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2022年08月25日
夏の暑さは糖尿病にどう影響した? 糖尿病の人は暑さへの意識を高める必要が
猛暑が続き、グッタリして日々を過ごしている人も多いのではないだろうか。記録的に暑い夏は、来年も、その先も続きそうだ。
地球温暖化が進み、健康にどのような影響がもたらされるのかを気にしている人も多い。
糖尿病の人の多くは、暑い気候の危険性について十分な注意を払っていないという調査結果が発表された。
「暑さがどのように糖尿病に影響をもたらすかについて、糖尿病の人はもっと意識を高める必要があります」と、専門家は注意を促している。
糖尿病の人は暑さの影響を受けやすい
地球温暖化にともない、夏の暑さが糖尿病などの慢性疾患にもたらす影響が懸念されている。日本でも、日中は35℃、夜間でも25℃を超える日が増え、今後も記録的に暑い夏が続くとみられている。 気温が上昇し、暖かくなってくると、とくに肥満や過体重のある糖尿病の人は、血糖値とインスリン感受性が良くなるという報告もある。暑さもほどほどであると、悪い影響ばかりがあるわけではない。 しかし、猛暑になると、糖尿病の人はそうでない人に比べ、血糖管理が良好でないと、高熱による悪影響があらわれやすいと考えられている。 高温多湿により、熱中症や脱水症、水分やナトリウムなどの電解質のバランスが崩れる電解質異常などが起こりやすくなり、救急外来の受診や入院のリスクが高まる。 高温により食事内容や、運動量が変化し、血糖管理がうまくいかなくなることなども考えられる。糖尿病の人は暑さへの意識を高める必要が
しかし、米国内分泌学会の発表によると、糖尿病の人の多くは、暑い気候の危険性について十分な注意を払っていないようだ。同学会では「暑さがどのように糖尿病に影響をもたらすかについて、糖尿病の人はもっと意識を高める必要があります」と注意を促している。 研究は米国のメイヨークリニックによるもの。研究グループは、1966年~2009年に発表された、暑さが糖尿病にどのような影響をもたらすかを調べた152件の研究を解析した。 「とくに高齢の糖尿病患者さんは、発汗能力が低下しており、血糖管理が良好でないと、高温に関連した体調不良になりやすく、高血糖になる場合もあるので注意が必要です」と、同クリニックで糖尿病と内分泌代謝について研究しているエイドリアン ナサール氏は言う。 ある調査によると、糖尿病のある人の5人に1人は、暑い時期でも、気温が摂氏37℃を超えるまで、暑さに対する積極的な対策を講じないと回答した。 関連情報気温と湿度を組み合わせた暑さ指数をご存知ですか?
「暑さ指数を考えると、熱中症は27℃から32℃で発生する可能性もあります。とくに湿度が高い場合には注意が必要です」と、ナサール氏は指摘している。 気温がそれほど高くなくとも、湿度が高いと、熱中症のリスクが高まる。湿度が高いと、汗の蒸発が遅くなり、熱放散の効率が低下し、体温が上昇しやすくなる。しかし調査では、気温と湿度を組み合わせた暑さ指数について知っていたのは、糖尿病の人のおよそ半数だった。 熱中症予防のための指標となるものとして、「暑さ指数(WBGT)」がある。WBGTは、熱中症が起きやすい外的環境を知るための指標で、気温だけでなく、湿度や輻射熱も考慮してある。 日本でも、WBGTが25~28のときは、「運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる」ことを、28~31のときは「外出時は炎天下を避け室内では室温の上昇に注意する」、31以上のときは「外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」と呼びかけられている。高温はインスリンや血糖自己測定器などにも影響
高温は、糖尿病の治療薬や医療機器にも影響する。インスリンなどの治療薬や、血糖自己測定器などの医療機器には、保管に適した温度があり、薬や医療機器などの添付文書に記してある。 とくにインスリンは、膵臓のβ細胞でつくられるホルモンであり、タンパク質が主体となる。そのため、過度の高温や低温になると、変性して立体構造が変化し、薬理作用が弱まってしまうおそれがある。そのため、インスリン製剤は高温や凍結を避けて保管する必要がある。 「インスリンだけでなく、飲み薬や医療機器にも、保管に適した温度範囲があることを知らない人が少なくありません。しかし、薬や医療機器を保管・管理するときは、湿気・直射日光・高温を避けた方が良いのです」と、ナサール氏は言う。 調査に回答した糖尿病の人の73%は、インスリンに対する熱の影響について知っていたが、高温が飲み薬にも影響する可能性があることを知っていたのは39%、血糖自己測定器については41%が認知していたという。「熱中症警戒アラート」や「暑さ指数(WBGT)」をチェック
全国の最新の「熱中症警戒アラート」や「暑さ指数(WBGT)」の情報は、環境省のサイトで公開されている――。
環境省は、熱中症予防に関する情報「熱中症警戒アラート」を全国で発表している。
これは、暑さ指数(WBGT)にもとづき、熱中症の危険性が極めて高い暑熱環境が予測される場合に、暑さへの「気づき」を呼びかけ、熱中症予防行動を効果的に促すための情報として公開するもの。
「熱中症警戒アラートが発表されているときは、外出を控える、エアコンを使用するなどの、熱中症の予防行動を積極的にとりましょう」と注意を呼びかけている。
日本救急医学会の熱中症に関する委員会は、暑さ指数(WBGT)を意識した生活を心がけるよう呼びかけている。
WBGTとは、熱中症が起きやすい外的環境を知るための指標で、気温だけでなく、湿度や輻射熱を考慮した判断が可能になる。
気温だけでなく、この暑さ指数を意識した生活指導が必須であり、これを用いた屋外活動の可否判断が重要だ。
全国の暑さ指数(WBGT)については、環境省のサイトで3日間の「実況と予測」が公開されている。
気温が30℃だと糖尿病の人の入院リスクは1.6倍超に上昇
「ケトアシドーシス」や「高浸透圧高血糖症候群」にご注意
糖尿病の人が高温の環境にさらされると、「糖尿病性ケトアシドーシス」「高浸透圧高血糖症候群」「低血糖」といった深刻な症状があらわれ、入院のリスクが上昇するという調査結果を、東京医科歯科大学が発表した。 ケトアシドーシスは、体内にケトン体が過剰に蓄積し、血液が酸性に傾いた、危険な状態だ。インスリン作用が不足し、体がブドウ糖を利用できない状態では、代わりに脂肪がエネルギー源として使われ、そのときにケトン体という物質ができる。 ケトアシドーシスでは、腹痛や吐き気、深くて早い呼吸などの症状があらわれる。また、意識障害や昏睡におちいったり、生命に危険が生じることもある。ケトアシドーシスが疑われるときは、すみやかに治療を受けることが重要となる。 高浸透圧高血糖症候群は、糖尿病ケトアシドーシスと並んで、異常な高血糖をきたした状態。インスリン分泌がある程度保たれているため、ケトアシドーシスと比べるとあまり脂肪は分解されず、ケトン体の上昇も軽度であることが多いが、それでも著しい高血糖と極度の脱水になり、意識障害を引き起こすこともある。糖尿病の人は高温の環境にさらされると高血糖や低血糖のリスクが上昇
「高血糖緊急症のリスクが高い、血糖管理が不良の糖尿病患者さんや、HbA1cが低くインスリンを使用しているような糖尿病患者さんでは、患者さんと医師などの医療従事者で、高温環境による血糖への影響を事前に調べ、知識を共有し、薬剤を調整するなどの治療介入を積極的に行うことが、高血糖、低血糖による入院を予防するために有用となる可能性があります」と、研究グループでは述べている。 研究グループは、厚生労働省がまとめている全国の医療データベースから、高血糖緊急症(糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群)、低血糖による緊急入院時のデータを抽出、気象庁の全国日平均気温データと統合し、気温と入院との関連を3日間のラグ効果を考慮し分析した。 その結果、気温上昇にともない、糖尿病患者の入院のリスク比は、下記の通り上昇することが明らかになった。- 気温が22.6℃のときと比べ、26.7℃の場合、入院のリスク比は、高血糖緊急症は1.27倍に、低血糖は1.33倍にそれぞれ上昇した。
- 気温が29.9℃の場合は、入院のリスク比は、高血糖緊急症は1.64倍に、低血糖は1.65倍にそれぞれ上昇した。
糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧症候群、低血糖への影響をはじめて解明
気温30℃で糖尿病合併症で入院するリスク1.6倍超に増加
気温30℃で糖尿病合併症で入院するリスク1.6倍超に増加
出典:東京医科歯科大学、2022年
Managing Diabetes in the Heat: Potential Issues and Concerns (Endocrine Practice 2010年5月-6月)
Getting hot about diabetes--Repeated heat exposure improves glucose regulation and insulin sensitivity (Acta Physiologica 2020年6月20日)
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野
Association between heat exposure and hospitalization for diabetic ketoacidosis, hyperosmolar hyperglycemic state, and hypoglycemia in Japan (Environment International 2022年9月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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