ニュース
2023年04月13日
週に1回注射のインスリンが糖尿病治療を変える? 注射回数を減らし負担を軽減できると期待
- キーワード
- 1型糖尿病 インスリンポンプ/CGM 医薬品/インスリン

週1回の注射で治療ができる、これまでにない超長時間作用型の新しいインスリン製剤の開発が進められている。
インスリン製剤は進歩しており、患者の病態や治療に合わせて、作用のあらわれる時間や持続する時間などの異なるさまざまなタイプのインスリン製剤が使われている。
新たに開発が進められている週1回のインスリン製剤は、注射の回数を減らすことで、より糖尿病患者の負担を少なくし、治療と患者の管理の利便性を高められると期待されている。
インスリン治療は進歩 さまざまなタイプのインスリン製剤を開発
カナダのトロント大学の研究チームがインスリンを発見し、糖尿病医療に革新的な変化がもたらされたのは1921年のこと。インスリンの製剤化に成功したのは、その翌年の1922年。そして1923年には世界ではじめてインスリン製剤の大量生産が開始された。 インスリンが発見されて100年以上が経過した現在では、世界中の多くの患者がインスリンの恩恵を受けている。インスリン製剤はめざましく進歩し、現在は患者の病態や治療に合わせて、作用のあらわれる時間や持続する時間などの異なるさまざまなタイプのインスリン製剤が使われている。注入器や注射針も改良が重ねられ、患者の負担を軽くし、痛みの少ないものが使われている。 2型糖尿病では、飲み薬をいくつか服用しても、血糖管理が改善しない患者は、インスリン治療が検討される。インスリンの分泌が減少したり、インスリンの働きが悪くなったとき、インスリンを注射して外から補う治療法がインスリン治療だ。インスリン治療を適切な時期に開始できなくて、高血糖が長く放置されていると、それだけ糖尿病合併症が進行するスクは高くなる。 一方で、インスリン治療を開始するのをためらう患者は、いまだに少なくない。インスリン導入時の心理的障壁について調査した『DAWN JAPAN』によると、インスリン治療に対して、「低血糖が怖い」「家族に心配をかける」「他人に知られるのが嫌」「人前で注射を打つのは恥ずかしい」といった不安感を抱いている患者が少なくないことが示された。 そうした不安は誤解によるものも多く、実際に、インスリン治療を開始した患者のおよそ半数は、「もっと早くインスリン治療をはじめれば良かった」と感じているという結果も出ている。週1回の注射で効果のあるインスリン製剤を開発中

1型糖尿病患者と2型糖尿病患者を対象に臨床試験を実施
週に1回の投与で治療できる安全な基礎インスリン製剤の開発について、2つの臨床試験の結果が相次いで米国で発表された。 1つめは、米国・プエルトリコ・メキシコの44の医療機関で実施された第2相臨床試験で、成人の2型糖尿病患者399人が参加して実施された。研究成果は、「Lancet Diabetes & Endocrinology」に発表された。 新たに開発した週1回投与の基礎インスリン製剤の32週間の投与により、従来の持効型溶解インスリンに比べ、同等のHbA1c値の改善効果を得られることなどが示され、安全性にも差がないことも確かめられた。 2つめは、1型糖尿病患者265人を対象に、週1回投与の基礎インスリンと、従来の持効型溶解インスリンを比べた第2相臨床試験。研究成果は、「Diabetes Care」に発表された。 週1回投与の基礎インスリン製剤の26週間の投与により、従来の持効型溶解インスリンに比べ、同等のHbA1c値の改善効果を得られ、血糖値が目標範囲内(70~180mg/dL)におさまった時間の割合(TIR)も同等だった。 空腹時血糖値(FG)は、週1回投与のインスリン製剤でやや高かったものの、24時間の低血糖の頻度などは有意差がなく、安全性に差がないことが確かめられた。 世界ではこれ以外にも、飲み薬として服用できる経口インスリンや、価格をより下げてより使いやすくしたインスリン製剤などの開発も行われている。近い将来に、より利便性を高めたインスリンを使えるようになることが期待される。 Safety and efficacy of once-weekly basal insulin Fc in people with type 2 diabetes previously treated with basal insulin: a multicentre, open-label, randomised, phase 2 study (Lancet Diabetes & Endocrinology 2023年3月)Novel Once-Weekly Basal Insulin Fc Achieved Similar Glycemic Control With a Safety Profile Comparable to Insulin Degludec in Patients With Type 1 Diabetes (Diabetes Care 2023年3月15日) 関連情報
2型糖尿病の治療実態調査「DAWN JAPAN」調査 患者の半数が「インスリンをもっと早く始めれば良かった」
CGMとインスリンポンプを組合せた「人工膵臓」 必要とするすべての糖尿病患者に提供するべき
1型糖尿病の発症を遅らせる薬を開発 米FDAが承認 新たな治療法として期待
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
医薬品/インスリンの関連記事
- 世界初の週1回投与の持効型溶解インスリン製剤 注射回数を減らし糖尿病患者の負担を軽減
- インスリン注射の「飲み薬化」を目指すプロジェクトが進行中!ファルストマと慶応大学の共同研究による挑戦[PR]
- 水を飲むと糖尿病や肥満が改善 水を飲む習慣は健康的 高カロリーの飲みものを水に置き換え
- 【1型糖尿病の最新情報】幹細胞由来の膵島細胞を移植する治療法の開発 危険な低血糖を防ぐ新しい方法も
- 糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬が腎臓病のリスクを大幅に低下 認知症も減少
- JADEC(日本糖尿病協会)の活動 「さかえ」がWebページで閲覧できるなど「最新のお知らせ」からご紹介
- 【世界糖尿病デー】インスリン治療を続けて50年以上 受賞者を発表 丸の内では啓発イベントも
- 【インフルエンザ流行に備えて】糖尿病の人は予防のために「ワクチン接種」を受けることを推奨
- 糖尿病治療薬のメトホルミンが新型コロナの後遺症リスクを軽減 発症や死亡のリスクが21%減少
- 【1型糖尿病の最新情報】iPS細胞から作った膵島細胞を移植 日本でも治験を開始 海外には成功例も