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2020年06月29日

【新型コロナ】COVID-19が糖尿病を新たに引き起こす 国際的研究を呼びかけ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染すると、糖尿病を新規に発症し、糖尿病の重篤な合併症を引き起こす可能性があることを、英国のキングス カレッジ ロンドンなどが発表した。
 糖尿病の人がCOVID-19を発症すると重症化しやすいことが知られているが、糖尿病でない人であっても、感染すると新規に糖尿病を発症するリスクが高まるという。詳細は医学誌「ニューイングランド ジャーナル オブ メディスン」に掲載された。
COVID-19と糖尿病に双方向的な関連がある
 この研究は、国際的な共同研究イニシアチブである「CoviDiabプロジェクト」に参加した17人の糖尿病研究の専門家が、COVID患者での糖尿病の新規症例についてのグローバルなレジストリを確立する目的で行われたもの。

 このレジストリは、COVID-19患者の糖尿病の症状の程度と特徴、およびパンデミック中と後の患者の治療とモニタリングのための最良の戦略を開発することを目的に作成されている。

 これまでの臨床的な観察では、COVID-19で死亡した患者の20〜30%は糖尿病であることが報告されており、糖尿病がCOVID-19の重症度と死亡のリスクを高めることが示されている。

 今回の研究では、COVID-19と糖尿病に双方向的な関連があることが示された。COVID-19の患者は、糖尿病を新規に発症し、非定型の代謝合併症を発症するリスクが高まるという。

インスリンポンプ・ SAP・CGM情報ファイル
COVID-19が糖尿病を引き起こすメカニズム
 COVID-19を引き起こすウイルスであるSARS-Cov-2が、どのように糖尿病に影響をもたらすかについては、まだ不明な点が多い。

 しかしこれまで研究で、SARS-Cov-2に結合してウイルスがヒト細胞に侵入することを可能にするタンパク質であるACE-2は、肺だけでなく、膵臓、小腸、脂肪組織、肝臓、腎臓といったグルコース代謝に関与する臓器や組織にも存在することが示されている。

 研究者は、ウイルスがこれらの組織に侵入することで、いくつかの複雑なグルコース代謝の機能障害を引き起こす可能性があると指摘している。ウイルス感染が1型糖尿病を誘発することも知られている。
国際的な研究を呼びかけ
 「糖尿病はもっとも一般的にみられる慢性疾患の1つであり、同時にCOVID-19の流行の第2波、第3波についても懸念されています。この新しいコロナウイルスを人類が経験してから、短い期間しか経過しておらず、ウイルスがグルコース代謝に影響する正確なメカニズムはまだ良く分かっていません。COVID-19に感染した患者の糖尿病の急性症状が、1型糖尿病か、2型糖尿病か、それとも新しいタイプの糖尿病を示すのかも分かりません」と、キングス カレッジ ロンドン ライフコース科学部代謝外科教授およびCoviDiabプロジェクトの共同主任研究員のフランチェスコ ルビノ氏は言う。

 「COVID-19により糖尿病を新たに発症する症例がどれだけ多いのかも不明です。また、糖尿病が持続するのか、感染症を治癒した場合には糖尿病も治るのか、その場合は将来に糖尿病の発症リスクが増加するのかといったことも解明されていません。こうした疑問への回答を提供するために、このグローバルレジストリを確立し、臨床所見を共有することを国際医療コミュニティに呼びかけています」と、メルボルンのモナッシュ大学糖尿病学部教授および国際糖尿病連合(IDF)の名誉会長であり、CoviDiabプロジェクトの共同主任研究者であるポール ジメット氏は述べている。

 「このレジストリは、COVID-19により糖尿病がどのように発症するか理解するために、インスリン分泌量、インスリン抵抗性、自己免疫抗体など臨床データを収集することに焦点を当てています。COVID-19に関連する糖尿病を調査することで、この疾患の新しい機序を解明できる可能性があります」と、キングス カレッジ ロンドン 糖尿病研究学部教授でCoviDiabプロジェクト共同研究者であるステファニー アミエル氏は述べている。

COVID-19 may trigger new diabetes, experts warn(キングス カレッジ ロンドン 2020年6月12日)

インスリンポンプ・ SAP・CGM情報ファイル
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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