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2023年06月27日

簡単にポンプ療法を行える「バイオニック膵臓」を1型糖尿病患者向けに承認 自動化をさらに促進 FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は、インスリン必要量を自動的に判断するアルゴリズムとインスリンポンプ、持続血糖モニター(CGM)を組合せた新しいシステムを、6歳以上の1型糖尿病患者向けに承認した。

 この新しい自動インスリン投与(AID)システムは、次世代技術を使用した「バイオニック膵臓」とも呼ばれるクローズドループインスリン注入システム。

 「バイオニック膵臓のような新しいデバイスの登場により、血糖値の管理にともなう障害や面倒なことを減らし、最小限の入力で血糖値を調整できるようになります。1型糖尿病患者さんが、最大限に健康的な生活をおくることに集中できるようになると期待しています」と、研究者は述べている。

もっとも簡単にポンプ療法を行える「バイオニック膵臓」を開発

 米国食品医薬品局(FDA)は、インスリン必要量を自動的に判断するアルゴリズムとインスリンポンプ、持続血糖モニター(CGM)を組合せた新しいシステムを、6歳以上の1型糖尿病患者向けに承認した。

 この新しい自動インスリン投与(AID)システムは、次世代技術を使用した「バイオニック膵臓」とも呼ばれるクローズドループインスリン注入システム。

 アルゴリズムを使用して、CGMで読みとった血糖値をもとに、適切なインスリン投与量を自動的に決めて、インスリンポンプがインスリンを持続的に注入する。

 初期設定に必要な情報は体重のみで、食事時の追加インスリンの設定の必要もない。食事による糖負荷に対する追加インスリンの必要量について、学習により精度を向上させる機能を備えている。

 従来のポンプ療法で求められているような、医師の助けを借りながらインスリンの設定や変数を手動で入れる必要はなく、これまで開発されてきたAIDシステムのなかで、もっとも簡単にポンプ療法を行えるとしている。

FDAが承認した「バイオニック膵臓」

インスリン投与量の100%を自動的に決定し投与する、はじめての全自動インスリン投与システムとしている
出典:ボストン大学、2023年

1型糖尿病とともに生きる人々を負担から開放したい

 この「バイオニック膵臓」は、20年前に米ボストン大学の生体医工学の研究室で発明された。開発したエド ダミアーノ教授は、自身の子供が生後11ヵ月で1型糖尿病と診断されており、糖尿病の治療の負担を軽減するために貢献したいと願っていたという。

 ダミアーノ教授とそのパートナーは、子供の幼少期のほとんどの期間に、夜中に数時間おきに起きて子供の血糖値をチェックし、血糖値を管理するためのインスリン注射や、低血糖に対策するためにジュースを与えなければならなかった。

 「バイオニック膵臓」を利用できるようになれば、1型糖尿病の子供をもつ保護者は、そうした負担から開放されることになるとしている。

 バイオニック膵臓を使用した試験では、1型糖尿病患者の標準的な治療法に比べ、血糖値を正常範囲内に維持するのにより効果的であることが示された。

 この試験は、米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所(NIDDK)の資金提供を受け実施され、その成果は医学誌「ニューイングランド ジャーナル オブ メディシン」に発表された。

 CGMを使用して血糖値を追跡して読みとり、それをもとにインスリンポンプにより必要なインスリンを自動的に投与するもので、従来の1日に複数回のインスリン自己注射に代わるものとしている。

カーボカウントを大幅に簡略化 インスリン追加投与の操作の必要もなし

 1型糖尿病の治療では、「カーボカウント」が行われることがある。これは、食品の3大栄養素のうち、血糖値をもっとも上昇させるのは炭水化物(糖質)なので、食事に含まれる糖質量を見積り、それをもとに必要なインスリン量を計算するもの。

 このバイオニック膵臓を使用すると、カーボカウントは大幅に簡略化され、ユーザーは炭水化物量を「少ない・普通・多い」の3種類から選んで入力するだけで済むようになるという。高血糖を補正するための追加のインスリン投与の操作をする必要もない。

 バイオニック膵臓は、与えられたその情報とその後の血糖変動などの情報をともに学習を重ねていき、利用している患者に適した追加インスリン必要量の予測精度を高めていくとしている。

 「1型糖尿病の治療では、血糖値を厳密に管理することが重要です。将来に、目・神経・腎臓・心血管などの合併症を防ぐために、良好な血糖管理は最善の方法になります」と、NIDDKの糖尿病技術プログラムのディレクターであるギレルモ アレアザ ルビン氏は言う。

 「バイオニック膵臓の技術により、1型糖尿病の日常管理で、これまでにない簡便さを提供できるようになり、生活の質の向上に貢献できると期待しています」としている。

6歳~79歳の1型糖尿病患者326人が試験に参加

 このバイオニック膵臓の13週間の臨床試験は、全米の16の施設で実施され、インスリン製剤を1年以上使用している6歳~79歳の1型糖尿病326人が参加した。

 バイオニック膵臓を使用するグループと、標準的なインスリン治療を行う対照グループにランダムに割り当て比較したところ、バイオニック膵臓を使用したグループでは、血糖管理の指標となるHbA1c7.9%から7.3%に改善したが、対照グループでは変化はなかった。

 さらに、バイオニック膵臓を使用したグループでは、血糖値が目標範囲内におさまった時間が11%増え、1日に約2.5時間になった。

 これらの結果は、小児や若者、成人の参加者で同様であり、血糖コントロールの改善は、研究開始時に血糖値が高かった患者でもっとも大きかった。

 インスリン治療で深刻な課題になっているものに低血糖がある。血糖値が54mg/dL未満の低血糖の頻度は2つのグループ間で差がなく、重度の低血糖の頻度も差は出なかった。

糖尿病とともに生きる人々の負担を軽減したい

 「この新しいバイオニック膵臓は、安全に血糖管理を改善できることが示されました。これまで使っていたデバイスよりも入力や操作がはるかに少なく、簡便に治療を行えるようになることは、糖尿病とともに生きる小児や成人の患者、医療従事者にとって、大きな意味をもちます」と、試験を実施したボストンのマサチューセッツ総合病院およびハーバード大学医学部のスティーブン ラッセル氏は言う。

 「糖尿病管理を改善するために、先進技術の開発に対するNIDDKの数十年にわたる投資は、新たな希望をもてるマイルストーンに到達しました。糖尿病とともに生きる人々に、引き続き大きな利益をもたらすことを願っています」と、NIDDKのディレクターのグリフィン ロジャース氏は述べている。

 「私たちは、より良い1型糖尿病の治療法の実現を、模索し続けています。バイオニック膵臓のような新しいデバイスの登場により、血糖値の管理にともなう障害や面倒なことを減らし、最大限に健康的な生活をおくることに集中できるようになることを期待しています」としている。

FDA Clears Bionic Pancreas Developed in BU Lab for People with Type 1 Diabetes (ボストン大学 2023年5月22日)
FDA Clears New Insulin Pump and Algorithm-Based Software to Support Enhanced Automatic Insulin Delivery (米国食品医薬品局 2023年5月19日)
Bionic pancreas improves type 1 diabetes management compared to standard insulin delivery methods (米国国立衛生研究所 2022年9月28日)
Multicenter, Randomized Trial of a Bionic Pancreas in Type 1 Diabetes: Bionic Pancreas Research Group (ニューイングランド ジャーナル オブ メディシン 2022年9月29日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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