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2022年03月01日

【新型コロナ】健康食品は"魔法の方法"にはならない コロナはビタミンなどのサプリでは防げない

 「健康食品を摂取していれば、不健康な行動をしてもよい」という、"免罪符型"の動画広告が、視聴者の認識に与える影響を、東京大学がはじめて明らかにした。

 こうした免罪符型の広告は、不健康な行動をとるための「免罪符」として健康食品を描いており、視聴者が「健康食品を摂取すれば、健康行動をしなくてよい」という誤ったメッセージを受け取ってしまうおそれがあるという。

 また、新型コロナのパンデミックの影響を受け、ビタミンやミネラルなどのさまざまなサプリメントが、感染や重症化の予防に役立つと謳って売られている。

 しかし、そうしたサプリメントについて、新型コロナによる健康障害を防げるというエビデンス(科学的根拠)はないという研究も発表された。

 「ワクチン接種や基本的な感染対策という、新型コロナによる健康障害を防ぐ効果的な方法を、必要がないと誤解したり、忘れてしまってはいけません」としている。

健康食品の「免罪符型」の動画広告が不健康な行動を誘発

 東京大学の研究グループは、健康食品の「免罪符型」広告が、視聴者に及ぼす影響を評価することを目的に、ランダム化比較研究を実施した。

 その結果、「免罪符型」の健康食品の動画広告を視聴することで、視聴者は「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という認識を強めることが実証された。

 健康食品を、不健康な行動をとるための免罪符かのように描く「免罪符型」の動画広告は、特定の文言で「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」と訴求しているわけではない。

 しかし、動画広告内のストーリーや登場人物の表情などの視聴を通じ、そうした誤った認識を高めることが示された。

 「公衆衛生のいくつかの研究では、健康食品の有効性は極めて限定的だとされています。健康食品を摂取するかどうかに関わらず、食生活・生活習慣の実行は重要であり、健康食品は乱れた食事や運動不足を簡単に解消する"魔法の方法"にはなりません」と、研究者は述べている。

免罪符型の動画広告を視聴すると印象はどう変わる?

 民間の調査では、とくに「脂肪」への効果を訴求する健康食品への関心が高く、また近年のインターネットなどの通信環境の発展にともない、そうした食品の動画広告に接する機会は増えている。

 研究グループは、日本の「脂肪」への効果を訴求する健康食品の動画広告に、「どのような」内容が「どれくらい」あるのかを類型化する、内容分析を実施した。

 その結果、「免罪符型」と名付けられる広告が、分析対象の広告の約25%を占め、もっとも多いことが分かった。

 次に、「脂肪」への効果を訴求する健康食品の「免罪符型」動画広告が、視聴者の認識に与える影響を評価することを目的としてランダム化比較研究を実施した。

 調査会社の登録モニター788人を対象に、インターネット調査を実施した。参加者を、介入群または対照群にランダムに割り付けた。

 介入群に割り付けられた参加者394人は、以前の研究で「免罪符型」と特定した動画広告のうち、再生回数が多い3本の動画を閲覧した。対照群に割り付けられた参加者394人は、健康食品とは無関係のお茶の抽出方法に関する動画を閲覧した。

 その結果、「免罪符型」の動画を閲覧した介入群は、お茶の動画を閲覧した対照群と比較して、「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という認識が有意に強いことが分かった。

健康食品では乱れた食事や運動不足を帳消しにできない

 研究は、大学院医学系研究科の家れい奈氏、奥原剛准教授、木内貴弘教授らによるもの。研究成果は、「Healthcare」に掲載された。

 「健康食品は、乱れた食事や運動不足を簡単に解消する魔法の方法ではありません。たとえば、からあげ1つで約60kcalですが、その摂取を帳消しにする健康食品はありません」と、研究グループは述べている。

 「免罪符型」の広告が、もし、日常的に不健康行動も誘発しているとなれば、不健康行動による害の方が大きいと考えられる。「健康食品の動画広告の内容を改善する重要性が示唆されました」と、研究者は述べている。

ビタミンなどのサプリメントでは新型コロナは防げない

 新型コロナのパンデミックの影響を受け、ビタミンやミネラルなどのさまざまなサプリメントが、感染や重症化の予防に役立つと謳って売られている。

 しかし、そうしたサプリメントについて、新型コロナの重症化や死亡のリスクを下げるというエビデンス(科学的根拠)はないと、米国のトレド大学が発表した。

 「多くの人が、亜鉛・ビタミンD・ビタミンCなどのサプリメントを摂取すると、新型コロナの臨床転帰の改善に役立つという誤解を抱いています。しかし、それが本当のことであるという証拠はありません」と、同大学医学部の内科医であるアジズラ ベラン氏は言う。

 研究グループは、世界中から5,600人以上の新型コロナの入院患者を含む26件の査読済み研究をレビューした。

 その結果、ビタミンC・ビタミンD・亜鉛のサプリメントのいずれかを摂取した患者の死亡リスクは、摂取しなかった患者と同じであることが明らかになった。

 ただし、ビタミンDについては、人工呼吸器を装着する割合の低下と入院期間の短縮に関連する可能性が示された。しかし、それを検証するためにより厳密な研究が必要だとしている。

 「さらに、もっと重要なメッセージは、新型コロナに対策するための効果的な方法は、ワクチン接種だということです。サプリメントを飲んでいるから、ワクチン接種は必要ないという、誤った理解をしてしまうおそれがあります」と、ベラン氏は強調している。

 研究グループは、この研究がビタミンやミネラルのサプリメントのすべてが良くない、または避けるべきだと示しているわけではなく、栄養や微量栄養素が不足している場合には、サプリメントを摂取することで恩恵を受けられる可能性はあると述べている。

 「ただし、ワクチン接種や基本的な感染対策という、新型コロナによる健康障害を防ぐ効果的な方法を、サプリメントを利用することで必要がないと誤解したり、忘れてしまうのはいけません」としている。

東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻
The Effect of Exposure to "Exemption" Video Advertisements for Functional Foods: A Randomized Control Study in Japan (Healthcare 2022年2月11日掲載)
Study strengthens case that vitamins cannot treat COVID-19 (トレド大学 2022年2月17日)
Clinical significance of micronutrient supplements in patients with coronavirus disease 2019: A comprehensive systematic review and meta-analysis (Clinical Nutrition ESPEN 2022年1月12日)
【特集】新型コロナウイルス感染症
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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