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2023年04月14日

コーヒーが糖尿病リスクを低下 メカニズムを解明 1日に何杯のコーヒーを飲むと良い?

 コーヒーを飲むだけで、2型糖尿病のリスクが低下するという研究が発表された。

 コーヒーを飲んでいる人は、インスリン抵抗性が低下し、体の炎症のマーカーも低下しており、レプチンやアディポネクチンといった生理活性物質にも良い影響がみられるという。

 コーヒーを飲む習慣のある人は、体脂肪量と2型糖尿病のリスクが低い傾向があるという研究も発表された。

コーヒーを飲むと糖尿病リスクが低下

 コーヒーを1日に1杯多く飲むだけで、2型糖尿病のリスクが4~6%低下するという調査結果を、オランダのロッテルダム大学医療センターなどが発表した。

 これまでも、コーヒーを飲む習慣が、糖尿病リスク低下と関連していることを示した研究が発表されている。今回の研究は、それを裏付けるものだ。研究成果は、「Clinical Nutrition」に掲載された。

 コーヒーにはカフェインが含まれる。欧州食品安全機関(EFSA)は、コーヒーを1日に3~5杯飲む習慣は、ほとんどの成人にとって安全としている。3~5杯のコーヒーに、カフェインはおよそ400mg含まれる。

 ただし、妊娠中や授乳中の女性などの場合は、カフェインの摂取量を1日に200mgに抑えた方が良いとしている。この研究は、コーヒー科学情報研究所(ISIC)の支援を受けて行われたもの。

コーヒーが糖尿病リスクを低下​​させるメカニズムを解明

 研究グループは、「英国バイオバンク」に参加した14万5,368人と、「ロッテルダム研究」に参加した7,111人のそれぞれのデータを解析した。

 英国バイオバンクは、40~69歳の中高年約50万人を対象に追跡して調査している大規模研究。血液やDNAサンプル、生活習慣や身体活動レベルなどの関連を調べている。ロッテルダム研究は、オランダで1990年代にはじめられた前向きコホート研究。

 その結果、コーヒーを飲む量を1日1杯増やす習慣は、2型糖尿病の発症リスクが4~6%低下することと関連しているが明らかになった。

 さらに、コーヒーを飲んでいる人は、インスリン抵抗性が低下し、CRPが低下(炎症の低下)、レプチンが低下、アディポネクチン濃度が上昇している傾向がみられた。

 つまり、コーヒーを飲む習慣は、体で起きている炎症を抑えることと関連していることが示された。

コーヒーを飲んでいる人は体の炎症が少ない

 とくに、コーヒー豆を挽いて淹れるドリップコーヒーやエスプレッソコーヒーは、CRPの低下と強く関連していた。

 C反応性タンパク質(CRP)などの炎症バイオマーカー検査は、体で起きている炎症を調べる方法になる。

 2型糖尿病は肥満をともなうことが多く、脂肪組織や肝臓などの細胞で慢性的な炎症反応が生じていることが多い。

 血糖値を下げるホルモンであるインスリンが働きにくくなるインスリン抵抗性にも、炎症は関連している。

 インスリンを分泌する膵臓のβ細胞でも、炎症反応は起きていて、それがインスリン分泌の低下につながっているという報告もある。

アディポネクチンやレプチンにも関わる

 今回の研究では、コーヒーを飲む習慣は、アディポネクチン濃度の上昇や、レプチンの低下などとも関連していることも示された。

 アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌される生理活性物質で、血糖や脂質の代謝の調節にも関連しており、抗炎症作用やインスリンの働きを高める作用などもあるとみられている。

 またレプチンは、食欲をコントロールするホルモンで、エネルギー代謝の調節などに関わっている。

 「これまでの研究でも、コーヒーの摂取量が多いほど、2型糖尿病の発症リスクが低下することが示されています」と、オランダのエラスムス大学ロッテルダム医療センターの栄養疫学のトゥルーディ フォールトマン氏は述べている。

 「その根本的なメカニズムは不明でしたが、今回の研究では、コーヒーを飲む習慣が、体の炎症バイオマーカーの低下と関連していることが示されました。2型糖尿病の一部は、炎症性疾患とみられているので、このことは重要です」としている。

コーヒーを飲んでいる人は体脂肪や糖尿病のリスクが低い

 コーヒーを飲む習慣があり、血中のカフェイン濃度が高い人は、体脂肪量と2型糖尿病のリスクが低い傾向があるという別の研究を、スウェーデンのカロリンスカ研究所も発表した。

 「カフェインが入っていて、カロリーが含まれないコーヒーには、肥満と2型糖尿病のリスクを下げる潜在的なメリットがある可能性があります」と、同研究所のスザンナ ラーソン氏は言う。研究成果は、「BMJ Medicine」に発表された。

 研究グループは今回、メンデルランダム化法を使用して、血中カフェインレベルの上昇が、体脂肪に及ぼす影響と、2型糖尿病や、心拍リズム、心血管疾患(心房細動、冠動脈疾患、脳卒中、心不全、不整脈など)の長期的なリスクにどう影響するかを調べた。

 研究グループが今回採用したメンデルランダム化法は、ゲノム情報で予測した形質(この研究ではカフェインの血中濃度)と疾病リスク(この研究では肥満や2型糖尿病)との関連を推計することで、従来の観察研究で問題となる交絡に対処しようとする方法。

コーヒーを飲むと体のエネルギー消費量が増える?

 その結果、血中カフェイン濃度が高い人ほど、体格指数(BMI)が低く、体脂肪が少ない傾向がみられた。さらに、血中カフェイン濃度が高いほど、2型糖尿病のリスクも低いことと関連していた。

 2型糖尿病のリスクに対するカフェインの効果のほぼ半分(43%)は、体重減少によって説明できるという。

 「カフェインは、体の新陳代謝と脂肪燃焼を促し、食欲を低下させることが知られています。カフェインを1日に100mg摂取すると、エネルギー消費量が1日に約100kcal増えると推定されます」と、ラーソン氏は説明する。

 コーヒー1杯に平均して、70~150mgのカフェインが含まれている。

 研究グループは今回、主に欧州で実施されている6件のコホート研究に参加した1万人近くの人を対象に、体のカフェイン代謝速度に関連する遺伝子変異であるCYP1A2とAHR遺伝子の2つについて調べた。

 カフェインの代謝が遅いことに関連する遺伝子変異をもつ人は、コーヒーを飲む量が少なくなる傾向があることから、血中カフェイン濃度を遺伝的に予測した。

 なお、「カフェインを含むカロリーゼロの飲料が、肥満と2型糖尿病のリスクを軽減する役割を果たしているかどうかを確かめるためには、ランダム化比較試験を実施する必要があります」と付け加えている。

New research reveals a potential mechanism for how coffee may reduce the risk of type 2 diabetes (コーヒー科学情報研究所 2023年3月22日)
C-reactive protein partially mediates the inverse association between coffee consumption and risk of type 2 diabetes: The UK Biobank and the Rotterdam study cohorts (Clinical Nutrition 2023年3月7日)
Scientific Opinion on the safety of caffeine (欧州食品安全機関 2015年5月27日)
High blood caffeine level might curb body fat and type 2 diabetes risk (BMJ 2023年3月14日)
Appraisal of the causal effect of plasma caffeine on adiposity, type 2 diabetes, and cardiovascular disease: two sample mendelian randomisation study (BMJ Medicine 2023年3月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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