ニュース
2011年04月01日
生活習慣改善はメンタルヘルス対策にもなる クスリと同等の効果
- キーワード
運動をしたり、自然にふれる機会を増やすなど、生活習慣を健康的に変えると、好ましい効果を得られる。その影響は薬物療法やカウンセリングにも匹敵する――こんな研究が米国心理学会(APA)の学会誌に発表された。
健康的な生活は、うつや不安障害の治療にも有用
米カリフォルニア大学アーバイン校のRoger Walsh博士によると、うつや不安障害などを含む多発性の心の病気は、2型糖尿病や肥満症などと同様に、生活習慣を改善することで治療が可能だという。
精神衛生での「生活習慣の改善による治療(therapeutic lifestyle changes)」は広範囲にわたる。Walsh博士は、運動、食事、社会的な関係性、ストレス管理とリラクゼーション、自然にふれる機会を増やす、ボランティア活動などを挙げている。
研究者らは、テレビやパソコンのモニタの前で座ったまま過ごす時間が長く、野外での運動が不足し、社会的な交流が乏しい人を対象に、生活習慣を改善したときの治療効果や優位性、精神医療でのコストを検討した。その結果、薬物療法のみを行った場合に比べ、生活習慣改善は効果があるだけでなく、より安価で満足度が高く、副作用や合併症も少なく安全であることがあきからになった。
「21世紀には精神衛生、精神医療、公衆衛生の分野でも、生活習慣改善は中心的な課題となる」とWalsh博士は言う。
健康的な生活習慣がもたらすメリットは次の通り――
- 運動には、気持ちを明るくするだけでなく、不安や落ち込みを改善する効果も期待できる。運動は、子供が学校生活に適応するのを助けたり、大人の認知能力を向上したり、高齢者では認知症の抑制にも影響する。
- 食生活を改善し、野菜、果物、魚などを十分にとると、うつや統合失調症といった精神疾患でも、症状の軽減といった好ましい影響を得られる。
- 自然にふれる時間をつくると、認知機能に好ましい影響があらわれ心身の状態も安定しやすくなる。
- 良好な人間関係は、風邪などのちょっとした病気から脳卒中などの深刻な病気まで、発症リスクを抑えてくれるだけでなく、精神医療においても好ましい効果がある。
- レクリエーションや余暇に楽しみを得ることは、障害を取り除き、社会的能力を向上させるのに役立つ。
- リラクゼーションやストレス管理は、不安症・不眠症・パニック障害の治療に有用。
- 他者に貢献したり献身的にふるまうと、気持ちが落ち着き寛容になりやすくなり、メンタルヘルス上でもメリットが多い。ただし、家族の介護などを熱心に行うあまり“燃え尽き症”になるのは注意が必要。
Therapeutic lifestyle changes offer many mental health benefits(米国心理学学会、2011年2月17日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所