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2020年09月29日

糖尿病の兆候は早くも8歳であらわれる 子供の頃の生活スタイルは成人後も影響

 子供の「カロリー摂取量の増加」「間食によるカロリーの摂り過ぎ」「運動不足」は世界的な課題になっている。
 成人してから2型糖尿病を発症するリスクの兆候は、発症から数十年さかのぼる8歳の子供の時点で、すでにあらわれているという研究も発表された。
 「子供と大人がともに学び、糖尿病や肥満に対策する必要がある」「社会の支援も必要」と、専門家は指摘している。
世界の4000万人の子供が過体重か肥満
 ユニセフ(国連児童基金)がまとめた「世界子供白書2019:子供、食料、栄養」によると、世界の4,000万人の子供が過体重あるいは肥満だ。

 「多くの国はこの数十年で、技術、文化、社会の面で発展を遂げてきましたが、子供の健康に対しては十分な施策が行われていません」と、ユニセフ事務局長のヘンリエッタ フォア氏は言う。

 「子供はきちんと食べられないと十分に生きることができないという基本的な事実に対し、ほとんど目を向けてこなかったのです」としている。
大人に良くない食環境は子供にも良くない
 栄養価の低い「超加工食品」やファストフードの販売活動や広告は、先進国だけでなく途上国でも過剰になっている。

 糖質や脂肪の多い高カロリーの食品が入手しやすくなり、子供たちは心奪われている一方で、野菜や果物、全粒粉といった健康的な食品はますます入手しにくくなっている。

 カロリー摂取量の増加、間食によるカロリーの摂り過ぎ、伝統的な食事スタイルが失われ現代的なスタイルに移行していること、都市化にともなう運動不足の増加などを指摘している。

 食生活が変わり、子供や若者の腸内細菌叢に変化が起きていると指摘した研究も報告されている。
子供の頃の食生活が成人後に影響
 米国のテネシー大学の研究によると、現在の成人の肥満や2型糖尿病の増加の原因の一端は、数十年前の小児期や若年期の不健康な食事にあるかもしれない。

 「子供の頃に定着した食事スタイルが、大人になってからの肥満や糖尿病の増加に影響している可能性があります」と、研究者は言う。

 研究者によると、米国で1970年代から1980年代にかけて子供の糖質を摂取が増えたことと、1990年代以降の成人の肥満の増加とは関連があるという。そのころ消費が飛躍的に増えたのは、果糖とブドウ糖を主成分とする異性化糖(フルクトース コーンシロップ)だ。

 「現在の成人の肥満の危機に、30年から40年前に子供の頃に学んだ食習慣が大きく影響しているおそれがあります」と、研究者は指摘している。
糖尿病の兆候は早くも8歳であらわれる
 成人してから2型糖尿病を発症するリスクの兆候は、発症から数十年さかのぼる8歳の子供の時点で、すでにあらわれているという研究を、英国のブリストル大学が発表した。

 「2型糖尿病は一晩で発症するような疾患でないことは分かっていました。しかし、人生のいつ頃から最初の兆候があらわれるのか、そして、そうした兆候はどのようようなものなのかは、よく分かっていませんでした」と、ブリストル大学ポピュレーション健康科学研究所のジョシュア ベル氏は言う。

 2型糖尿病は、年齢を重ねると発症が増える疾患だが、ベル氏によると、その発症につながる兆候は、糖尿病と診断される50年も前にすでにあらわれている可能性がある。

 「その兆候をキャッチできれば、糖尿病に対してより早い段階で介入し、健康に害を及ぼすのを防ぐことができるかもしれません」としている。
人生のどの段階で対策をすれば良いか
 研究グループは、1990年代にブリストル大学で開始された「Avon親子縦断調査研究」の登録者を対象に、8歳、16歳、18歳、25歳の約4,000人の血液サンプルを用い、「メタボロミクス」と呼ばれる手法で解析し、遺伝子情報も調べた。

 その結果、成人してから2型糖尿病を発症した人は8歳の段階で、特定の種類のHDLコレステロールが、LDLを含む他の種類のコレステロールが上昇する前に減少することが分かった。炎症とある種のアミノ酸も16~18歳までに上昇してしいた。

 コレステロールは、血液によって全身に運ばれるが、余ったコレステロールはHDLという粒子のかたちで回収される。このとき血管壁にたまったコレステロールも抜きとられる。そのためHDLは"善玉"と呼ばれている。

 「今回の研究は、メタボロミクスに変化がみられた子供や若者が、すでに成人型の糖尿病を発症していることを意味するわけではありませんが、人生の後半に糖尿病を発症する人は、若年期に代謝に関わる微妙な違いが生じている可能性があります」と、ベル氏は言う。

 「糖尿病とその合併症の発症を防ぐために、人生のどの段階で対策をすれば良いかを理解するために役立ちます」。
子供の運動不足も深刻
 子供の運動不足も深刻だ。子供の運動不足による体力低下は、日本でも問題になっている。

 文部科学省が行っている「体力・運動能力調査」によると、現在の子供の体力・運動能力の結果をその親の世代である30年前と比較すると、多くのテスト項目において、子供の世代が親の世代を下まわっている。

 子供の運動不足は、親の生活習慣が良くない子供に多いことが、文部科学省の「スーパー食育スクール事業」の一環として富山大学が実施した調査で明らかになった。

 研究グループは親の生活習慣を、「Breslowの7つの生活習慣」で評価した。質問項目は、(1)適切な睡眠時間(7~8時間)をとる、(2)喫煙をしない、(3)適正体重を維持する、(4)過度の飲酒をしない、(5)定期的な運動を行う、(6)朝食を毎朝食べる、(7)間食をしない、の7つの項目からなり、当てはまる項目が多いほど生活習慣が良いと判断される。

 この基準による得点で、当てはまる項目が0~3個の場合を生活習慣が「悪い」、4~5個の場合を「普通」、6~7個の場合を「良い」として、子供の運動習慣との関係を評価した。
「親の生活習慣が良くない」子供は運動不足に
 その結果、親の生活習慣が悪いと、子供は運動不足になる傾向があることが分かった。

 年齢や性別などの他の要因を考慮して分析した結果、父親の生活習慣が「悪い」家庭では、「良い」家庭に比べ、子供の運動不足が1.28倍に増えた。

 同様に、母親の生活習慣が「悪い」家庭では、「良い」家庭に比べ、子供の運動不足が1.54倍に増えた。

出典:富山大学、2020年
大人と子供がともに生活スタイルを改善
 「子供の運動の促進には、親の望ましい生活習慣づくりを含めた親子の健康教育も必要になります。友達の存在や仲間づくりも重要です」と、研究グループは述べている。

 生活スタイルの改善は、社会環境のように自分自身の力だけでは見直しが難しい場合もあるが、親の生活習慣や子供の生活習慣のように、見直しが可能なものもある。

 「子供の望ましい生活習慣づくりには、子供に対する健康教育だけではなく、親に対する健康教育も必要であり、地域社会や学校の協力のもとに子供の健康習慣づくりを進める必要があるといえます」と、研究グループは強調している。

State of the World's Children 2019 : Children, food, and nutrition(ユニセフ)
The State of the World's Children 2019: Children, food and nutrition: Growing well in a changing world(ユニセフ)
The Changing Face Of Malnutrition: The State Of The World'S Children 2019(ユニセフ)
Today's Obesity Epidemic May Have Been Caused by Childhood Sugar Intake Decades Ago(テネシー大学 2019年9月23日)
U.S. obesity as delayed effect of excess sugar(Economics & Human Biology 2019年9月17日)
Signs of being prone to adult diabetes are already visible at age 8 years old(ブリストル大学 2020年6月19日)
Early Metabolic Features of Genetic Liability to Type 2 Diabetes: Cohort Study With Repeated Metabolomics Across Early Life(Diabetes Care 2020年5月)
富山大学地域連携推進機構地域医療・保健支援部門
スーパー食育スクール事業について(文部科学省)
Social and family factors as determinants of exercise habits in Japanese elementary school children: a cross-sectional study from the Super Shokuiku School Project(Environmental Health and Preventive Medicine 2020年9月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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