ニュース

2020年10月01日

ヨーグルトを食べると糖尿病リスクが低下 間食をヨーグルトに置き換えるだけで効果

 ヨーグルトを食べると糖尿病リスクが低下するという研究が報告されている。ヨーグルトに含まれる「乳清タンパク」や「プロバイオティクス」に、多くの健康効果があることが分かってきた。
ヨーグルトを食べると糖尿病リスクが低下
 ヨーグルトを積極的に食べると、2型糖尿病のリスクを低下できるという研究がある。「食生活にヨーグルトを取り入れることには意味があります」と研究者は述べている。

 2型糖尿病は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが十分に分泌されなかったり、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」という状態に陥ることで発症する。

 ヨーグルトを食べることが、糖尿病の発症リスクにどう影響するかを調査したこの研究は、ハーバード公衆衛生大学院栄養学部のフランク フー教授らによるものだ。

 研究チームは、10万人以上を対象に調査を行った。参加者に健康状態についてのアンケート調査に回答してもらった。調査は2年ごとに行われ、追跡率は90%を超えた。

 その結果、ヨーグルトを毎日食べていると、2型糖尿病を発症するリスクが18%減少するという結果が得られた。なお、ヨーグルト以外の乳製品では、糖尿病リスクとのあいだに相関関係はみられなかった。
ヨーグルトを食べると不足しがちな栄養を補える
ヨーグルトの栄養成分
 ヨーグルトは安価で、人気の高い食品で、どこでも入手できるという利点がある。なぜヨーグルトが糖尿病のリスクを低下させるのか――。

 「ヨーグルトには、カルシウムやマグネシウム、ビタミンDなどの栄養素や、乳清タンパクなどの栄養成分が含まれます」と、フー教授は言う。

 このうち「乳清タンパク」は乳酸菌発酵液のことで、ヨーグルトやチーズを作るときにできる副産物だ。

 炭水化物の摂取前に乳清タンパクを摂取すると、インスリン分泌を刺激する消化管ホルモン(インクレチン)であるGLP-1の分泌が刺激され、食後の血糖値の上昇を抑えやすくなるという報告がある。

 「バランスの良くない食事を続けていると、こうした栄養は不足しがちになりますが、ヨーグルトを食べることで不足を補うことができます」と、フー教授は指摘している。

 また、ヨーグルトは体に良い影響を与える「プロバイオティクス」を含んでおり、整腸作用があるのに加え、腸内の有害物質の産生を抑え、血中コレステロールなどを改善する効果がある。

 ヨーグルトのこうした効果が、2型糖尿病のリスクを低下すると考えられている。ただし、どの成分に効果があるのかは分からないので、「今後、ランダム化された比較対照試験が必要となります」としている。
ヨーグルトや低脂肪の乳製品が糖尿病リスクを下げる
 英国のケンブリッジ大学の研究でもヨーグルトや低脂肪の乳製品を週に4~5回食べると、2型糖尿病のリスクを低下できることが示されている。

 研究チームは、男女3,500人を11年間追跡して調査し、食事と糖尿病の発症との関連を調べた。低脂肪の乳製品を種類別に調べたところ、ヨーグルトのみを食べていた人では、糖尿病リスクは28%低下したことが判明した。

 糖尿病のリスク低下との関連がみられたのは、乳製品の中でも低脂肪製品に限られており、牛乳や高脂肪のチーズなどでは糖尿病リスク低下の効果はみられなかった。

 「乳製品には体に良い成分が含まれています。今回の研究で、低脂肪のヨーグルトやチーズが、糖尿病の危険性を低下させると確かめられたのは喜ばしいことです。ただし、糖分を加えてあったり、脂肪分が多いと、そうした効果を期待できなくなるので注意が必要です」と、研究者は述べている。

 なお、間食として、高カロリーのポテトチップやスナックの代わりにヨーグルトを食べていた人では、糖尿病リスクは47%低下していた。「間食をヨーグルトに置き換えるだけで、糖尿病の発症リスクを下げることができます」とアドバイスしている。
ヨーグルトがうつ病や不安症状を緩和?
 ヨーグルトなどに含まれるビフィズス菌などの乳酸菌は「プロバイオティクス」と呼ばれている。「プロバイオティクス」を摂取することが、うつ病を緩和するのに役立つという研究も発表された。この研究は「BMJ Nutrition Prevention & Health」に発表された。

 脳と腸などの消化管のあいだには、「脳腸相関」と呼ばれる双方向の関係があり、「マイクロバイオーム」(腸内にいる細菌)が精神疾患の治療に役立つ可能性があると注目されている。

 英国のブライトンアンドサセックス医学校などの研究チームは、2003~2019年に発表された、うつ病や不安障害と「プレバイオティクス」との関連を調べた7件の研究を解析した。

 その結果、「プレバイオティクス」を摂取することで、不安症状の低下や改善、うつ病の改善などの効果を得られることが明らかになった。

 「プロバイオティクスは、炎症性腸疾患の場合のように、サイトカインなどの炎症性物質の産生を減らすのに役立つ可能性があります。また、ヨーグルトなどに含まれるトリプトファンなどのアミノ酸は、神経の活動の伝達に不可欠な神経伝達物質を作るのに役立ちます」と、研究者は指摘している。

 うつ病や不安障害のある人は、糖尿病などのインスリン産生障害や過敏性腸症候群など、他の疾患も抱えていることが多い。「プロバイオティクスが精神疾患の治療に役立つことを実証するには、まだデータが不足しています。さらなる研究が必要です」と、研究者は指摘している。

Yogurt may reduce type 2 diabetes risk(ハーバード公衆衛生大学院 2014年11月25日)
Dairy consumption and risk of type 2 diabetes: 3 cohorts of US adults and an updated meta-analysis(BMC Medicine 2014年11月25日)
Yoghurt cuts risk of type 2 diabetes(ケンブリッジ大学 2014年2月5日)
Dietary dairy product intake and incident type 2 diabetes: a prospective study using dietary data from a 7-day food diary(Diabetologia 2014年2月)
Probiotics alone or combined with prebiotics may help ease depression(BMJ 2020年7月6日)
Food & mood: a review of supplementary prebiotic and probiotic interventions in the treatment of anxiety and depression in adults (BMJ Nutrition Prevention & Health 2020年7月6日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲