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2020年07月27日
インスリンは熱に弱い 夏場のインスリン保管はここに注意 温度管理や遮光が必要
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インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬は、バイオテクノロジーを用いて作られるタンパク質由来のバイオ医薬品なので、熱による変性が起こりやすい。夏に保管するときは、温度や遮光などに十分に注意する必要がある。
インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬は高温に弱い
インスリン療法は、糖尿病患者の不足しているインスリンを、体外から注射やインスリンポンプで補給して血糖値を下げる治療法。1型糖尿病患者では必ず必要で、2型糖尿病患者でも飲み薬だけでは血糖コントロールが改善しない場合などに、効果的な治療法となる。
インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬は、タンパク質由来のバイオ医薬品であり、高温にさらすと変性してしまい、効果がなくなってしまうおそれがある。これらの製剤を外を持ち歩くときや、室内では、できるだけ30℃を超えないように保管する必要がある。
近年は気候変動やヒートアイランド現象により、各地で温度が上昇し、高温の環境での保管に多くの人が不安を感じている。日本各地で30℃以上の真夏日が増えており、今後もさら増えるとみられている。
インスリンなどの製剤は30〜37℃までの常温なら変性は起こりにくいが、夏場は高温になりやすいので注意が必要だ。タンパク質の変性とは、卵を焼くと白くて固くなるように、熱などの刺激によりタンパク質の性質が変わってしまう現象だ。
使用前のインスリン製剤を冷蔵庫で保管するときは凍らせないよう注意
使用前のインスリン製剤やGLP-1受容体作動薬は、原則として冷蔵庫などで「2~8℃で保管する」必要がある。
その場合に注意が必要なのは「冷やし過ぎて凍らせない」ことだ。インスリンなどが凍結すると、変性が起こってしまったり、インスリンカートリッジが破損するおそれがある。
使用開始前のインスリン製剤を、冷蔵庫(2~8℃)で保管するときの注意点は次のことだ――。
■ フリーザー内や吹き出し口からの冷風が直接あたる場所に置かない。
■ 冷蔵室内を「強冷」に設定すると、凍結するおそれがあるので、冷やし過ぎないようにする。
■ 凍結を避けるため、冷却風のあたらないドアポケットなどに入れる。
■ 凍ってしまったインスリンなどは、作用時間が変わるなど品質を保てなくなっているので、使用しない。
混合型インスリンは、高温下では変色したり、沈殿物が混ざらなくなることがある。薬液が半透明になっていたり、塊や薄片が見えたりする場合は、新しい製剤を使う必要がある。
使用中のインスリン製剤を熱から守る方法
使用開始後のインスリンやGLP-1受容体作動薬は、常温で保存できるが、やはり室温(30℃以下)で保管する必要がある。
インスリンなどは、開封後は直射日光のあたらないところに室温で保管をすることが大切。保管場所として良いのは温度変化の少ない涼しい所だ。(1)自動車の中、(2)直射日光が当たる場所、(3)海水浴場、キャンプ場などは高温になりやすいので注意が必要だ。
製剤の適正な保管温度を保つために、受診後帰宅するまでに手荷物として持ち運ぶことがポイントとなる。特に駐車した自動車の中は50℃以上になることがあるので、放置しないようにしよう。直射日光があたる窓際だけでなく、日の当たらない後部座席でも、夏には40℃以上になることがあるので注意が必要だ。
夏の旅行など炎天下で長時間持ち歩く時は、保冷バック(凍結保冷材)を活用する。冷蔵庫で冷やした保冷剤を、製剤に直接ふれないようにタオルで包み、いっしょに保冷バックに入れよう。
500gの凍結保冷材を使用すると、約5時間にわたり30℃以下で保管することが可能になる。保冷バックや保冷剤は100円ショップなどで購入できる。
保冷剤の用意がない場合には、▼冷たい飲み物のペットボトルをインスリンと一緒に入れる、▼ポリ袋に入れたインスリンを湿らせたフェイスタオルで包み、気化熱で保冷する、といった方法が役立つ。
インスリン製剤の取り扱いについて確認
なお、室温が30℃を超えるような高温で不安を感じているとき、一部のインスリン製剤は、使用開始後も冷蔵庫での保管も可能だが、やはり凍結を避け、保管の際には注射針を取り外したうえで行う必要がある。冷蔵庫で保管したインスリンなどは、使用前に製剤の外観に異常がないことや、空打ちをして異常がないかを確認することが大切。
日本くすりと糖尿病学会 適正使用推進委員会(委員長:朝倉俊成・新潟薬科大学薬学部教授)は、「使用中のプレフィルド(キット)型製剤を、(注射針を取り外した上で)冷蔵庫に保管することも方法のひとつとして推奨できる。ただし、注射の前には常温程度(15~25℃)に戻す。なお、デュラブル型(カートリッジ交換型)注入器で使用している場合は、これまで通り冷蔵庫には入れない」ことを提案している。
なお、最近に治療に使われるようになった、持効型溶解インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合注射薬も、使用開始後は室温(30℃以下)または冷蔵庫(2~8℃)で保管する必要がある。
製薬各社が相談窓口を開設
インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬の取り扱いについて、製薬各社が相談窓口を設けている。
インスリン製剤 GLP-1受容体作動薬 相談窓口
■ ノボケア相談室(ノボ ノルディスク ファーマ)Tel.0120-180-363
月~金(祝日・会社休日を除く)
Tel.0120-359-516
夜間および土日・祝日・会社休日
https://www.novonordiskpro.jp/pages/contact-us.html ■ リリーアンサーズ(日本イーライリリー)
Tel.0120-245-970
Tel.078-242-3499
製品に関する問合せ 月~金 8:45~17:30
注入器に関する問合せ 月~土 8:45~22:00
https://www.lilly.co.jp/patient/lillyanswers/inquiry/default.aspx ■ くすり相談室(医薬品関連)(サノフィ)
Tel.0120-109-905
月~金(祝日・会社休日を除く) 9:00~17:00
■ オプチコール24(糖尿病関連医療機器)(サノフィ)
Tel.0120-497-010
24時間365日
https://www.sanofi.co.jp/ja/contact 「高温環境下でのインスリン製剤の保管に関する提案(適正使用推進委員会)」について(日本くすりと糖尿病学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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