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2018年10月19日
日本の1型糖尿病の患者数は10〜14万人 支援とケアが必要 厚労省研究班
日本の1型糖尿病の患者数は10〜14万人と推定されると、厚生労働省の研究班が公表した。とくにコントロールが難しい1型糖尿病を、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」として定義。「こうした患者を支援する適切な対応が望まれる」と強調している。
厚生労働省の研究班による「1型糖尿病の実態調査、客観的診断基準、日常生活・社会生活に着目した重症度評価の作成に関する研究」(代表者:田嶼尚子・東京慈恵会医科大学)では、2014年から4年間にわたって、1型糖尿病の実態調査などを続けてきた。 研究班はこのほど、日本の1型糖尿病の患者数の推計など公表した。1型糖尿病のなかでもとくにコントロールが難しく、身体的にも社会的にも対応に格別の配慮が必要な1型糖尿病を、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」として定義。「1型糖尿病患者の健康が損なわれるのを防ぐことが重要」と強調している。
日本の1型糖尿病の患者数は10〜14万人
1型糖尿病を発症した場合、医療機関には届け出の義務が課されておらず、全国の患者数を把握することは難しい。研究班はさまざまな調査から推計値を算出した。
研究班による調査では、2017年に1型糖尿病で医療機関を受療した全国の患者数の推計は、約11万5,000人(男性5万1,000人、女性6万4,000人)に上る。1型糖尿病で受療している患者数(全患者数)を全人口で割ると、有病率は約0.09%(人口10万人あたり約90人)となる。
また、同研究班のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いた推計では、1型糖尿病の患者数は約14万1,000人、有病率では約0.11%。
厚生労働省の「2014年患者調査」によると、1型糖尿病(インスリン依存性糖尿病「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」とは
研究班は、1型糖尿病のなかでもとくにコントロールが難しく、身体的にも社会的にも対応に格別の配慮が必要な1型糖尿病を、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」として定義。「診断に応じて適切な対応することが望ましい」と強調している。
研究班は、グルカゴン負荷試験で内因性インスリン分泌能が詳細に解析された1型糖尿病患者139例を対象に、高血糖・低血糖・血糖変動などの観点から見た重症度指標に影響する各種臨床指標を解析。その結果、内因性インスリン分泌能(Cペプチド)が、1型糖尿病の重症度指標と相関する指標であることが明らかになった。
Cペプチドは、インスリンがつくられる途中にできる物質で、インスリンとほぼ同じ割合で作られる。Cペプチドの排泄量を調べると、どのくらいインスリンが分泌されたのかが分かる。空腹時の血中Cペプチドを測定する検査と、24時間尿をためてCペプチド量を測る検査があり、前者が0.6ng/mL、後者が20μg/日以下であればインスリン依存状態の目安になる。
研究班によると、空腹時あるいはグルカゴン負荷後にCペプチドが0.1ng/mL未満であると、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」とされる。
小児期発症の1型糖尿病など、完全にインスリン分泌が枯渇した糖尿病患者は、生涯にわたり強化インスリン治療を行う必要がある。「こうした患者を支援する適切な対応が望まれる」と指摘している。
高血糖や低血糖を防ぎながら合併症を阻止
1型糖尿病患者は社会的・経済的に大きな負担を強いられている
日本には「小児慢性特定疾患治療研究事業」があり、18歳未満で発症した1型糖尿病患者は、家庭の医療費の負担を軽減ために、医療費の自己負担分が補助される。その公益性と福祉事業としての価値は高く評価されている。
一方で、現行の制度では、治療費の公的助成を受けられるのは20歳未満までで、それ以降は通常の保険診療に切り替わる。このため、成人した1型糖尿病患者は社会的・経済的に大きな負担を強いられるようになる。
小児期発症の1型糖尿病の予後は、急速に改善してきており、成長してからも合併症が起こらず、元気に生活している1型糖尿病患者は多い。しかし、「1型糖尿病の疫学と生活実態に関する調査研究」(代表者:田嶼尚子)の調査では、医療の進歩にともない高騰する医療費のために、経済的に困窮し適切な治療を受けられないと考えている患者が28%もいることが示された。
新しいインスリン製剤の登場や血糖測定器の進歩、インスリンポンプ療法(CSII)や持続グルコース測定(CGM)など、医療の進歩は1型糖尿病患者の血糖コントロールと予後を大きく改善している。
しかし、同時に医療費の増大ももたらしている。1997年と2015年を比較した調査では、医療費の家計に占める割合について、5%未満は48.4%から34.2%に低下し、20%以上は6.9%から10.1%に増加した。世帯収入に対する医療費の割合が10%を超えている家庭も30%を超えている。
その結果、医療費負担を減らすために、「血糖測定を減らす」「受診回数を減らす」「インスリン量を減らす」「CSIIができない」という患者もいるという。いずれも1型糖尿病治療に悪影響を与える。
1型糖尿病は現在の医学では治癒が望めないために医療費の支払いは生涯続く。そのため1型糖尿病患者の多くは、生涯にわたる公的支援制度の設立を希望している。研究班は「1型糖尿病患者の健康が損なわれるのを防ぐことが重要」と強調している。
1型糖尿病の実態調査、客観的診断基準、日常生活・社会生活に着目した重症度評価の作成に関する研究1型糖尿病の疫学と生活実態に関する調査研究
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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