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2024年06月06日
インスリンを飲み薬に 「経口インスリン」の開発が前進 糖尿病の人の負担を減らすために

カナダのブリティッシュコロンビア大学は、毎日のインスリン注射の代替として、飲み薬として利用できる経口インスリン製剤の開発に取り組んでいる。
このほど、新たに開発した経口インスリンを使った実験が成功し、糖尿病のマウスの血糖値を下げるのに成功したと発表した。
「糖尿病の管理をより簡単にし、患者さんの負担を減らす、痛みもともなわない、新しい治療法が求められています」と、研究者は述べている。
インスリンを飲み薬に 治療の選択肢が増えると期待
カナダのブリティッシュコロンビア大学は、毎日のインスリン注射の代替として、飲み薬として利用できる経口インスリン製剤の開発に取り組んでいる。 このほど、新たに開発した経口インスリンを使った実験が成功し、糖尿病のマウスの血糖値を下げるのに成功したと発表した。 「インスリンを飲み薬として利用できるようにすれば、インスリン療法の選択肢が増え、患者さんの利便性を高められると考えられます」と、同大学でファーマシューティカルを研究しているシーダール リー教授は言う。 「インスリンは、タンパク質(ペプチド)を含み、その分子構造は複雑です。飲み薬に加工すると、胃のなかで早く分解されてしまい、これまで経口投与は難しいとされていました」。 「インスリンの分子は大きく、腸で吸収させるのは難しいのですが、魚の副産物からえたペプチド(プロタミン誘導体)を利用し、効率良く吸収させるのに成功しました」としている。 糖尿病のマウスを使った実験では、そのペプチドを含む経口インスリンは、効率良く吸収され血液に到達し、血糖値を低下させたのに対し、ペプチドを含まない経口インスリンは、腸の内壁にとどまったままであることが示された。 「新たに開発した2つのペプチドは、インスリンが消化管で分解されずに、小腸から吸収されるのを助けるガイドのような働きをします。このガイドがあると、インスリンは最適なルートで安全に、必要な場所に到達するようになります」と、リー教授は説明する。インスリン療法は進歩している でも毎日の注射は重荷という患者も
インスリン療法は、血糖値を調整する働きをするホルモンであるインスリンの分泌が低下したり、その作用が不足した状態になっているときに、注射などによりインスリンを外部から補うことで、血糖を下げる治療法だ。 食事で摂取した糖分を含む食べ物は、消化酵素などでブドウ糖に分解され、小腸から吸収される。健康な人は、食事により血液中のブドウ糖が増えると、膵臓からインスリンが分泌され、ブドウ糖が取り込まれ、エネルギーとして利用される。 インスリン療法は進歩しており、健康な人と同じ理想的なインスリン分泌パターンを再現することが目指されている。さまざまな種類のインスリン製剤が開発され、注射器や針などのデバイスも改良が重ねられ、患者の負担を減らす工夫がされている。 しかし、1人ひとりの血糖とインスリン分泌の状態に合せて、インスリンを1日に少なくとも1~4回の注射する必要があり、患者によっては負担になっている。 「インスリン投与に関しては、糖尿病の人にとって注射という手段は、もっとも快適で便利なものではありません。毎日のインスリン注射は煩わしく、人前で注射をするのがストレスになっているという患者さんは少なくありません」と、プロジェクトに携わっているジアミン ウー氏は言う。 これまで、毎日のインスリン注射の代替として、肺からインスリンを吸入させる吸入インスリンが開発され、治療に使われていたが、アレルギー反応や咳などリスクがあることなどが懸念されていた。糖尿病の管理をより簡単にし負担を減らす治療法を開発
新たに開発している経口インスリンは、重大な副作用をともなうことなく、痛みもなく、迅速なインスリン投与を実現すると期待されている。 「糖尿病の有病率は世界的に上昇し続けており、カナダだけでも1,170万人が、糖尿病あるいは糖尿病予備群だとみられています」と、リー教授は言う。 「糖尿病の管理をより簡単にし、患者さんの負担を減らす、痛みもともなわない、新しい治療法が求められています」。 とくに1型糖尿病では、膵臓からインスリンがほとんど分泌されなくなるため、生命を維持するためにインスリン療法が一生必要になる。 「1型糖尿病とともに生きる人の数は、世界でおよそ900万人とみられています。インスリン注射の代わりになる、飲み薬として利用できるインスリンを開発できれば、治療の選択肢が増え、1型糖尿病の人の健康と生活の質、メンタルヘルスを改善できると考えています」としている。 UBC-developed oral insulin drops offer relief for diabetes patients (ブリティッシュコロンビア大学 2024年6月5日)Systemic delivery of proteins using novel peptides via the sublingual route (Journal of Controlled Release 2024年4月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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