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2024年05月24日

「糖尿病網膜症」は見逃しやすい 失明の原因に 手遅れになる前に発見し治療 国際糖尿病連合などが声明を発表

 糖尿病網膜症は、日本でも中高年の失明原因の2位になっている。原因になる病気を早期発見して治療すれば、進行を遅らせ、失明を防ぐことができる。

 国際糖尿病連合(IDF)などはこのほど、糖尿病のある人の眼を守るために、世界共通の政策声明を発表した。

 2020年には、世界で1億人超の成人が糖尿病網膜症を発症したと推定されている。予防と治療を促進し、発症リスクのある人の生活を改善することが求められている。

「糖尿病網膜症」は失明や視力低下の原因に
早期発見して治療すれば失明を防げる

 糖尿病網膜症は、血糖値が高いことにより、網膜の細い血管が障害され、視力低下などがあらわれる病気。網膜症が悪くなると、最悪の場合、眼底出血や網膜剥離をともない失明にいたる場合がある。

 日本でも糖尿病網膜症は、中高年の失明原因の2位になっている。原因になる病気を早期発見して治療すれば、進行を遅らせ、失明を防ぐことができる。

 糖尿病網膜症の治療では、血糖管理をしっかり行うことが重要となる。糖尿病の合併症を防ぐために、過去1~2ヵ月の血糖値の平均をあらわし、血糖管理の指標となっているHbA1cを7.0%未満に維持するのを目標にする。同時に、高血圧や脂質異常症などの管理などにも取り組む必要がある。

 網膜症を発症しても、早期に発見して適切な治療を行えば、大きな眼底出血などを防ぐことができる。しかし、視力低下などの自覚症状は、網膜症が重症になるまで出てこない場合がある。ものが見えにくい症状があらわれたら、相当悪化しているおそれがある。

 そのため、糖尿病とともに生きる人は、目の見え方などが正常と思っても、年に1回は眼科を受診して網膜症の検査を受けることが勧められている。網膜症を早くみつけて、治療を行うことで、視力低下や失明を防ぐことができると考えられている。

糖尿病網膜症の予防と治療を促進
糖尿病のある人の生活を改善

 国際糖尿病連合(IDF)と国際失明予防協会(IAPB)はこのほど、糖尿病のある人の眼を守るために、世界共通の政策声明を発表した。糖尿病網膜症の予防と治療を促進し、発症リスクのある人の生活を改善することを求めている。

 世界では、40歳以上の糖尿病の人の3人に1人以上が、糖尿病網膜症を発症している。網膜症の発見が遅れ、適切な治療を開始するのが遅れると、失明の危険性が高くなる。失明は生活の質を大きく低下させ、働き続けるのが難しくなり、社会の生産性も大きく低下するとしている。

 マレーシアで暮らす糖尿病患者であるシャムスル バーリ オスマン氏は次のように語っている。

 私は43歳のときに2型糖尿病と診断され、その4年後に糖尿病網膜症と診断されました。それまで網膜症について聞いたことがなく、自分が発症リスクが高いことも理解できていませんでした。糖尿病網膜症について、インターネットで検索して知りました。

 最初は網膜症の症状は何もなかったのですが、ある朝、目が覚めると、左目の視力が急に失われ、右目はぼやけて見えました。トイレに行くことすらできませんでした。眼科を受診すると、眼底出血が起き、黄斑浮腫ができていることを告げられました。

 まさか自分にそんな病気が起こるとは思っていませんでした。子供たちを学校に連れて行くことができなくなり、整備士として仕事を続けるのも難しくなりました。心理的にも大変なストレスになりました。

 さいわいレーザー治療で網膜出血を防ぎ、硝子体内注射による治療を受け、失明は防ぐことができましたが、糖尿病網膜症について、もっと早く知っておけば良かったと後悔しています。

 家族や友人たちにはとても感謝しています。政府は、2型糖尿病と糖尿病網膜症の予防と治療について、もっと情報を拡散してほしいと思います。とくに合併症を抱えている人のために、病気とその管理方法を理解するための心理的サポートを提供することも必要です。

* レーザー光凝固術は、網膜にレーザーを照射して、新生血管の発生を防ぐ治療法。網膜症の進行を阻止することができる。また、糖尿病網膜症などの網膜の疾患により、黄斑(網膜の中心部分)に浮腫(むくみ)が生じると、ゆがみや中心暗点、視力低下などがあらわれる。抗VEGF薬の硝子体内への注射は、浮腫を改善し、病気の進行を抑制する。

世界で1億人超が糖尿病網膜症を発症
検査を定期的に受けることが大切

 IDFとIAPBは声明で、糖尿病網膜症を予防・改善するために、多分野にわたる協力が必要で、世界的に行動し対策することが必要と呼びかけている。

  • 糖尿病網膜症による視力低下を防ぐために、医療の効果的な介入が必要。
  • 糖尿病網膜症を予防・改善するために、血糖管理や血圧管理などをよりいっそう改善することが求められている。
  • 糖尿病患者の網膜症の発症を遅らせ、適切な治療を行うために、年1回、少なくとも2年ごとのスクリーニング検査を実施する。

 「糖尿病網膜症は、治療だけでなく、予防に力を入れることが、はるかに安全で確実です。2020年には、世界で1億300万人の成人が糖尿病網膜症を発症したと推定されています」と、網膜症の専門家であるブラジルのサンパウロ大学のフェルナンド マレルビ氏は言う。

 「世界の4,700万人以上が視力低下や失明のリスクがあり、適切な治療を必要としています。糖尿病網膜症を早期発見し、適切な治療を行えば、失明の95%を防ぐことができると考えられています。検査を受けることで、迅速な治療を必要とする視力を脅かす病気の兆候を特定することができます」。

 「糖尿病網膜症を発症すると、医療費は大幅に増加し、重症化すると医療費はさらに高くなります。医療経済への深刻な影響を軽減するに、合併症の発症を予防し、進行を防ぐ戦略を実施することが重要です」。

 「しかし、高所得国と低所得国では、医療の支出に著しい差があります。世界で広がる医療格差を是正することは、社会の安定をもたらし、環境改善にも寄与します」としている。

糖尿病網膜症 (日本眼科学会)

IDF and IAPB release joint policy brief for the early diagnosis, treatment and prevention of diabetic retinopathy (国際糖尿病連合 2024年3月26日)
Diabetic Retinopathy: A Call for Global Action (国際糖尿病連合 国際失明予防協会 2024年3月)
Diabetes-related eye complications: knowing what to look for (国際糖尿病連合 2023年10月12日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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