ニュース
2023年03月30日
CGMとポンプを組合わせた「人工膵臓」は1型糖尿病の6歳未満の小児患者にも有用 血糖管理を改善
CGMとインスリンポンプを組合わせた「人工膵臓」は、1型糖尿病の2~6歳の小児患者にも有用という研究が発表された。「人工膵臓」により、高血糖や低血糖を減らしながら、小児患者の血糖管理を改善できるという。
「人工膵臓により、血糖値は大幅に改善し、小児の患者さんにとって安全であることも確かめられました。とくに、夜間の低血糖を含む、患者さんとそのご家族の絶え間ない血糖値の不安を減らすことは重要です」と、研究者は述べている。
1型糖尿病の小児患者にも「人工膵臓」は有用
CGMとインスリンポンプを組合わせた「人工膵臓」は、1型糖尿病の2~6歳の小児患者にも有用という研究が発表された。「人工膵臓」により、高血糖や低血糖を減らしながら、小児患者の血糖管理を改善できるという。 6歳未満の1型糖尿病の小児患者は、食事摂取量や身体活動量に合わせて、インスリン投与量を繊細に調整することが必要になる。 また、養育者にとっては、朝起きてから寝るまで、子供が中心の生活となり、毎日が手一杯となり、育児ストレスもたまりやすい。1型糖尿病であると、子供が低血糖を訴えることもあり、血糖管理が乱れやすく、さらに多くの困難がある。CGMとインスリンポンプを組合わせた「人工膵臓」
そこで、小児患者と養育者の負担を減らすため、CGMとインスリンポンプを組合わせた「人工膵臓」が開発されている。CGM(持続血糖モニター)は、連続して皮下の間質液のグルコース値を測定し、血糖値を推定しその変動をモニタリングできる最新のデバイス。 CGMにインスリンポンプを組合わせて連動させたのが「ハイブリッド型クローズドループ(HCL)」で、「人工膵臓」とも呼ばれている。血糖値の変動を補正するのに必要なインスリン量を、アルゴリズムによって適切に判定し、自動的・持続的に投与するというもの。 成人を対象とした研究では、「人工膵臓」が血糖管理を改善することが多く示されているが、6歳未満の小児の1型糖尿病患者では、有効性や安全性などについては十分なエビデンスがなかった。 そこで研究グループは、6歳未満の1型糖尿病の小児患者にとっても、「人工膵臓」が有用であることを確かめる試験を実施した。 研究は、米国のバージニア大学医療システムやノースウェスタン大学、コロラド大学などの研究グループによるもので、米国国立衛生研究所(NIH)の国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)の支援を得て実施された。研究成果は、医学誌「New England Journal of Medicine」に掲載されている。「人工膵臓」により血糖値が目標範囲内におさまり血糖管理も改善
研究で使用された「人工膵臓」には、米国の医療機器メーカーであるTandem Diabetes Careによって開発された「Control-IQシステム」が搭載されていた。これは、CGMで得られた血糖変動の値に合わせて、必要なインスリン量を自動的に調整して投与するもの。また、研究で使用されたCGMデバイスはDexcomが提供した。 研究に参加した1型糖尿病の小児患者を、「人工膵臓」を使用する群(68人)と、従来通りのインスリンポンプや頻回インスリン注射により血糖管理を行う群(34人)に割り付け、治療を13週間続けてもらった。 その結果、「人工膵臓」を使用した小児患者は、従来通りの治療を受けた患者に比べ、血糖値が目標範囲内(70~180mg/dL)におさまっていた時間が、1日におよそ3時間長くなった。 人工膵臓の使用により、目標範囲内におさまっている時間は、平均して12%長くなり、とくに夜の10時から朝の6時までの夜間の時間帯では、18%長くなった。夜間や早朝の低血糖は、患者にも養育者にも分かりにくいことが多く、血糖の上下動を少なくするのは重要だ。 1~2ヵ月の血糖の平均をあらわすHbA1cも、「人工膵臓」群では7.0%になり、従来治療群の7.5%より良好だった。平均血糖値も、「人工膵臓」群では155mg/dLになり、従来治療群の174mg/dLよりも改善した。高血糖になっていた時間も、「人工膵臓」群では減少した。1型糖尿病とともに生きる人々の人生を変える可能性のある新しい技術
Artificial pancreas controls blood sugar in young children with type 1 diabetes (米国国立衛生研究所 2023年3月28日)
Trial of Hybrid Closed-Loop Control in Young Children with Type 1 Diabetes (New England Journal of Medicine 2023年3月16日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
1型糖尿病の関連記事
- 「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」開催報告を公開 医療従事者と患者が活発に対話 日本糖尿病学会
- インスリンを飲み薬に 「経口インスリン」の開発が前進 糖尿病の人の負担を減らすために
- 1型糖尿病の人の4人に1人が摂食障害? 注射のスキップなど 若年だけでなく成人もケアが必要
- 1型糖尿病の根治を目指す「バイオ⼈⼯膵島移植」 研究を支援し「サイエンスフォーラム」も開催 ⽇本IDDMネットワーク
- 1型糖尿病患者に「CGM+インスリンポンプ」を提供 必要とする人が使えるように 英国で5ヵ年戦略を開始
- 【座談会】先生たちのSAP体験談2 インスリンポンプの新機能を使って
- 日本IDDMネットワークが「1型糖尿病医療費助成事業」を開始 25歳までの成人の1型糖尿病患者の医療費を助成
- 1型糖尿病の人が「糖質制限ダイエット」に取り組むと血糖値が改善 極端な糖質制限は勧められない
- 1型糖尿病の新しい治療法を開発 インスリンを産生する膵臓のβ細胞を保護
- 1型糖尿病の小児患者のインスリン分泌能の低下を抑制 インスリンを産生するβ細胞を保護