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2022年03月03日

【新型コロナ】新たに診断された糖尿病患者の血糖値は正常に戻りやすい 良好な血糖コントロールが重要

 新型コロナで入院した患者のうち、新たに糖尿病と診断される患者は多いが、そうした患者は一時的に高血糖になっており、新型コロナを治療した後はすぐに正常な血糖値に戻る可能性がある。

 このような新たに診断された糖尿病は、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」によって引き起こされている可能性が高いという。

 糖尿病の人は、良好なHbA1cを長期的に維持していれば、新型コロナに感染した場合の重症化リスクを低下できることも確かめられている。

 HbA1cを7%と良好にコントロールしている人では、新型コロナの重症化リスクは上昇しなかった。

新たに診断された糖尿病では、治療後は血糖値が正常に戻りやすい

 米国のマサチューセッツ総合病院の研究によると、新型コロナで入院した患者のうち、新たに糖尿病と診断される患者は多いが、そうした患者はウイルス感染の急性ストレスのために一時的に高血糖になっており、新型コロナを治療し退院した後はすぐに正常な血糖値に戻る可能性がある。

 糖尿病は新型コロナの重症化リスクのひとつであり、新型コロナが深刻化しやすいことが知られている。糖尿病のある人が新型コロナを発症すると、血糖コントロールの状態が良くない場合は重症化しやすく、入院率、集中治療室(ICU)での治療、人工呼吸器の使用が増え、さらには死亡率が上昇しやすい。

 新型コロナについては、入院時に新たに糖尿病と診断される患者も多く、そうした患者は新型コロナの重症化リスクが高いことも報告されている。そうした患者を特定するため、新型コロナの診断の段階で、血糖値やHbA1cの検査を行うことが重要とされている。

 新型コロナでは「新たに診断された糖尿病(NDDM)」が高い比率でみられることが、世界中の多くの調査からで報告されている。しかし、新型コロナに感染したために新たに糖尿病を発症するのか、糖尿病と診断されていなかった患者が入院により糖尿病が発見されるのかはよく分かっていない。

 また、新型コロナの罹患によりなぜ血糖値が上昇しやすいのか、新型コロナが治った後に血糖値は改善するのかも不明だ。

新型コロナの感染により急性の炎症性ストレスが

 「新型コロナによって引き起こされる炎症性ストレスは、新たな糖尿病の発症や診断の主要な原因となっている可能性があります」と、マサチューセッツ総合病院の内分泌・糖尿病・代謝学部のサラ クローマー氏は言う。

 「また、新型コロナが直接的に糖尿病を引き起こすのではなく、すでに糖尿病を発症していても診断を受けていない患者が、新型コロナで入院したのをきっかけに、はじめて糖尿病と診断された可能性もあります」としている。

 そこで研究グループは、2020年3月~9月に新型コロナで同病院に入院した1,902人の患者を対象に調査した。うち594人(31.2%)が糖尿病で、さらに77人(13.0%)が新たに診断された糖尿病(NDDM)だった。

 これらのNDDMの患者の多くは、既存の糖尿病患者に比べて、血糖値はそれほど深刻ではないが、新型コロナはより重症化しやすいことが分かった。そうした患者は、血糖パラメーターが低く、炎症マーカーが高かった。

 さらに、そうした患者は、新型コロナが治った後は、半数近く(40.6%)は正常な血糖値や糖尿病予備群の状態に戻り、1年後にインスリン治療を必要としていたのはわずか8%であることが明らかになった。

 「これは、新型コロナにより新たに診断された糖尿病は、感染による急性ストレスに関連して引き起こされた、一時的な状態である可能性を示しています」と、クローマー氏は説明している。

急性のインスリン抵抗性が糖尿病発症の原因?

 この重要な発見は、新たに診断された糖尿病は、「インスリン抵抗性」によって引き起こされている可能性が高いという、これまでの臨床的な仮説を支持するものだ。

 インスリン抵抗性とは、血糖を下げるインスリンに対する感受性が低下し、インスリン作用が不足し、細胞が血液中の糖を適切に吸収できなくなり、血液中の糖の蓄積が通常よりも高くなってしまうこと。

 インスリン抵抗性は、膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンが少なくなり、インスリン欠乏となり高血糖になる「インスリン分泌能低下」とは区別して考えられている。

 「今回の研究では、新型コロナを発症し新たに糖尿病と診断された患者では、急性のインスリン抵抗性が、糖尿病発症の根底にある主要なメカニズムであることが示唆されました。インスリン欠乏が起きていても、一般的には永続的なものではないと考えられます」と、クローマー氏は述べている。

 「これらの患者は、インスリンなどの血糖降下薬を必要とする期間は短い可能性があります。そのため、医師がこれらの患者を注意深く追跡して、病状が改善するかどうか、いつ改善するかを確かめることが重要になります」としている。

感染と重症化を防ぐために良好な血糖コントロールが必要

血糖コントロールを良好に維持していると新型コロナのリスクは低下

 HbA1cは、1~2ヵ月の血糖値の平均を反映しており、血糖コントロールの指標となる。良好なHbA1cを長期的に維持していると、新型コロナに感染した場合の重症化リスクが低下することが、米レンセラー工科大学の調査で明らかになっている。

 糖尿病とともに生きる人々が新型コロナに打つ克つために、良好な血糖コントロールが重要であることがあらためて示された。

 研究グループは、米国で医療サービスのネットワーク提供を行っているオプタムヘルスの、2017年1月~2020年11月の医療データベースを解析した。平均年齢67.6歳の1万6,504人の男女が対象になった。

 その結果、新型コロナに罹患する2~3年前から、平均HbA1cが1%高いごとに、ICU(集中治療室)に入院するリスクが12%上昇することが示された。

 HbA1cが7%と良好にコントロールされている群では、新型コロナの重症化リスクは1.12倍に抑えられていたが、8%以上の群では1.34倍に、9.0%以上の群では1.48倍にそれぞれ上昇した。

 「糖尿病が新型コロナの転帰を悪化させる危険因子であることは知られていますが、すべての糖尿病患者さんが同じというわけではありません。血糖コントロールが良い人もいるし、糖尿病の病歴が長い人や、合併症を発症している糖尿病さんもいます」と、同大学生物医学工学部のディーパク ヴァシシュス教授は指摘している。

 「2型糖尿病の人は、食事療法と運動療法、薬物療法により、血糖値を適切にコントロールできます。新型コロナのワクチン接種を受け、一般的な感染対策を行うとともに、ふだんから良好なコントロールを目指すべきです」としている。

Newly diagnosed diabetes in patients with COVID-19 may simply be a transitory form of the blood sugar disorder (マサチューセッツ総合病院 2022年2月24日)
Newly diagnosed diabetes vs. pre-existing diabetes upon admission for COVID-19: Associated factors, short-term outcomes, and long-term glycemic phenotypes (Journal of Diabetes and its Complications 2022年2月4日)
Long-Term Blood Sugar History Predicts Risk Of Severe Covid-19 Among Diabetics(レンセラー工科大学 2021年11月18日)
Evaluation and management of COVID-19-related severity in people with type 2 diabetes (BMJ Open Diabetes Research & Care 2021年9月7日)
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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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