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2024年07月22日

睡眠時間が短すぎても長すぎても糖尿病リスクは上昇 合併症が起こりやすくなる 睡眠を改善する7つのヒント

 糖尿病の人が、睡眠時間が短すぎたり長すぎると、細小血管がダメージを受けやすくなり、深刻な合併症のリスクが高まることが明らかになった。

 睡眠時間が一定していない中高年の成人は、2型糖尿病のリスクが高まることも分かった。

 「糖尿病と診断された人は、食事や運動などの生活スタイルを見直すとともに、睡眠を十分にとれているかについても注意する必要があります」と、専門家はアドバイスしている。

 睡眠を改善するための7つのヒントが紹介されている。

睡眠時間が短すぎたり長すぎると合併症リスクが上昇

 糖尿病と診断された人が、睡眠時間が短すぎたり長すぎると、細小血管がダメージを受けやすくなり、深刻な合併症のリスクが高まることが明らかになった。合併症は糖尿病が原因となって起こる病気だ。

 糖尿病の人が、血液中の糖の濃度(血糖値)が高いままでいると、細い血管が傷つけられたりつまったりして、血流が悪くなる。糖尿病の細小血管合併症は、神経障害、網膜症、腎臓病などがある。

 研究は、デンマークのオーデンセ大学病院やステノ糖尿病センターが、新たに2型糖尿病と診断された396人の患者を対象としたもので、コホート研究「デンマーク2型糖尿病戦略研究」の一環として行われた。詳細は、9月にマドリードで開催される欧州糖尿病学会(EASD)年次総会で発表される予定。

 研究グループは、睡眠についても計測できる活動量計を、参加者に10日間装着してもらい、睡眠が糖尿病に与える影響について調べた。糖尿病の合併症については、腎臓病の早期発見のために尿アルブミン/クレアチニン比の検査と、網膜症を発見するために網膜画像や眼底の検査を行った。

糖尿病の人は十分な睡眠時間を確保することが大切

 その結果、睡眠時間が短い[1晩に7時間未満]人は、細小血管合併症の有病率が38%と高かった。睡眠時間が長い[9時間以上]人でも、有病率は31%に上った。1晩に7時間から9時間の推奨されている睡眠をとれている人は、有病率は18%と低かった。

 「睡眠時間が短すぎる人は、最適な睡眠時間の人に比べて、細小血管合併症のリスクが2.6倍に上昇することが示されました。とくに62歳以上の人では、短い睡眠時間は、細小血管合併症リスクの5.7倍の上昇と関連していました」と、ステノ糖尿病センターのメッテ ヨハンセン氏は言う。

 「医療機関で2型糖尿病と診断された人は、食事や運動などの生活スタイルを見直すとともに、睡眠を十分にとれているかについても注意する必要があります。睡眠をとれていないという場合は、医療従事者に相談することが望まれます」としている。

 なお、参加者の年齢の中央値は62歳で、44%が女性、糖尿病の平均罹病期間は3.5年、BMI(体格指数)の中央値は31で肥満だった。68%の人が血圧を下げる薬も服用していた。

睡眠時間が一定していないと糖尿病リスクが上昇

 米ブリガム アンド ウィメンズ病院などによる別の研究でも、睡眠時間が一定していない中高年の成人は、2型糖尿病の発症リスクが高まることが示された。

 研究グループは、大規模研究である英国バイオバンク研究に参加した、研究開始時に糖尿病ではなかった平均年齢が62歳の8万4,000人以上の男女のデータを解析した。

 その結果、規則的な睡眠パターンをもつ人に比べて、毎日の睡眠時間が平均で60分以上変動するなど睡眠が不規則な人は、糖尿病リスクが34%高いことが明らかになった。

 参加者に体の動きをモニターする腕時計タイプの加速度計を7日間着用してもらい、さらに健康状態を7年以上追跡して調査した。

 「2型糖尿病を予防・改善するために、規則的な睡眠習慣が重要であることが示されました。糖尿病のリスクを減らすために、健康的な生活スタイルが大切ですが、そのなかに睡眠も含める必要があります」と、同病院チャニングネットワーク医学部門のシナ キアネルシ氏は述べている。

睡眠を改善するための7つのヒント

 十分な睡眠をとることは、体と心を健康にするために不可欠だが、多くの人が、良い睡眠をとるのを困難に感じている。

 良質な睡眠とさわやかな目覚めは、いきいきとした毎日の生活リズムをつくり出し、ホルモン分泌の調整や、免疫機能の向上にもつながる。

 米国睡眠医学会やミシガン大学睡眠障害センターでは、睡眠を改善するための7つのヒントを紹介して

 「睡眠について悩みがあるのなら、毎日のルーティンを見直して、良い睡眠をとるために最適化することをお勧めします」と、同センターのロナルド チャービン氏は述べている。 いる。

睡眠を改善するための7つのヒント

1快眠は規則正しい生活から

 規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。
 体内時計を整え、体を睡眠に導くために、朝食をしっかりとり、夜遅くの食事は避けるなど、健康的な食事スタイルが大切。適度な運動をする習慣も、睡眠の質を高めるのに役立つ。

2眠れないときもくよくよ考えない

 適切な睡眠時間には個人差があり、季節や年齢によっても変動する。眠れない夜があっても、時計をみつめたり、くよくよと考えることをしないで、リラックスして過ごすようにする。
 睡眠が足りているかは、日中の活動状態を目安にして判断する。日中にしっかり目覚めて活発に過ごせていれば睡眠は足りている。

3睡眠前のカフェインやアルコールの摂取は避ける

 就寝前にカフェインを摂取すると、入眠が妨げられる。就寝の3〜4時間前には、コーヒーなどカフェインを含む飲料を飲まないようにする。
 また、睡眠薬の代わりにアルコールを飲むと、夜中に目が覚めてしまう「リバウンド効果」が起こり、かえって睡眠の質を悪くなる。就寝前にはアルコールを飲まないようにする。

4入浴して深部体温を上げる

 入浴には加温効果がある。就寝1~2時間前に入浴すると、体の奥の体温である「深部体温」が上がり、その後に睡眠に入りやすくなる。
 寝る少し前に深部体温をいったん上げると、その後に下がって、眠りに入りやすくなる。

5リラックスできる方法を取り入れる

 眠る前に、軽い読書、音楽、軽いストレッチなど、自分に合ったリラックスできる方法をみつけて取り入れる。
 眠ろうとする意気込みはかえって逆効果になることがあるので、眠れないときは無理に眠ろうとせず、リラックスできる方法を試しみて、眠くなるのを待つ。

6朝は日光を浴びて体内時計のスイッチを入れる

 朝に太陽光を浴びると、体内時計が24時間周期にリセットされる。起きたらまずカーテンを開けて、自然の光を部屋の中に取り込むと効果的だ。
 週末などの休みの日も、なるべく平日と同じ時刻で起床するよう心がける。

7「睡眠アプリ」を活用する

 睡眠を記録し、傾向を分析することで、睡眠の習慣を振り返ることのできる、さまざまな「睡眠アプリ」やウェアラブルデバイスが出ている。
 睡眠の量・質・リズムなど、計測した自分の睡眠データをチェックすることが、睡眠の質を改善するきっかけを作ることもある。

 「睡眠障害は、体や心の病気のサインである場合もあります。なかなか寝付けない、熟睡できない、十分に寝ているはずなのに日中に眠気が強い、睡眠中にいびきや歯ぎしりがある、足にむずむず感があるといった場合は、専門家に相談することをお勧めします」と、チャービン氏はアドバイスしている。

Study finds short and long sleep duration associated with blood vessel damage in those recently diagnosed with type 2 diabetes (Diabetologia 2024年7月11日)
Study Finds Irregular Sleep Patterns Lead to Increased Risk of Type 2 Diabetes (ブリガム アンド ウィメンズ病院 2024年7月17日)
Association Between Accelerometer-Measured Irregular Sleep Duration and Type 2 Diabetes Risk: A Prospective Cohort Study in the UK Biobank (Diabetes Care 2024年7月17日)
How to fall asleep faster: A step-by-step guide with advice from experts (ミシガン大学睡眠障害センター 2023年3月9日)
Sleep Education (米国睡眠医学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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