ニュース

2024年12月12日

糖尿病があると脳の活動が低下しやすい? 脳の老化は健康的なライフスタイルにより防げる

 血糖値が高い状態が続くと、脳の健康が損なわれるおそれがあることが明らかになった。

 とくに中年期に糖尿病と診断された人は、血糖値が正常な人に比べ、20年後に記憶力や認知能力に深刻な問題を抱える可能性が高いという。

 一方、糖尿病を良好に管理できている人は、認知機能の低下は小さいことも示された。

 「認知機能の低下を抑え、認知症のリスクを軽減する方法はたくさんあります。糖尿病の予防と管理をより良く行えば、認知症を防ぐことができます」と、研究者は述べている。

血糖値が高いと脳の健康も損なわれる

 血糖値が高い状態が続くと、脳の健康が損なわれるおそれがあることが、カナダのベイクレスト高齢者医療センターの新しい研究で明らかになった。

 血糖値の上昇は、脳の神経ネットワークの接続の低下と関連しているという。これらのネットワークは、記憶・注意・感情の調節など、認知機能で重要な役割を果たしている。

 血糖値の上昇は、心拍変動(心拍ごとの拍動の変化)の低下と関連することも分かった。これまでも、心拍変動が高いほど脳の健康状態は良好であることが示されている。

 「健康的な食事と運動を習慣として行うことにより、血糖値を良好に管理することは、体だけでなく脳にとっても大切です」と、同センターおよびトロント大学生物医学部のジーン チェン教授は言う。

 研究グループは、18歳以上の成人146人を対象に、血糖値、磁気共鳴画像(MRI)による脳スキャン、心電図(ECG)による心拍変動などについて調べた。

中年期に糖尿病になると20年後に認知能力が低下?

 中年期に糖尿病と診断された人は、血糖値が正常な人に比べ、20年後に記憶力や認知能力に深刻な問題を抱える可能性が高いことが、米国のジョンズ ホプキンス大学の研究でも明らかになっている。

 糖尿病を良好に管理できていない人は、認知機能の低下が予想よりも19%高いことが分かった。糖尿病の管理が良好でないと、脳の老化が5年早まるおそれがあるという。

 糖尿病のある60歳の人は、記憶力、単語の連想、実行機能などの認知機能が、65歳の人と同じくらい低下していた。

 一方、糖尿病を良好に管理できている人では、認知機能の低下は小さかった。

 研究グループは、メリーランド州、ノースカロライナ州、ミネソタ州、ミシシッピ州に住む1万5,792人の中年成人を、1987~1989年から1996~1998年まで追跡して調査した「コミュニティでの動脈硬化リスク研究(ARIC)」のデータを解析した。

 「糖尿病の人や糖尿病予備群の人は、血糖管理を良好に維持できていないと、脳の認知機能が大幅に低下するおそれがあります」と、同大学公衆衛生大学院のエリザベス セルビン氏は言う。

 「しかし、糖尿病の予防と管理をより良く行えば、多くの人は認知症の進行を防ぐことができます」。

 「50歳の頃から食事や運動などのライフスタイルを見直し、健康的な生活をすることで、70歳になっても脳を健康に保てるようになります」としている。

健康的なライフスタイルにより糖尿病にともなう脳の老化を防げる

 2型糖尿病や糖尿病予備群の人は、脳の老化が加速しやすいが、健康的なライフスタイルによって、それを抑えられることが、スウェーデンのカロリンスカ研究所の大規模な研究でも示された。

 2型糖尿病の人は、実際の脳年齢が実年齢よりも2.3歳老けており、とくに糖尿病を良好に管理できていない人は、4歳以上も老けていることが分かった。糖尿病予備群も、脳年齢は0.5歳老けていた。

 「糖尿病のある人の脳が、実年齢に比べて老化してみえることは、老化プロセスに異常があるということで、認知症の初期サインとなる可能性があります」と、同研究所のケア・社会科学部のアビゲイル ダブ氏は言う。

 研究グループは、大規模研究であるUKバイオバンクに参加した40~70歳の3万1,229人の成人を対象に、磁気共鳴画像(MRI)による脳スキャンなどを実施。機械学習の手法を用いて、認知能力や年齢から脳年齢を推定した。

認知機能の低下を抑え認知症リスクを減らす方法

 「認知機能の低下を抑え、認知症のリスクを軽減する方法はたくさんあります」と、ジョンズ ホプキンス大学公衆衛生大学院のリッチー シャレット氏は言う。

 「糖尿病や高血圧のある人は、食事・運動・薬物療法などにより、それを良好に管理することが大切です。食事を改善し、運動量を増やし、タバコを吸う人は禁煙することが望まれます」。

 2型糖尿病の大きな予測因子は肥満や過体重なので、健康的な体重を維持することも重要だ。米国では成人の3分の1以上がBMI(体格指数)が30以上の肥満だ。

 「糖尿病のある人やそのリスクのある人の認知障害のリスクが、中年期にはすでにはじまっていることを知ることは、若いときから健康習慣を取り入れ、長期的に維持するための、強い動機付けになります」としている。

Baycrest study finds high blood sugar in healthy adults linked to lower brain activity (ベイクレスト高齢者医療センター 2024年12月3日)
The associations among glycemic control, heart variability, and autonomic brain function in healthy individuals: Age- and sex-related differences (Neurobiology of Aging 2024年10月)
Diabetes in Midlife Linked to Significant Cognitive Decline 20 Years Later (ジョンズ ホプキンス大学公衆衛生大学院 2014年11月24日)
Diabetes in Midlife and Cognitive Change Over 20 Years: A Cohort Study (Annals of Internal Medicine 2014年12月2日)
A healthy lifestyle may counteract diabetes-associated brain ageing (カロリンスカ研究所 2024年8月28日)
Diabetes, Prediabetes, and Brain Aging: The Role of Healthy Lifestyle (Diabetes Care 2024年8月28日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲