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2021年03月17日
iPS細胞で1型糖尿病を根治 研究を支援するクラウドファンディングを展開中 日本IDDMネットワーク
1型糖尿病の根絶を目指す認定NPO法人「日本IDDMネットワーク」は、新たな研究助成を目指し、広く支援を呼びかけている。
現在、万能細胞とも呼ばれる「iPS細胞」を活用した1型糖尿病を根治する研究を支援するため、クラウドファンディングを展開している。
これまでに実施したクラウドファンディングは、着実に成果を上げている。
現在、万能細胞とも呼ばれる「iPS細胞」を活用した1型糖尿病を根治する研究を支援するため、クラウドファンディングを展開している。
これまでに実施したクラウドファンディングは、着実に成果を上げている。
1型糖尿病の「根絶(=予防+治療+根治)」を目指して
認定NPO法人「日本IDDMネットワーク」は、全国の1型糖尿病の患者・家族を支援し、一刻も早い「根絶(=予防+治療+根治)」の実現により1型糖尿病による生涯の負担から解放することを目的に活動している認定NPO法人。
1型糖尿病は、インスリンを産生するβ細胞が攻撃・破壊されることで発症する疾患。原因不明で、小児期に突然発症することが多い。現在の医療では、生涯にわたり毎日4~5回の注射、またはポンプによるインスリン補充が必要となる。
糖尿病の大半を占め生活習慣病と言われる2型糖尿病に対し、1型糖尿病の日本での年間発症率は10万人当たり2人程度と希少であり、患者と家族の精神的・経済的負担は大きい。同NPO法人は、こうした患者の負担をなくすことを目指して活動を展開している。
このプロジェクトは、1型糖尿病患者が失った膵島(インスリン分泌機能)を患者自身の細胞から作ったiPS細胞で再生し、自らに膵島移植するという究極の根治治療への挑戦となる。
日本IDDMネットワークは、iPS細胞を実用的な医療として実現するために、広く日本国内の研究者に呼びかけ、iPS細胞による1型糖尿病の根治につながる研究へのさらなる助成を行う予定だ。
iPS細胞による1型糖尿病の根治が実現すれば、1型糖尿病の子どもや家族は病気の不安から解放される。同NPO法人は、日本が世界に先駆けてこの研究を成功させるために、広く支援を呼びかけている。
同NPO法人のクラウドファンディングについて、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥氏は「寄付で研究活動を支えるという文化を日本で広げるために、寄付募集を応援します」と述べている。
京都大学iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門教授の長船健二氏は「研究が進んで1日も早く患者さまに新しい治療法が届くように、ご支援をよろしくお願いいたします」と、東京工業大学 生命理工学院教授の粂昭苑氏は「有効性・安全性の高い再生医療の開発を目指して、毎日研究に励んでいます」と、それぞれ述べている。
東京大学医科学研究所幹細胞研究センター 幹細胞治療分野特任准教授の山口智之氏は「クラウドファンディングによる研究助成は研究者にとって大きな力となります。私も研究助成を受け研究が大きく進展しました」とコメントしている。
マンスリーサポーターを100名募集 キャンペーンを実施中
認定NPO法人である日本IDDMネットワークは、2005年に「1型糖尿病研究基金」を設立、2014年より佐賀県庁への「日本IDDMネットワーク指定ふるさと納税」に取り組み、これまで86件、4億4,750万円の研究費助成を行ってきた(2021年3月15日現在)。
同NPO法人への寄付は、税制優遇の対象となる。同NPO法人は、先進研究の推進や治療法の開発のために活動しており、「日本の寄付文化を変えた」と大きく注目されている。
同NPO法人の研究支援活動の財源となっているのは、1型糖尿病の患者や家族、支援者からの基金への寄付と、佐賀県庁へのふるさと納税だ。ふるさと納税の運営母体は自治体であり、クラウドファンディングでは具体的な寄付金の使い道を指定して寄付をお願いでき、税金の控除も受けられ、お礼の品をもらうこともできる。
マンスリーサポーターは、月額1,000円から継続的に同NPO法人の「1型糖尿病研究基金」に寄付できるプログラム。現在、マンスリーサポーターを100名募集するキャンペーンを実施している。
「1型糖尿病の根絶のためには、数多くの研究を行うことや、研究を継続することが大切です。根絶に向けた研究を、これまで以上に支えるために、多くのマンスリーサポーターが必要です。子供たちの未来の希望のために、マンスリーサポーターになって、あなたの力を貸してください」と、同NPO法人では呼びかけている。
マンスリーサポーターを100名募集 キャンペーンを実施中 2021年5月17日(月)まで
「バイオ人工膵島移植」の研究開発も支援
日本IDDMネットワークは、「バイオ人工膵島移植」の研究開発も支援している。この研究は再生医療に包括されており、1型糖尿病を根治するための、もっとも早く実現が可能な先端研究とみられている。
「バイオ人工膵島移植」は、ヒト移植用に無菌状態で飼育されたブタの膵島細胞をカプセルに閉じ込め、患者の腹腔内をはじめとする候補部位に移植する治療法。移植した膵島がインスリンを分泌する。実現すれば、1型糖尿病を根治させるための新たな選択肢になる。
「バイオ人工膵島移植」のクラウドファンディングは目標を達成した。同NPO法人はこれまで、このプロジェクトに総額1億9,000万円の研究助成を行っている。
福岡大学で開催された日本IDDMネットワークからの助成金の贈呈式
(左から)大村詠一・日本IDDMネットワーク副理事長、
小玉正太・福岡大学医学部教授(再生医学研究所長)、朔啓二郎・福岡大学学長

小玉正太・福岡大学医学部教授(再生医学研究所長)、朔啓二郎・福岡大学学長
認定特定非営利活動法人 日本IDDMネットワーク
1型糖尿病の根治治療が1日も早く実現するよう、研究のサポートをする募金を呼びかけている。
日本IDDMネットワークを指定して佐賀県庁へふるさと納税をすると、寄付額の90%が同法人に寄付される。ふるさと納税の返礼品は、佐賀牛や有田焼など多数に及ぶ。
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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