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2022年02月25日

1型糖尿病を根絶する研究を支援 クラウドファンディングを展開し研究課題を募集 日本IDDMネットワーク

 1型糖尿病の根絶を目指す認定NPO法人「日本IDDMネットワーク」は、さまざまな取り組みと活動を展開している。

 1型糖尿病の根絶を目指す研究を支援するため、さまざまなクラウドファンディングを展開しているのに加え、支援する研究課題の募集も行っている。

 糖尿病の先進研究の推進や新しい治療法の開発を助成する活動は、これまで多くの成果を上げている。

1型糖尿病の「根絶(=予防+治療+根治)」を目指して

 「日本IDDMネットワーク」は、全国の1型糖尿病の患者・家族を支援し、「根絶(=予防+治療+根治)」を一刻も早く実現し、1型糖尿病による生涯の負担から解放することを目標に活動している認定NPO法人。

 1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が破壊され、体内でインスリンを作れなくなり発症する。β細胞が壊される原因はよく分かっていないが、免疫作用が正しく働かないことで、自分の細胞を攻撃してしまうこと、つまり「自己免疫」が関わっていると考えられている。

 1型糖尿病の治療法は、絶対的に不足しているインスリンを、注射などで補充すること。患者は1日4回程度の注射やインスリンポンプにより、インスリンを補充している。食事療法や運動療法が必要となる2型糖尿病とは、治療の考え方はまったく異なる。

 日本では、1型糖尿病に対する社会的な認知や理解は十分に得られておらず、患者は危険な低血糖と、合併症の発症につながる高血糖との狭間で生きなければならない。生きるために1日たりとも治療は欠かせず、患者自身の苦痛はもとより、家族にとっても精神的・経済的な負担も多大なものになっている。

 このような状況を受けて、日本IDDMネットワークは、1型糖尿病の「根絶」を願い、2005年に「1型糖尿病研究基金」を設立した。この基金により、1型糖尿病の根絶に向けた先進的な研究に取り組んでいる研究者や団体に対し研究費の助成を行い、1日でも早く決め手となる治療法が確立されることを願っている。

 基金の設立後、2008年度にはじめて2件の研究費助成を実施し、これまで合計107件、5億3,250万円の研究費支援を行っているという(2022年2月時点)。

 1型糖尿病の根治治療が1日も早く実現するよう、研究のサポートをする募金を呼びかけている。


 16回目となる助成課題募集では、日本学術振興会による科学研究費助成事業の支援からは外れたものの、1型糖尿病患者・家族の目線で画期的かつ先進的であると強く自負される研究への助成を行う。「若手研究者の方々に、強い信念を持って独創的なチャレンジを行ってもらう一助になれば幸いです」と、同NPO法人では述べている。

応募期間:2022年1月6日(木)~2022年3月7日(月) 当日消印有効
選考結果:2022年4月22日(金)までに文書などで通知

 経済的理由で大学への進学や在学が困難となっている1型糖尿病患者が、1型糖尿病の根絶のために研究者、医療者を目指すこと、そのための勉学を継続することを応援するために、返済不要の奨学金を希望する学生を募集している。

応募締切:2022年8月31日(水) 当日消印有効

 日本IDDMネットワークは、国立国際医療研究センターや明治大学などの研究チームが取り組んでいる「バイオ人工膵島移植」の研究開発も支援している。

 膵島移植は、インスリンを産生するβ細胞が含まれる膵島を移植する治療法で、1型糖尿病患者をインスリン治療から解放する根治療法とみられている。

 しかし、膵島移植には大きな課題がある。そのひとつは膵島を提供するドナーの不足だ。膵島移植が効果的な治療であることは実証されているが、深刻なドナー不足のため、日本での実施数は伸び悩んでいる。

 この課題を一気に解決する新たな治療法の開発が進行している。それが、異種移植による「バイオ人工膵島移植」法の開発だ。

 「バイオ人工膵島移植」は、ヒト移植用に無菌状態で飼育されたブタの膵島細胞をカプセルに閉じ込め、患者の腹腔内に移植する治療法。移植した膵島がインスリンを分泌する。1型糖尿病を根治させるための新たな選択肢になる。

 この治療法であれば、膵島を大量に安価に準備でき、膵島を特殊なカプセルに封入することで免疫細胞の攻撃を回避できると考えられている。移植された膵島は免疫細胞からの攻撃を受けることがないので、免疫抑制剤を服用する必要もない。

日本IDDMネットワーク25周年記念イベントを開催

 「日本IDDMネットワーク25周年記念イベント-2025年1型糖尿病根治に向けて-&第3回山田和彦賞贈呈式」が、2021年10月17日にオンラインで開催された。

 パネルディスカッション「みんなで成功を祝いたい"治らない"から"治る"をみんなで目指す~今、そして、未来に向けて私たちにできること~」などが開催された。

 同NPO法人は、1型糖尿病の根絶に向けた研究を推進し、第一線で活躍している研究者を顕彰する「山田和彦賞」を実施している。第3回は、臓器移植の研究を牽引している松本慎一氏(ポル・メド・テック 取締役<異種膵島移植事業担当>、国立国際医療研究センター膵島移植プロジェクト研究アドバイザー)が受賞した。

 当日のイベントの様子は、インターネットで公開されている。京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥氏のメッセージや、1型糖尿病とともに生き、プロ野球選手として活躍した岩田稔氏、プロサッカー選手として活躍するセルジ サンペール選手のメッセージなど、盛りだくさんの内容だ。

日本IDDMネットワーク25周年記念イベント

第3回山田和彦賞贈呈式 松本慎一氏による記念講演

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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