスになり、眠りにつくのがいっそう難しくなります」としている。

 研究グループは、同大学病院の睡眠クリニックで治療を受けた約5,000人の患者を対象に調査した。その結果、眠れないときに時計を頻繁に見るなど、フラストレーションがたまりやすい人ほど、睡眠薬の使用が増えるなどの傾向がみられた。

 「簡単な行動介入により、不眠に悩む人を助けられる可能性があります。時計や携帯電話、スマートフォンを手の届かない場所に置き、ベッドに入ったら時間のチェックをしないようにするといったことでも効果を期待できます」と、ドーソン氏はアドバイスをしている。

Climate change likely to reduce the amount of sleep that people get per year (Cell Press 2022年5月20日)
Getting Too Little Sleep Linked to High Blood Pressure (米国心臓病学会 2024年3月27日)
Rising temperatures erode human sleep globally (One Earth 2022年5月20日)
Too little sleep raises risk of type 2 diabetes, new study finds (ウプサラ大学 2024年3月6日)
Habitual Short Sleep Duration, Diet, and Development of Type 2 Diabetes in Adults (JAMA Network Open 2024年3月5日)
Healthy sleep needs a healthy day: boost exercise to beat your bedtime blues (南オーストラリア大学 2024年3月1日)
Time use and dimensions of healthy sleep: A cross-sectional study of Australian children and adults (Sleep Health 2024年1月9日)
Junk food may impair our deep sleep (ウプサラ大学 2023年5月30日)
Exposure to a more unhealthy diet impacts sleep microstructure during normal sleep and recovery sleep: A randomized trial (Obesity 2023年5月28日)
Losing sleep over losing sleep: How watching the clock impacts insomnia, use of sleep aids (インディアナ大学 2023年5月16日)
Use of Sleep Aids in Insomnia: The Role of Time Monitoring Behavior (CNS Disorders 2023年5月16日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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