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2024年01月15日

1型糖尿病の人が「糖質制限ダイエット」に取り組むと血糖値が改善 極端な糖質制限は勧められない

 1型糖尿病の成人が適度な糖質制限ダイエットに取り組むと、従来の食事法に比べ、健康に悪影響をもたらすことがなく、平均血糖値が低下し、24時間のうち血糖が目標域におさまった時間が増加するという研究を、スウェーデンのヨーテボリ大学が発表した。

 なお、研究者は安全性を優先するため、「1型糖尿病の人が炭水化物の摂取量を大幅に変更するときは、医師や栄養士などの医療従事者と相談しながら行う必要があります」と強調している。

適度な糖質制限は1型糖尿病の人にとって有用である可能性

 1型糖尿病の成人が適度な糖質制限ダイエットに取り組むと、従来の食事法に比べ、健康に悪影響をもたらすことがなく、平均血糖値が低下し、24時間のうち血糖が目標域におさまった時間を示す「Time in Range(TIR)」が増加するという研究を、スウェーデンのヨーテボリ大学が発表した。

 研究は、同大学分子臨床部門のソフィア スターナー アイサクソン氏らによるもので、この種の研究としてはこれまでで最大のものとしている。研究成果は「Lancet Regional Health - Europe」に掲載された。

 試験には、1型糖尿病患者54人が参加(解析の対象となったのは50人)。全員が、インスリンあるいはインスリンポンプによるインスリン療法を受けており、ベースラインの平均HbA1cは8.4%、BMI(体格指数)は29、年齢が48歳で、50%が女性だった。

クロスオーバー比較試験で糖質制限の効果を検証

 研究グループは参加者を2群に分け、1つは1日のエネルギー摂取量の50%を炭水化物から摂取する従来の食事をする群、もう1つは30%を炭水化物から摂取する中程度の糖質制限ダイエットに取り組む群にクロスオーバー方式でランダムに振り分けた。

 両方の食事スタイルは、専門の栄養士により個別にカスタマイズされており、脂肪と炭水化物は質の良い健康的なもので、野菜、食物繊維が多く含まれる全粒穀物、健康に良い不飽和脂肪、ナッツ類、豆類などが含まれていた。

 持続血糖モニター(CGM)を使用して、16週間の試験期間中の参加者の血糖の変動を記録し、それぞれの食事スタイルの影響を評価し、主要評価項目を14日間の平均血糖値の差とした。期間中、糖尿病専門看護師と栄養士が追跡してサポーした。

糖質制限により血糖値を目標範囲内により長く維持

 その結果、炭水化物を30%に調整した中程度の糖質制限ダイエットに取り組んだ群は、従来の食事をした群に比べ、平均血糖値は11mg/dL有意に低下した。

 24時間のうち血糖が目標域(70~180mg/dL)におさまった時間は4.7%増加し、180mg/dLを超えた時間は5.9%減少した。低血糖について差はでなかった。

 「糖質制限ダイエットにより、平均血糖値が低下し、血糖値を目標範囲内により長く維持できることが示されました。適度な糖質制限は、1型糖尿病の人にとって有用である可能性があります」と、アイサクソン氏は述べている。

極端な糖質制限は勧められない 医師や栄養士に相談を

 食事で糖質を制限することによる悪影響は示されなかった。コレステロール値や血圧値は、どちらの食事スタイルの患者でも同様で、アンケート調査では、適度に糖質を制限した食事の方が満足感は若干高くなった。

 とくに、1型糖尿病の人が食事で糖質を極端に制限すると、脂肪の分解によってケトン体という物質が血液中に増え、血液が酸性に傾き(アシドーシス)、危険な状態になることが懸念されているが、今回の試験ではどちらの食事スタイルも、ケトン体は正常なレベルに保たれていた。

 「適度な糖質制限ダイエットは、血糖値が高めの1型糖尿病の成人にとって、良い選択肢となる可能性があります」と、アイサクソン氏は言う。

 ただし、安全性を優先するため、「1型糖尿病の人が炭水化物の摂取量を大幅に変更するときは、医師や栄養士などの医療従事者と相談しながら行う必要があります」と強調している。

 さらに「今回の試験は成人のみを対象としており、とくに1型糖尿病の小児患者さんの場合は、こうした食事の変更をご自分で判断して行うべきではありません」としている。

糖質制限についてより多くの研究が必要

 今回の試験では、脂肪と炭水化物の質について、専門の栄養士が調整した健康的な食事を提供したこと、糖質制限は安全と考えられる範囲内で行い、極端な制限はしなかったことに注意が必要としている。

 「1型糖尿病の人が食事で炭水化物を制限するときは、医師や栄養士などの医療従事者に支援と管理を求める必要があります」と、アイサクソン氏は指摘している。

 「医療の専門家と相談しながら、自分に合った食事スタイルをみつけることが、すべての患者に勧められますが、脂質や炭水化物の制限については、多くの参加者を無作為に割り付けて行う大規模なランダム化比較試験があまり行われていません」と、研究の責任者である同大学糖尿病学のマーカス リンド教授は指摘する。

 「今後は、適切な糖質制限ダイエットが、成人の1型糖尿病患者にとって効果的で安全であることを確かめるために、より多くのデータを提示することが求められます」としている。

Moderate low-carbohydrate diet is beneficial for adults with type 1 diabetes (ヨーテボリ大学 2023年12月20日)
The effect of carbohydrate intake on glycaemic control in individuals with type 1 diabetes: a randomised, open-label, crossover trial (Lancet Regional Health - Europe 2023年12月19日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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