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2022年08月25日

【新型コロナ】子供や若者の糖尿病が急増 パンデミックによる環境変化が原因か?

 新型コロナのパンデミックの影響を受け、子供や若者の2型糖尿病が急激に増加しているという調査結果が、米国で発表された。

 ウイルス感染自体が糖尿病の増加の要因であるかについては不明だが、オンライン教育の拡大と、学校閉鎖のために運動・スポーツができなくなり、運動不足の子供が増えている「環境要因」が指摘されている。

 血糖値が非常に高くなる「代謝性代償不全」と診断された若者は、パンデミックの前は9%にしかみられなかったが、パンデミックにより21%に増加した。

 「糖尿病合併症を予防するためには、糖尿病を早期発見して治療を開始することが必要です。これは成人だけでなく、子供や若者も同じです」と、研究者は指摘している。

新型コロナの拡大で家に閉じこもる子供が増えた

 新型コロナのパンデミックの影響を受け、子供や若者の2型糖尿病が急激に増加しているという調査結果を、米国のジョンズ ホプキンス医学部やコロラド大学医学部が発表した。

 新型コロナのパンデミックの前にも、子供や若者の2型糖尿病は世界中に増えていることが報告されていたが、小児糖尿病の発生率は時間の経過とともに増減することも知られていた。そこで研究グループは今回の研究で、パンデミックの糖尿病への影響を評価するために、全国の医療記録を調査した。

 「運動や身体活動の減少と、体重増加が、2型糖尿病の危険因子としてよく知られています。新型コロナの拡大によるロックダウンのあいだ、子供たちは学校に通うことができず、スポーツや運動、外で遊ぶこともできませんでした。新型コロナにより、通常の日常生活から切り離されていました」と、同大学小児内分泌科のディレクターであるシーラ マッジ氏は言う。

 「オンライン教育が増え、子供たちの身体活動量が減っただけでなく、家に閉じこもり、テレビを見たり、ビデオゲームをしたり、スマホなどのデジタルデバイスを使うのに多くの時間を費やすようになりました」としている。

子供の頃に糖尿病を発症するとより早い時期に合併症が

 2型糖尿病は、血糖を下げるインスリンが効きにくくなったり、分泌が少なくなることで、血糖値が慢性的に高くなる疾患だ。遺伝的にインスリンの分泌が少ない体質の人や、インスリンが効きにくい人もいて、こうした体質と過食や運動不足などの生活スタイルが合わさることで、発症リスクが上昇する。

 糖尿病の適切な治療と管理を行っていないと、慢性的な高血糖により、心筋梗塞、脳卒中、腎臓病、眼の障害、神経障害などの合併症が引き起こされる。合併症の多くは不可逆的な障害となり、発症してからは元に戻せないものも多いので、初期の段階から予防することが大切になる。

 一方、血糖値を良好に管理できていれば、糖尿病と診断されても、長年にわたり糖尿病ではない人と変わらない生活をおくることができると考えられている。

 肥満や過体重は2型糖尿病の危険因子のひとつで、米国の若者の3分の1は肥満や過体重だと推定されている。マッジ氏によると、子供の頃に糖尿病と診断されると、成人になってから診断されるのに比べ、より早い時期に糖尿病合併症を発症する傾向があるという。

関連情報

新型コロナの拡大で子供と若者の糖尿病は77%増加

 研究グループは、新型コロナのパンデミックの前の2年間(2018年3月1日~2020年2月29日)から、パンデミックの最初の年(2020年3月1日~2021年2月28日)の期間に、全米の24の医療センターで、8歳~21歳の3,113人の子供や若者の患者を特定した。

 年間の平均の新規診断数は、パンデミック前の2年間は825件だったが、パンデミックの初年度には1,463件となり、77%増加した。過去数年間の割合と比較すると、パンデミックの最初の年に、とくにヒスパニック系とアフリカ系の若者の診断数は、ほぼ2倍と大幅に増えた。

 パンデミックの最初の1年間に、2型糖尿病と診断された男の子は55%で、女の子の45%よりも多く、男女の割合の傾向はパンデミックにより逆転した。

 「新たに2型糖尿病と診断されるのは、男の子よりも女の子の方が多かったのですが、理由は不明ですがそれが逆転しました」は、ジョンズ ホプキンス大学医学部小児科のリサ ウルフ氏は言う。

 2型糖尿病のリスクは、社会・経済的困難を抱える人種的マイノリティ集団や家族で上昇しやすいことが知られているが、新型コロナの拡大により、そうした格差はさらに広がったとみられている。

合併症を予防するために早期に治療を開始することが必要

 別の分析では、身長と体重から算出される体格指数(BMI)と血糖値、さらには1~2ヵ月の血糖値を反映し、糖尿病の標準的な診断にも用いられるHbA1cの値の上昇をともなう症例が増加していることも示されている。

 さらには、血糖値が顕著に高くなる「代謝性代償不全」と診断された若者は、パンデミックの前は9%にしかみられなかったが、パンデミックにより21%に増加した。そのもっとも深刻な症状として、倦怠感、頭痛、悪心・嘔吐、脱力、急な呼吸などがある。

 「小児科医やプライマリケア医は、子供や若者の2型糖尿病のスクリーニングにも注意を払う必要があります。親や保護者も、子供の体重増加に注意を払い、異常が出ていれば、早めに医師に相談するべきです」と、ウルフ氏は指摘している。

 「糖尿病合併症を予防するためには、糖尿病を早期発見して治療を開始することが必要です。これは成人だけでなく、子供や若者も同じです」としている。

Significant Boost in Rates of Type 2 Diabetes Among Children During COVID-19 Pandemic (ジョンズ ホプキンス医学部 2022年8月23日)
The COVID-19 pandemic is associated with a substantial rise in frequency and severity of presentation of youth-onset type 2 diabetes (Journal of Pediatrics 2022年8月17日)
【特集】新型コロナウイルス感染症
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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