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2024年07月17日

サプリメントは効果がある? マルチビタミンのサプリは賛否両論が 糖尿病の人にはビタミンDを推奨

 マルチビタミンのサプリメントを利用しても、死亡リスクを低下させる効果はみられないことが、米国の約40万人の成人を20年以上にわたり追跡した調査で示された。

 一方で、マルチビタミンのサプリを飲むことで、高齢者の認知機能の老化を遅らせる結果が示されたという、別の調査結果も発表された。

 またビタミンDは、カルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にする重要な栄養素だ。高齢者・小児・妊婦、さらには2型糖尿病のリスクの高い人に対しては、適切な量のビタミンDを摂取することが推奨されている。

マルチビタミン神話は間違い? 大規模調査を実施

 マルチビタミンのサプリメントは、不足しがちな栄養素を手軽に摂取できるので、とくに外食や加工食品の利用の多い人などに人気が高い。

 しかし、マルチビタミンのサプリを利用しても、死亡リスクを低下させる効果はみられないことが、米国の約40万人の成人を20年以上にわたり追跡した調査で示された。

 発表は、米国国立衛生研究所(NIH)の研究機関である米国国立がん研究所(NCI)によるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」に発表された。

 多くの成人が、健康増進の効果を期待して、マルチビタミンのサプリを利用している。しかし、そうしたサプリの効果について、これまで多くの研究でさまざまな結果が示されている。サプリは効果があるというものと、効果はないというものの両方がある。

 そこで研究グループは、マルチビタミンのサプリの長期にわたる摂取と、心血管疾患およびがんによる死亡リスクとの関係について、計39万124人の米国成人を20年以上追跡した、3つの大規模な前向き研究のデータにより解析した。

 その結果、マルチビタミンを毎日飲んでいる人は、飲んでいない人に比べて、あらゆる原因による死亡率は低くならず、さらには、がん・心臓病・脳血管疾患による死亡率にも差はなかった。

 「サプリメントについては、明らかに栄養が不足していたり偏っている人や、生活習慣病のリスクの高い人など、さまざまな集団での死亡リスクや、老化にともない増える高血圧や糖尿病などの疾患との関連を、長期間にわたり評価する必要があります」と、研究者は指摘している。

糖尿病リスクのある人にはビタミンDを推奨

 なお、米国予防医学専門委員会の予防医学タスクフォース(USPSTF)も、心血管疾患(CVD)やがんを予防するために、β-カロテンやビタミンEなどのサプリメントを使用することを推奨していない。マルチビタミンについても、現時点では根拠は十分ではないと結論している。

 ただし、栄養サプリメントには抗炎症作用と抗酸化作用がある可能性があり、炎症と酸化ストレスはCVDとがんの両方に関連しているため、サプリメントにより不足している栄養を補うことのメリットは否定していない。

 またビタミンDは、カルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にする重要な栄養素だ。ビタミンDは、免疫機能を調整したり、がんや心筋梗塞、2型糖尿病などのリスクを低減する効果も報告されている。ビタミンDが不足している人は多い。

 ビタミンDのサプリメントについては、米国内分泌学会がガイドラインを発表し、「75歳未満の健康な成人は、1日のビタミンDの推奨量を超えて摂取しても、メリットを得られない可能性が高い」としている。

 ただし、75歳以上の高齢者や、小児や妊婦、さらには2型糖尿病のリスクの高い人に対しては、十分な量のビタミンDを摂取することを推奨している。

 さらには、医師などがビタミンDを補給するのが適切と判断した50歳以上の成人には、低用量のビタミンDのサプリを摂取することを勧めている。

 米国健康・栄養調査(NHANES)によると、米国の成人の52%が1つ以上のサプリメントを利用したことがあり、31%はマルチビタミンやミネラルのサプリを利用したことがあるという。

マルチビタミンのサプリは「効果がある」という研究も発表
認知能力の老化を遅らせる可能性が

 一方で、「マルチビタミンのサプリメントは効果がある」という研究も発表された。研究成果は、米国臨床栄養学会の学術誌である「American Journal of Clinical Nutrition」に発表された。

 研究は、米マサチューセッツ総合病院(MGH)などによるもので、ハーバード大学の関連機関であるブリガム アンド ウィメンズ病院が主導する、60歳以上の米国成人2万人超を対象とした、サプリメントの効果を調べる研究であるCOSMOS試験の参加者を対象としたもの。

 研究グループが、試験に参加した573人の高齢者を対象に、認知機能の全般について調べる検査を2年間にわたり行った結果、マルチビタミンのサプリを飲んでいる高齢者は、飲んでいない高齢者に比べ、実行機能や注意力については変化がみられなかったものの、エピソード記憶については効果があったことが示された。

 研究グループはさらに、COSMOS試験の参加者を対象とした、3つの個別の研究にもとづくメタ分析も実施した。対象となった高齢者は573人、2158人、2472人だった。

 その結果、2~3年のマルチビタミンのサプリの利用により、全体的な認知機能とエピソード記憶の両方に効果があったことが示された。マルチビタミンを毎日摂取した高齢者は、プラセボ群に比べて、全体的な認知機能の老化が2年ほど遅くなったと推定している。

 「認知機能の低下は、ほとんどの高齢者にとって、健康上の最大の懸念事項のひとつです。さらに研究が必要ですが、マルチビタミンのサプリを毎日飲むことは、認知機能の老化を遅らせる魅力的で手軽なアプローチとなる可能性があります」と、同病院精神科のチラグ ビアス氏は述べている。

For healthy adults, taking multivitamins daily is not associated with a lower risk of death (米国国立衛生研究所 2024年6月26日)
Multivitamin Use and Mortality Risk in 3 Prospective US Cohorts (JAMA Network Open 2024年6月26日)
USPSTF statement on use of vitamin, mineral, multivitamin supplements to prevent cardiovascular disease, cancer (米国医師会雑誌 2022年6月21日)
Vitamin, Mineral, and Multivitamin Supplementation to Prevent Cardiovascular Disease and Cancer: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement (米国医師会雑誌 2022年6月21日)
Endocrine Society Guideline recommends healthy adults under the age of 75 take the recommended daily allowance of vitamin D (米国内分泌学会 2024年6月3日)
Vitamin D for the Prevention of Disease: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline (Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2024年6月3日)
Third Major Study Finds Evidence that Daily Multivitamin Supplements Improve Memory and Slow Cognitive Aging in Older Adults (マサチューセッツ総合病院 2024年1月18日)
Effect of multivitamin-mineral supplementation versus placebo on cognitive function: results from the clinic subcohort of the COcoa Supplement and Multivitamin Outcomes Study (COSMOS) randomized clinical trial and meta-analysis of 3 cognitive studies within COSMOS (American Journal of Clinical Nutrition 2024年3月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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