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2024年10月16日

夜遅くに食べるのをやめると糖尿病や肥満が改善 朝食も早い時間に 遅い時間の食事は「体内時計」が乱れる原因に

 夜遅い時間に食べるのをやめ、朝食をなるべく早い時間にとることが、2型糖尿病や肥満の改善に役立つことが明らかになった。

 早い時間に食事をとることで体内時計が整えられる。血糖値を下げるインスリンが、体内時計に食事のタイミングを伝えるのに役立つ信号となっていることも分かった。

 「体重を管理するために、何を食べるかだけでなく、いつ食べるかについても考えることが重要です」と、研究者は指摘している

夜遅くに食べるのをやめて朝食を早い時間にとると体重が減少

 夜遅い時間に食べるのをやめ、朝食をなるべく早い時間にとると、体重を減らす効果を期待できることが新しい研究で示された。

 研究は、スペインのバルセロナ国際保健研究所(ISGlobal)によるもの。研究グループは、40~65歳の7,000人以上の成人を5年間追跡したコホート研究のデータを解析した。

 その結果、夜に食べる時間が早く、空腹である時間が長い人と、朝食をとる時間が早い人は、体格指数(BMI)が低い傾向が示された。

 「体重を管理するために、何を食べるかだけでなく、いつ食べるかについても考えることが重要です」と、同研究所の研究員のルシアナ ポンズ ムッツォ氏は言う。

 「夕食と朝食を早めの時間にとり、1日のなかで空腹でいる時間をつくっている人は、健康的な体重を維持できている。逆に、朝食を遅い時間にとっている人は、体重が増えやすいことも分かりました」としている。

夜遅くに食事をする習慣があると「体内時計」が乱れやすい

 ヒトの体には、ほぼ1日の周期で体内環境を調整する「体内時計」の機能がそなわっており、それがホルモンの分泌や代謝、睡眠リズムといった概日リズムを調整している。

 体の概日リズムの異常は、睡眠やホルモン分泌などに障害を引き起こし、2型糖尿病や肥満などとも関連している。

 「早い時間に食事をとることで概日リズムが整えられ、カロリー燃焼と食欲の調節が促進され、健康的な体重の維持に役立っている可能性があります」と、ポンズ ムッツォ氏は指摘する

 逆に、夜遅くに食事をするなどの習慣があり、食事のパターンが不規則であると、体内時計が乱れて、体重が増えやすくなるおそれがあるという。

夜遅い時間の食事は体重や体脂肪を増やす スマホアプリで生活改善

 夜遅い時間に食事をすると体重が増えやすいことは、米国内分泌学会が発表した研究でも明らかになっている。

 「なるべく1日の早い時間に食事をとるようにすると、肥満のリスクを減らせる可能性があります」と、コロラド大学で内分泌代謝を研究しているアドニン ザマン氏は言う。

 研究グループは、平均年齢36歳の過体重や肥満の成人31人を対象に、身体活動や睡眠について測定できる活動量計を1週間身につけてもらい、スマホアプリを使い1日に食べたもののすべてを記録してもらった。

 その結果、夜の遅い時間に食事をする習慣のある人は、体重や体脂肪が増えやすく、睡眠時間も短くなりやすいことが分かった。

 「スマートフォンや活動量計などのウェアラブルデバイスを利用すると、食事や運動、睡眠について簡単に記録できます。こうしたデバイスを上手に活用するのは、ご自分の生活スタイルを振り返るのに有用である可能性があります」と、ザマン氏は指摘している。

夜遅い時間に食事をとる習慣をなくすと睡眠も改善できる

 夜遅い時間に食事をとる習慣をなくすと、健康的な睡眠をとれるようになり、睡眠不足にともなう集中力と注意力の低下を抑えるのに役立つ可能性があることは、ペンシルバニア大学の別の研究でも示されている。

 研究グループは、21~50歳の44人の参加者を、時間の制限がなく食事をするグループと、午後10時以降は食事をしないグループに分け、どのような影響があらわれるかを調べた。

 その結果、午後10時以降に食べなかったグループは、夜遅くに食事をしたグループに比べ、反応時間や注意力が大幅に改善することが分かった。

 「これまでの研究でも、就寝時間が遅く、慢性的に睡眠不足の人は、夜遅い時間に高カロリーの食事をとりやすく、体重が増えやすいことが明らかになっています」と、同大学の睡眠・時間生物学部門のナムニ ゴエル氏は言う。

 「とくに睡眠不足に悩まされている人は、夜遅くに高カロリーの食事をしないことで、神経行動学的パフォーマンスの低下を防げる可能性があります」としている。

血糖値を下げるインスリンが「体内時計」を調整

 血糖値を下げるインスリンが、体内時計に食事のタイミングを伝えるのに役立つ主要な信号となることが、英国のマンチェスター大学とケンブリッジ大学の研究で明らかになっている

 インスリンは、食事のタイミングを体内時計に伝え、概日リズムを整える主要なシグナルだとしている。研究は、英国医学研究会議(MRC)が支援して行われたもの。

 食事を夜遅い時間にとったり、食事の時間が不規則であると、体内時計が乱れやすくなり、2型糖尿病や心血管疾患などのリスクが上昇するおそれがある。

 研究グループは、培養細胞での研究とマウスによる再現実験により、食事時に分泌されるホルモンであるインスリンが、細胞の概日リズムを調整しているタンパク質の生成を刺激することで、概日リズムを調整していることを明らかにした。

 「食事をしたときに分泌されるインスリンは、体全体の細胞へのタイミング信号としても機能しています。体内時計の乱れに関連する健康障害を軽減する新しい方法につながる可能性があります」と、マンチェスター大学の糖尿病・内分泌・消化器内科のデビッド ベクトルド教授は言う。

Keeping a Longer Overnight Fast and Eating an Early Breakfast May Be Associated with a Lower Body Mass Index (バルセロナ国際保健研究所 2024年10月1日)
Sex-specific chrono-nutritional patterns and association with body weight in a general population in Spain (GCAT study) (International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity 2024年9月12日)
Eating later in the day may be associated with obesity (米国内分泌学会 2019年3月23日)
Later Meal and Sleep Timing Predicts Higher Percent Body Fat (Nutrients 2020年12月29日)
Eating Less During Late Night Hours May Stave off Some Effects of Sleep Deprivation, Penn Study Shows (ペンシルバニア大学医学部 2015年6月4日)
Effects of Experimental Sleep Restriction on Weight Gain, Caloric Intake, and Meal Timing in Healthy Adults (Sleep 2013年7月1日)
Researchers discover how eating feeds into the body clock (マンチェスター大学 2019年4月25日)
Insulin/IGF-1 Drives PERIOD Synthesis to Entrain Circadian Rhythms with Feeding Time (Cell 2019年5月2日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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