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2020年10月05日

糖尿病の「低血糖」に対処 グルカゴンを鼻粘膜から吸収 簡便に投与できる

 日本イーライリリーは10月2日、「低血糖時の救急処置」を効能・効果として、低血糖時救急治療剤「バクスミー点鼻粉末剤3mg」(一般名:グルカゴン)を発売した。
低血糖が起きたらすぐに対処が必要
 低血糖とは、血糖値が正常範囲以下まで下がった状態のことをいう。動悸、発汗、眼のかすみ、脱力、眠気、けいれん、手足の震え、意識レベルの低下などの症状があらわれる。血糖値が70mg/dL未満に低下した場合は、低血糖への対処が必要になる。

 症状が起きた時にきちんと対処すれば回復するが、急に血糖値が低下して対処が間に合わない場合や、自覚症状なしに血糖値の低下が進行する場合などは、自己のみでは対処できない重症低血糖におちいることがある。

 重症低血糖に陥った場合、大脳機能が低下して昏睡やけいれん、不可逆性の脳障害などを起こす可能性がある。

 低血糖の対処法として、ブドウ糖(錠剤やゼリー状になったものがある)や砂糖を摂取したり、コーラなどの糖分を含む飲料を飲む方法がある。

 さらには、血糖を上昇させるホルモンであるグルカゴンを注射する方法がある。グルカゴンを筋肉注射すると、速やかに血糖を上げることができる。

 しかし、従来のグルカゴン注射は、インスリン注射とは手技が異なり、家族や看護者はあらかじめ医療機関で指導を受け、この注射の仕方を覚えなければならなかった。また、グルカゴン製剤の取り扱いも難しい点があった。

関連情報
グルカゴンを鼻粘膜から吸収 緊急時にすばやく対処
バクスミー点鼻粉末剤3mg
 この点を解決したのが「バクスミー」だ。この製剤は注射剤以外の低血糖治療剤としては初の選択肢であるグルカゴン点鼻粉末剤。室温(1~30℃)で持ち運びができる1回使い切りの製剤で、家族などの看護者が投与することにより重症低血糖の救急処置を行うことができる。

 「バクスミー」は鼻粘膜から吸収されるため、重症低血糖におちいり意識を失っている患者に対しても使用できる。また、薬剤は噴霧器に充填されており、点鼻容器の先端を鼻に入れ、注入ボタンを押すことで緊急時に迅速かつ簡便に投与できる。

 「バクスミー」の迅速性および確実性は、糖尿病患者の介護者20例(1型糖尿病患者および2型糖尿病患者の2親等以内の同居家族各10例)を対象とした国内単一施設非盲検部分的クロスオーバー模擬投与試験にて検証された。

 「バクスミー」3mg経鼻投与およびグルカゴン注射剤1mg筋肉内投与、双方の使用方法の説明を受けた看護者(家族など)がマネキンへの模擬投与を行い、その成功率を確認したところ、同剤を模擬投与した89.5%が全量投与に成功した*。また、同剤の模擬投与完了までの平均時間は24秒だった**。

 また、「バクスミー」は、日本デザイン振興会が主催する「2020年度グッドデザイン賞」を受賞した。今回の受賞は、医学的・社会的課題に対して同剤の簡便なデザインが評価された結果。

 「迅速かつ簡便に投与ができるバクスミーをいざという時のために携帯していただくことで、多くの糖尿病患者さんとそのご家族に安心をご提供できると考えています」と、同社では述べている。

【低血糖の救急治療】バクスミー使ってみた

 低血糖時救急治療剤である「バクスミー」(グルカゴン点鼻粉末)について、綱島会厚生病院糖尿病センター(兵庫県姫路市)が、箱から開封して噴霧までの流れを解説したビデオを公開しました。同センター長で糖尿病専門医の野﨑晃先生のご厚意により転載いたしますので、ご覧ください。なお、医薬品や医療機器について、詳しくはかかりつけの医師や薬剤師にご相談ください。

2020年10月に発売のバクスミー点鼻を試しました。箱から開封して噴霧までの流れを紹介しています。オリンピックに向けて糖尿病治療中の海外の方が来られますし、ホテル関係者、救急隊員はもちろん、修学旅行の引率の先生方、フィットネススタジオのスタッフも是非知っておくべき処置薬です。災害時にも役立つでしょう。あなたの行動が患者さんを救います。ぜひ啓蒙に皆さんの力をお貸しください。
「糖尿病 情報共有チャンネル」より転載

バクスミー点鼻粉末剤3mg 患者向医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)

低血糖時の緊急処置のために(日本イーライリリー「知りたい!糖尿病」)
日本イーライリリー

* 成功の定義は「すべての必須手順を正確に完了」かつ「十分量のグルカゴン(点鼻グルカゴン製剤は100%、グルカゴン注射剤は90%以上)を投与」とした。
** 投与開始の合図から点鼻デバイスまたは注射針をマネキンから抜くまでの時間とし、投与開始の合図から15分以上経過した場合や介護者が投与を中止した場合は投与未完遂とした。
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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