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2022年07月15日

【新型コロナ】糖尿病の人は血糖管理が良好だとワクチンの効果を高められる コロナ対策でも血糖コントロールが大切

 糖尿病の人が新型コロナの3回目接種を受けるとき、血糖コンロールが良好であると、その有効性は高まるという研究が発表された。

 「新型コロナワクチンの接種は、重症化リスクを軽減するためのもっとも強力なツールになりますが、糖尿病患者さんがワクチンの有効性を高めるために、良好な血糖コントロールを維持することが必要です」と、研究者は述べている。

コロナ対策でも血糖コントロールが大切

 糖尿病の人が新型コロナの3回目接種を受けるとき、血糖コンロールが良好であると、その有効性は高まるという研究が発表された。

 1型糖尿病と2型糖尿病は、新型コロナを重症化させる危険因子であることが知られており、各国で糖尿病の人の新型コロナによるリスクを軽減する政策が優先して行われている。

 「新型コロナワクチンの接種は、重症化リスクを軽減するためのもっとも強力なツールになりますが、糖尿病患者さんがワクチンの有効性を高めるために、良好な血糖コントロールを維持することも必要です」と、イタリアのサピエンツァ ローマ大学糖尿病医学部のラファエラ ブゼッティ氏は述べている。

 「糖尿病の人はふだんから血糖値が高くならないように治療をすることが、新型コロナ対策の観点からも重要となります」と強調している。

血糖コントロールが良好だとワクチン効果の低下は最小限に

 研究は、イタリアのサピエンツァ ローマ大学による系統的レビューで、糖尿病のある高齢者は、糖尿病のない同じ年齢層の高齢者に比べ、ワクチン接種により得られる抗体応答が低い傾向があることが示された。

 しかし、血糖コントロールが良好であると、ワクチン効果の減少は最小限に抑えられるという。逆に、血糖コントロールが不十分で、高血糖が持続していると、ワクチン接種を受けても、新型コロナ感染に対する予後が悪化しやすい可能性がある。

 374人の医療従事者を対象とした、ワクチン接種後の免疫応答を評価した研究では、1~2ヵ月の血糖値を反映するHbA1cが6.5%以上であると、抗体反応の低下と関連していた。それ以外にも、60歳以上、高血圧、運動不足が、抗体反応の低下と関連していた。

 糖尿病合併症を予防するための血糖コントロールの目標は、HbA1c 7%未満だが、これを超えて血糖値が高いと、ワクチンの2回目接種から21日後にウイルスの中和抗体の能力が大幅に低下することが、イタリアで実施されたコホート研究でも示されている。

 TNF-αやIL-2、IFN-γといった免疫に関わるサイトカインを調べたところ、高血糖は、ウイルス感染や腫瘍を排除するときに重要な役割を果たすCD4陽性キラーT細胞の応答低下と関連することが示された。

 逆に、ワクチン接種後52日目にHbA1cが低く管理されていると、中和抗体価とT細胞から分泌されるサイトカインが増加しやすいことも分かった。

血糖コントロールを最適化しワクチン接種による免疫応答を改善

 「このことは、ワクチン接種時と接種後の期間に、血糖コントロールを最適化することが、ワクチン接種で得られる免疫応答を改善するために重要であることを示しています」と、ブゼッティ氏は言う。

 「ワクチン接種時に血糖値が高いと、新型コロナワクチンによる免疫応答が低下するおそれがあります。2型糖尿病の人が、最初は血糖コントロールが不十分であっても、推奨されるコントロール目標を達成したら、免疫応答が改善したという報告もあります」としている。

 血糖コントロール以外にも、細胞性の免疫応答の障害が影響している可能性もある。IFN-γは、ヘルパーT細胞から産生され、抗ウイルス作用を高める炎症性サイトカインだ。

 ベルギーの介護施設の居住者を対象とした研究では、血糖値が高い人は、細胞性免疫を誘導する免疫原性が低下していたが、肥満の人がカロリー制限により血糖値を下げると、IFN-γが増加し免疫が高まることが示された。

ワクチンの副反応で血糖異常が?

 1型糖尿病と2型糖尿病の人が、新型コロナワクチン接種により血糖異常が起こる可能性についても懸念されている。ワクチンの副反応により、一部の患者で、炎症誘発性サイトカインが生じ、インスリン抵抗性が強まり、血糖コントロールが悪化する可能性が指摘されている。

 「糖尿病患者さんでの、新型コロナのワクチン接種の有効性を調査するために、血糖コントロールを改善し、ワクチン効果を高めることに焦点を当てた、さらなる研究が緊急に必要とされています」と、ブゼッティ氏は言う。

 新型コロナの免疫応答が血糖コントロールにもたらす影響についてのデータはまだ限られているが、オーストリアで行われているコホート研究であるCOVAC-DM研究で、新型コロナワクチンの接種後に副反応が起き、1型糖尿病の患者で、血糖コントロールが悪化した例が報告されている。

 ワクチン接種後に、1型糖尿病患者58人と2型糖尿病患者16人の両方で、連続血糖モニター(CGM)により血糖変動を調べたところ、ほとんどの患者は血糖コントロールが全般に悪化しなかったが、一部でワクチンによる副反応が起きた日に血糖値の異常がみられた。

CGMやFGMで血糖コントロールを改善

 研究者は、「より大規模な研究でさらに調査する必要があります」としながらも、「新型コロナの免疫に反応する潜在的な血糖異常の可能性について検討し、ワクチン接種の前後の数週間は血糖値のモニタリングを強化するなどして、対策する必要があります」と指摘している。

 「糖尿病とともに生きる人々にとって、新型コロナワクチンの接種は重要です。ワクチンの副反応とワクチンに誘発される血糖異常をおそれ、接種を受けるのを防ぐことのないようにする必要があります」としている。

 CGM(持続血糖モニター)やFGM(フラッシュグルコースモニタリングシステム)により、グルコース濃度を連続して測定することで、血糖値の推移や変動が詳しく分かるようになっている。こうした技術の進歩により、血糖変動を細かく知ることで、高血糖や低血糖の頻度を減らすことができ、1型糖尿病と2型糖尿病の患者の血糖コントロールが改善すると考えられている。

 「新型コロナワクチンの追加接種のときに、CGMやFGMといったデバイスを短期間でも活用することは、糖尿病の管理を改善するための、費用対効果の高い選択肢となる可能性があります」と、ブゼッティ氏は指摘している。

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The evaluation of factors affecting antibody response after administration of the BNT162b2 vaccine: a prospective study in Japan (PeerJ 2021年10月13日)
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【特集】新型コロナウイルス感染症
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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