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2020年08月18日

1型糖尿病ワクチンの試験が良好な結果に 自己免疫を抑える新しい治療法を開発

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1型糖尿病 医薬品/インスリン
 スウェーデンの創薬ベンチャーのDiamyd Medicalは、新たに開発した1型糖尿病ワクチン「Diamyd」の第2相試験で、良好な結果を得られたと発表した。
 1型糖尿病と診断された直後の患者に自己免疫を抑える治療を行い、残されたβ細胞が破壊されるのを防ぎ、内因性のインスリン分泌を保護し、1型糖尿病の進行を抑制する治療の実現を目指している。
β細胞が攻撃されるのを防ぐ免疫療法
 自己免疫疾患とは、本来は外来から侵入してくる異物から生体を守るはずの免疫システムが異常をきたして、誤って自分自身の細胞や組織を攻撃してしまう疾患。

 1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が自分の免疫細胞(T細胞)によって破壊され、インスリンが絶対的に不足し、高血糖が引き起こされる自己免疫疾患だ。

 1年間に新たに1型糖尿病と診断される小児や若年者は世界で13万2,600人に上る。

 現在、1型糖尿病の原因となる自己免疫を抑制し、β細胞が破壊されるのを防ぐ「免疫療法」を開発する研究が世界各地で進められている。

 スウェーデンの創薬ベンチャーのDiamyd Medicalは、新規に開発した1型糖尿病ワクチン「Diamyd」の第2相試験の結果を発表した。

 小児期に1型糖尿病と診断された子供や若年者では、インスリンを分泌する能力が体に残存している可能性がある。1型糖尿病のサブタイプによっては、この免疫療法により、β細胞が攻撃されるのを防御できると考えられている。

 自己免疫を抑えて、β細胞によるインスリンの内因性産生を保護し、1型糖尿病の進行を緩和あるいは抑制する治療の実現を目指している。

1型糖尿病ワクチン「Diamyd」による免疫療法
Diamyd Medicalが公開しているビデオ

関連情報
1型糖尿病ワクチンを開発
 この研究は、Diamyd Medicalのウルミ ハネリウス氏、米国の西ミシガン大学のクレイグ ビーム教授、スウェーデンのリンショーピング大学のジョニー ルドビグソン教授らによって主導されている。

 研究の詳細は、欧州糖尿病学会(EASD)が発行している医学誌「Diabetologia」に掲載された。

 2019年12月に報告されたメタ研究では、欧州と米国で実施された3件のプラセボ対照無作為化臨床試験により、500人以上の1型患者を対象に、1型糖尿病ワクチンである「Diamyd」の効果を評価した。

 細胞や体液に分布しているHLA(ヒト白血球抗原)は、ヒトの免疫に関わる重要な分子として働いている。HLA遺伝子の多型(遺伝子の配列が個人間で異なる部分)が、1型糖尿病などの自己免疫疾患に強く関連していると考えられている。

 欧州などの研究では、1型糖尿病を発症した人のほとんどは「DR3-DQ2」や「DR4-DQ8」と呼ばれるHLA遺伝子型をもっていることが示されている。「DR3-DQ2」はGADに対する自己免疫と関連し、「DR4-DQ8」はインスリンに対する自己免疫と関連していると考えられている。

 研究グループは今回の研究で、1型糖尿病と診断されて間もない521人の患者を対象に、このHLA遺伝子型によっていくつかのサブグループに振り分けた。(1)は約50%が「DR3-DQ2」を含むタイプで、(2)は約25%が「DR3-DQ2」を含むが「DR4-DQ8」は含まないタイプだった。

 その結果、1型糖尿病ワクチン「Diamyd」の投与は効果的であることが示された。

 血中のCペプチドは、自分の膵臓からインスリンがどれくらい出ているかを知るための指標となる。Cペプチドを調べたところ、「Diamyd」を3~4回投与されたグループでは、プラセボに比べ、(1)のグループで1.441倍(95%CI 1.188-1.749、調整済みp=0.0007)、(2)のグループで1.596倍(95%CI 1.132-2.249、調整済みp=0.0035)という治療効果比がそれぞれ示され、ワクチン接種によりインスリン分泌が保たれたことが示された。

診断されて間もない1型糖尿病患者へのDiamyd投与の効果
ベースラインから15ヵ月後のC-ペプチド保有のプラセボとの比較
Diabetologia. 2020 Aug 5. doi: 10.1007/s00125-020-05227-z.
1型糖尿病を予防・治療する革新的な方法を開発
 「今回の試験により、GADワクチンが1型糖尿病の安全・特異的かつ効果的な治療法になりうることが裏付けられました。科学的で臨床的な研究で確認できたことは、1型糖尿病の患者にとって大きな希望となるだろうと確信しています」と、リンショーピング大学のジョニー ルドヴィクソン教授は述べている。

 抗GAD抗体は、膵島のβ細胞を攻撃している自己抗体であり、自己免疫が起きている証拠となる。糖尿病の診断が確定した患者に対して1型糖尿病の診断をするときに測定されることが多い。抗GAD抗体の抗原となるのがGAD(グルタミン酸脱炭酸酵素)だ。

 開発した「Diamyd」は、1型糖尿病の抗原であるGADに水酸化アルミニウムを配合したGADワクチン(GAD-alum)で、リンパ節に直接投与する。「Diamyd」による抗原特異的免疫療法により、免疫細胞(T細胞)による免疫作用を抑え、β細胞を保護する作用を得られると考えられている。

 「特定のHLA遺伝子型をもつ1型糖尿病患者に対して、抗原特異的免疫療法が効果的であることが示されました。適切な患者に適切な薬を提供する個別化医療が注目されており、今回の研究は、1型糖尿病などの自己免疫疾患を予防・治療するための、革新的な手法となる可能性があります」と、フロリダ大学糖尿病研究所のマーク アトキンソン所長は述べている。

 「Diamyd」については今年9月に、新たに1型糖尿病と診断されたばかりの小児および若年者を対象とした第2b相試験DIAGNODE-2の開始も予定されている。

 その他、1型糖尿病に対する新たな治療法としては、自己免疫反応の標的となるT細胞の表面にある分子に働きかけ、β細胞が破壊されるのを抑える治療や、γ-アミノ酪酸(GABA)をベースとした治験薬により、内因性インスリン産生の再生する治療などの開発も進められている。

Diamyd Medical
Efficacy of GAD-alum immunotherapy associated with HLA-DR3-DQ2 in recently diagnosed type 1 diabetes(Diabetologia 2020年8月5日)
[ Terahata ]

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