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2022年03月02日

1型糖尿病 日本初のハイブリッドクローズドループを搭載したインスリンポンプ CGMと連動しインスリン注入量を自動調整

 基礎インスリン注入量を自動調整する「ハイブリッドクローズドループ(HCL)テクノロジー」を搭載したインスリンポンプが発売された。

 「ハイブリッドクローズドループ(HCL)」とは、インスリンポンプと連動したCGM(持続血糖モニター)より5分ごとに得られるセンサグルコース値にもとづき、システムが基礎インスリン量を自動調整し、高・低血糖を軽減、血糖値を目標範囲に維持するためのするテクノロジー。

 この新しい技術は、インスリン治療を必要とする患者の生活の質(QOL)向上に寄与すると期待されている。

日本初の「ハイブリッドクローズドループ(HCL)」

 日本メドトロニックは、基礎インスリン注入量を自動調整する「ハイブリッドクローズドループ(HCL)テクノロジー」を搭載したインスリンポンプ「ミニメド770Gシステム」を2022年1月に発売した。

 「ハイブリッドクローズドループ(HCL)」とは、インスリンポンプと連動したCGM(持続血糖モニター)より5分ごとに得られるセンサグルコース値にもとづき、システムが基礎インスリン量を自動調整し、高・低血糖を軽減、血糖値を目標範囲に維持するためのテクノロジー。

 たとえばセンサグルコース値が高くなることを予測すると基礎インスリンの注入量を増量、センサグルコース値が低くなることを予測するとインスリンの注入量を減量するなど、日中だけでなく夜間帯も含めた24時間、血糖値を目標範囲内に保つ(センサグルコース値を70~180mg/dLに保つ)ためにサポートする。

 一方、食事の際に必要となる追加インスリンは、糖質量と血糖値の入力をボタン操作で行うと自動で計算される推奨インスリン量を注入する必要があるため、"人工膵臓"とも呼ばれる「クローズドループ(CL)」に対し、「ハイブリッドクローズドループ(HCL)」と呼んでいる。

HCLが1型糖尿病患者の血糖コントロールを改善

 米国で実施された、HCLシステムを搭載したインスリンポンプを使用したときの安全性と有効性を調べた、1型糖尿病の若年患者(14~21歳)および成人(22~75歳)を対象とした試験では、HCL治療によりベースラインと比較して、血糖値を目標範囲内(センサグルコース値で70~180mg/dL)に保てた時間(TIR)が増え、HbA1cは改善し、高血糖と低血糖も減少したことが示された。1

 7~13歳の小児の1型糖尿病患者を対象とした別の試験では、HCLシステムを搭載したインスリンポンプを3ヵ月間使用することで、ベースラインと比較して、やはりTIRは増え、HbA1cは改善することが示された。従来のインスリンポンプのシステムと同様に安全に使えることも確かめられた。2

TIR(Time in Range)」とは

 TIR(Time in Range)」とは、血糖値が最適な目標範囲内にある時間のことで、CGM(持続血糖モニター)の普及にともない重視されるようになった。

 米国糖尿病学会(ADA)は2019年に、「CGM使用時の1型および2型糖尿病の治療目標としてTIRを70mg/dLから180mg/dLとし、HbA1c7%の患者の場合は全体の70%の時間(CGMの測定地点)がこの域内に収まること」というガイドラインを出し、いっそう注目されるようになった。3

 TIRが高いほど、低血糖の時間・高血糖の時間・血糖変動が少なくなり、TIRが1%改善すると、24時間のうちの1%、つまり14.4分、この目標範囲から逸脱する(下回るまたは上回る)時間が減少し、目標範囲に収まる時間が延びたことを示す。

 14歳~75歳の1型糖尿病を対象とした米国やイスラエルで実施された試験では、HCLシステムを搭載したインスリンポンプを使用することで、ベースラインでは66.7%だったTIRが、72.2%に改善し、目標範囲内での時間が約80分延長したことが示された。4

日本初のハイブリッドクローズドループを搭載したインスリンポンプ

ミニメド770Gシステム

販売名:メドトロニック ミニメド700シリーズ
承認番号:30300BZX00256000
  1. 注入する基礎インスリンを患者に適した量に自動調整。
  2. システムが推奨する追加インスリン量を計算・表示。
  3. リアルタイムCGMのデータなどをスマホで確認し共有もできる。現在の基礎インスリンの量やボーラスの量・タイミングなどを確認でき、アラートも通知。データは、リアルタイムで家族・保護者などのスマホとも共有できる。

 「ミニメド770Gシステム」について詳しくは、医師など医療従事者向けに公開している「糖尿病リソースガイド」をご覧ください。

医療従事者向け

多くの患者が日々の血糖コントロールに苦労している

 日本ではインスリン治療を行っている糖尿病患者数は100万人以上と推定されているが、そうしたなかには血糖コントロールに対する身体的・心理的負担を日常的に強く感じている患者が多くいる。

 患者はその時々の体調や運動量、心理状況、食事の量と質、女性であれば生理周期などさまざまな要因を考慮の上、インスリンの適切な量を自身で考え、投与し、高・低血糖の両方を防ぎながらコントロールすることを目指すが、それは言葉であらわすほど容易なことではない。

 「日本初のハイブリッドクローズドループが導入されたことを大変喜ばしく思います。インスリン治療において血糖値を適切な範囲に維持することは患者・医療者の双方にとっての目標であり、大きな課題でした」と、東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の西村理明教授は述べている。

 「生活、仕事、体調などで必要なインスリン量は常に変化します。したがって、医師の指示通りにインスリンを注射・注入していても、高・低血糖はさまざまな要因によって起こりえます」としている。

 どんな人でも、血糖変動は2日と同じ日はなく、多くの患者が日々の血糖コントロールに苦労している。ハイブリッドクローズドループという新しいテクノロジーにより、"インスリン治療に合わせた生活"から"生活に合わせたインスリン治療"へ転換ができれば、学業や仕事、遊びに対してより自由で、負担が少ない生活がおくれるようになると期待される。

 糖尿病ネットワークの「インスリンポンプ・ SAP・CGM情報ファイル」は、糖尿病治療のためのインスリンポンプ(CSII)やSAP(CGM機能つきポンプ)などを解説した情報サイト。

 インスリンポンプ・SAP・CGMについての詳しい情報を見られるほか、実際にこれを使用している患者のコメントなどを見られる「先輩患者さんに聞いてみよう」「患者さんの体験談」「上手なポンプの使い方Q&A」「もっと知りたい方へ」などのコーナーがある。

 インスリンポンプ・SAP・CGMを取り扱っている医療機関の検索もできる。

 糖尿病患者と医療スタッフにインスリンポンプ療法などについて意見を尋ねた「ネットワークアンケート」、糖尿病専門医によるリレーインタビュー「インスリンポンプ療法の今とこれから」なども。

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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