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2021年03月19日
1型糖尿病を幹細胞で根治する 幹細胞で膵島細胞を再生 世界初の治験を開始

米国のバイオテクノロジー企業が、ヒト幹細胞による膵島細胞療法である「VX-880」を開発し、無自覚性低血糖があり重症低血糖リスクの高い1型糖尿病患者を対象に、臨床試験を開始したと発表した。
インスリンを産生する膵島細胞を幹細胞により再生し、血糖コントロールの能力を復活させる治療法の開発を目指している。
「VX-880」は、米食品医薬品局(FDA)からファストトラック(優先承認審査制度)の指定を受けており、審査が迅速化されることが期待されている。
インスリンを産生する膵島細胞を幹細胞により再生し、血糖コントロールの能力を復活させる治療法の開発を目指している。
「VX-880」は、米食品医薬品局(FDA)からファストトラック(優先承認審査制度)の指定を受けており、審査が迅速化されることが期待されている。
1型糖尿病を根治する新たな治療法を開発
米国のバイオテクノロジー企業であるVertex Pharmaceuticals社が開発している「VX-880」は、完全に分化したインスリン産生膵島細胞を利用したはじめての幹細胞由来療法で、1型糖尿病を根治する新たな治療法として治験が進められている。
「再生医療」は、病気などで失われた臓器や組織をふたたび作り、失われた機能を回復させる医療のこと。再生医療では「幹細胞」という細胞が重要な役割を果たしている。ES細胞やiPS細胞も幹細胞の一種だ。
幹細胞の特徴は、他の種類の細胞を生み出すことができるということ。同社が開発したのは、インスリンを分泌する膵臓の膵島細胞を、幹細胞から作り出すという治療法。
作った膵島を移植により補充し、失われたインスリン分泌を復活させることが、糖尿病の根治療法になると期待されている。幹細胞の研究は現在、科学の中でももっとも注目を集めている分野のひとつだ。
現在の治療法では血糖コントロールが難しい患者も
1型糖尿病は、インスリンを産生する膵臓のβ細胞が攻撃・破壊されることで発症する疾患。生命を維持するために、現在の医療では、生涯にわたり毎日4~5回の注射、またはインスリンポンプによるインスリン補充が必要となる。
糖尿病の大半を占め生活習慣病と言われる2型糖尿病と異なり、1型糖尿病は主に自己免疫によって発症すると考えられている。1型糖尿病と2型糖尿病とでは、原因や治療が大きく異なる。
インスリン注射やインスリンポンプによる治療は進歩しているが、患者によっては、こうしたインスリン送達システムのみで十分な血糖コントロールを得るのが難しい場合がある。
また、インスリン、食事療法、運動など、血糖値に影響を与えるさまざまな要因のバランスをとるのが難しいと、低血糖を発症することがある。
1型糖尿病の管理では現在、インスリン以外の治療の選択肢が限られている。ヒト幹細胞由来の膵島細胞療法が実現すれば、1型糖尿病の新たな治療法になると期待されている。
ファストトラックの指定を受け米国で治験を開始
「VX-880」はヒト幹細胞由来の膵島細胞による治療で、インスリンを産生する膵島細胞の機能と、血糖値の調節能力を回復させるもの。臨床試験では、完全に分化した機能的な膵島細胞の注入するとともに、免疫抑制療法を併用して、移植した膵島細胞を免疫拒絶反応から保護する。
同社は、「VX-880」が米食品医薬品局(FDA)からファストトラック(優先承認審査制度)の指定を受けたと発表した。「VX-880」は、ファストトラックの承認を得た唯一の膵島置換療法だとしている。
同社はさらに、無自覚性低血糖があり重症低血糖リスクの高い1型糖尿病の患者を対象に、「VX-880」を適用する第1/2相臨床試験を開始した。「VX-880」のさまざまな用量の安全性と有効性を評価するための、連続した複数のパートからなる試験であり、約17人の患者が登録されている。
1型糖尿病の細胞療法に変革をもたらす可能性
「この革新的な治療法は、ハーバード大学幹細胞研究所のダグラス メルトン教授らの研究室で生まれ、Semma Therapeuticsの研究チームにより開発が加速し、現在は臨床試験を開始する段階に発展しました」と、Vertex Pharmaceuticalsの細胞遺伝子治療部のバスティアン サンナー氏は言う。
「これは完全に分化し機能するインスリン分泌膵島を生成する唯一のアプローチとなります。FDAのファストトラック指定を受けたことで、審査が迅速化されます。1型糖尿病の深刻な病状を治療し、アンメット メディカル ニーズ(有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ)を満たすことを期待しています」としている。
「膵島移植の実施数は増えてはいるものの、依然として膵島のドナー不足は深刻で、移植によりインスリン依存から脱却できる1型糖尿病患者の数は限られています。VX-880が実現すれば、1型糖尿病の細胞療法に変革をもたらす可能性があります」と、糖尿病研究所(DRI)およびマイアミ大学医学部細胞移植センターのカミーロ リコルディ教授は述べている。
Vertex Pharmaceuticals Incorporated
Giant leap against diabetes(ハーバード大学 2014年10月9日)
A Safety, Tolerability, and Efficacy Study of VX-880 in Participants With Type 1 Diabetes(clinicaltrials.gov)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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