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2021年10月26日
1型糖尿病の根絶を目指す日本IDDMネットワーク 新型コロナに対策し、糖尿病の先進研究を支援
1型糖尿病の根絶を目指す認定NPO法人「日本IDDMネットワーク」は、さまざまな取り組みと活動を展開している。
新型コロナの拡大により、多くの医療機関は危機的な状況に追い込まれた。日本IDDMネットワークは、ひっ迫する医療現場で働く医療従事者を支援する活動をしている。
1型糖尿病の根絶を目指す研究を支援するため、クラウドファンディングも展開中だ。糖尿病の先進研究の推進や新しい治療法の開発を助成する活動に取り組み、これまで多くの成果を上げている。
1型糖尿病の「根絶(=予防+治療+根治)」を目指して
認定NPO法人「日本IDDMネットワーク」は、全国の1型糖尿病の患者・家族を支援し、「根絶(=予防+治療+根治)」を一刻も早く実現し、1型糖尿病による生涯の負担から解放することを目標に活動している認定NPO法人。
1型糖尿病は、生きていくのに欠かせないインスリンを産生するβ細胞が攻撃・破壊されることで発症する疾患。原因不明で、小児期に突然発症することが多い。現在の医療では、生涯にわたり毎日4~5回の注射、またはポンプによるインスリン補充が必要となる。
糖尿病の大半を占め生活習慣病とも言われる2型糖尿病に対し、1型糖尿病の日本での年間発症率は10万人当たり2人程度と希少であり、社会的な認知や理解は十分に得られておらず、患者と家族の精神的・経済的負担も大きい。
同NPO法人は、こうした患者の負担をなくすことを目指して、さまざまな活動を展開している。
日本IDDMネットワークの多様な取り組みと活動
新型コロナは日本でも感染爆発を起こし、医療提供体制が追い付かない「災害レベル」といえる状況に追い込まれた。糖尿病はとくに新型コロナが重症化しやすい基礎疾患であることが知られており、糖尿病とともに生きる人々にとってこの出来事は他人事ではない。
そこで日本IDDMネットワークは、感染予防を多くの人に訴えることで医療負荷を軽減させ、糖尿病の患者や家族がふだんからお世話になっている看護職の人々を応援するため、クラウドファンディングを開始した。
クラウドファンディングを通して、感染予防への取り組みに注意を向けてもらい、看護職の人々に応援と感謝の気持ちを届けることを目指し、多くの人の参加を呼びかけている。
同NPO法人は9月3日、佐賀大学医学部附属病院で新型コロナ患者に対応している110人の看護職の人々を対象に、「"ありがとう"ギフトカタログ」の贈呈式を行った。
新型コロナの拡大により、医療現場はひっ迫し、看護職の人々の負担は非常に大きくなった。そうした看護職の人々へ贈る感謝の気持ちとして、全国各地の病院に届けるプロジェクトを展開している。
財源としているのは、後述する佐賀県庁への日本IDDMネットワーク指定ふるさと納税の寄付だ。
「"ありがとう"ギフトカタログ」の贈呈式を実施
1型糖尿病の根絶を目指す研究を支援 クラウドファンディングを展開中
認定NPO法人である日本IDDMネットワークは、1型糖尿病を根治する研究を支援する活動も活発に展開している。
糖尿病の先進研究の推進や新しい治療法の開発を助成する活動に取り組み、これまで99件、4億8,650万円の研究費助成を行ってきた(2021年10月現在)。
神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門の廣田勇士氏らの研究は、HbA1cにかわる指標として「新しい血糖コントロール指標」を用い、効果的な診療方法を確立することで、1型糖尿病治療の質を向上させようというもの。
同NPO法人は、廣田氏らの研究に助成し、通院が困難な状況でも対応可能な、新しい1型糖尿病の診療方法の開発に挑戦している。クラウドファンディングの募集期間は10月31日まで、目標金額は1,000万円。
1型糖尿病の根絶を実現するためには、1型糖尿病の新たな治療法を開発するための環境整備が必要となる。この研究では、世界初となる1型糖尿病モデルブタの系統樹立を目指している。
身体の大きさや構造がヒトに近いブタを用いることで、1型糖尿病の治療薬の研究や試験研究が飛躍的に進歩すると期待されている。
同NPO法人は、自治医科大学医学部先端医療技術開発センター動物資源ラボラトリーの谷原史倫氏らの研究を支援し、この研究への「循環型研究資金」による助成を開始した。8月23日には自治医科大学で贈呈式を行った。
同NPO法人は現在、「ヒトiPS細胞による1型糖尿病の根治に向けた研究課題」を広く募集している。基礎的な研究から実用化研究まで、ヒトのβ細胞の再生を目指した挑戦的な研究の応募を呼びかけている。助成総額は2,000万円を予定し、応募期間期間は11月1日まで。
25周年記念イベントをオンライン開催
コロナ禍で1年遅れとなったが、創立25周年を迎えたことを記念し10月17日に「日本IDDMネットワーク25周年記念イベント」をオンライン開催。また、第3回目となる山田和彦賞の贈呈式も同時開催した。
第3回山田和彦賞贈呈式では、膵島移植の第一人者である松本慎一氏へ山田和彦賞と副賞の1000万円が贈呈された。松本慎一氏はこの副賞から300万円を日本IDDMネットワークの「バイオ人工膵島移植ジャパンプロトコール2025基金(2025年のバイオ人工膵島移植実現を目指し2021年に創設、目標5億円)」へ寄付。医療者、企業、NPOが一体となってバイオ人工膵島移植のさらなる研究の加速を目指す。
また、25周年記念イベントでは松本慎一氏と日本IDDMネットワーク役員とのパネルディスカッション、ポル・メド・テックと日本IDDMネットワークとの協働や1型糖尿病患者で社会起業家の細目圭佑氏が代表を務めるLangerhunsと日本IDDMネットワークの資本業務提携の発表等、2025年の1型糖尿病根治、2025年の「その先」についての決意表明も行われた。
「マンスリーサポーター」への参加を呼びかけ
認定NPO法人である日本IDDMネットワークは、糖尿病患者を支援する活動や、糖尿病の先進研究の推進や治療法の開発を助成する活動に取り組んでいる。活動の財源となっているのは、糖尿病の患者や家族、支援者などからの寄付と、佐賀県庁へのふるさと納税だ。
同NPO法人は、2005年に「1型糖尿病研究基金」を設立、2014年より佐賀県庁への「日本IDDMネットワーク指定ふるさと納税」に取り組んでおり、「日本の寄付文化を変えた」と大きく注目されている。同NPO法人への寄付は、税制優遇の対象となる。
ふるさと納税の運営母体は佐賀県庁であり、クラウドファンディングでは具体的な寄付金の使い道を指定して寄付をお願いしており、税金の控除も受けられ、お礼の品をもらうこともできる。
また、「マンスリーサポーター」は、月額1,000円から継続的に「1型糖尿病研究基金」に寄付できるプログラム。同NPO法人は多数の参加を広く呼びかけている。京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長やプロアイススケーターの荒川静香氏など、各界の著名人もこのプログラムを応援しているという。
「1型糖尿病の根絶のためには、数多くの研究を行うことや、研究を継続することが大切です。根絶に向けた研究を、これまで以上に支えるために、多くのマンスリーサポーターが必要です。子供たちの未来の希望のために、マンスリーサポーターになって、あなたの力を貸してください」と、同NPO法人では多くの参加を呼びかけている。
1型糖尿病の根絶=「予防+治療+根治」の実現に向けて
1型糖尿病の根治治療が1日も早く実現するよう、研究のサポートをする募金を呼びかけている。
日本IDDMネットワークを指定して佐賀県庁へふるさと納税をすると、寄付額の90%が同法人に寄付される。ふるさと納税の返礼品は、佐賀牛や有田焼など多数に及ぶ。
9月27日まで糖尿病をテーマにデザインを公募していた「リボンマグネット」の入賞作品を11月11日に発表予定。
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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