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2012年02月27日
FMD低値は糖尿病発症の予測因子。ドックなどでは精密検査を
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- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症
動脈硬化を最も初期の段階で発見できるとされるFMD検査。本人は「自分の血管はまだ健康」と思っていても、実際にFMD検査を受けると意外なほど結果が悪い割合が多いことも報告されている。また近年、FMD検査が糖尿病の早期発見につながることもわかってきた。人間ドックなどの検診における糖尿病関連検査は通常、空腹時採血により判定されるが、FMD値が低い場合、より詳しい検査などを受けたほうが良い可能性もある。
受診者へのアンケートでわかった予測と実測の乖離
――戸田中央病院総合健康管理センター
――戸田中央病院総合健康管理センター
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その結果、測定前に自分の測定値は「良い」または「境界域」と予測していた受診者の中にも、実測値が悪い人が少なくないことが示され、本人の“健康感”を過信すると動脈硬化の進行を見過ごしてしまう可能性が浮かび上がった(図1)。
FMD検査をきっかけに糖尿病の予防的介入
――JR仙台病院
――JR仙台病院
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例えば、JR仙台病院では循環器系疾患のスクリーニングを目的とした「脳と血管ドック」を行っており、そのメニューにFMD検査を取り入れているが、受診者本人が自覚していない糖尿病や高血圧、脂質異常症を、FMD検査をきっかけに見出だすこともあるという(図2)。
FMD低値は糖尿病発症の予測因子
――健康な閉経後女性を対象とした前向き研究
FMD低値が糖尿病発症の予測因子の一つであることは、海外からも報告されている。――健康な閉経後女性を対象とした前向き研究
一例として図3は2005年の Diabetes Care 誌に掲載されたデータだが、閉経後の健康な女性を対象とした前向き研究で、FMDを三分位に分け平均3.9年追跡したもの。ベースライン時の糖代謝には差がなかったにもかかわらず、3.9年間における糖尿病発症頻度は、FMD低値群が高値群に比べ7.2倍有意に高く、血糖値やBMI、運動習慣など糖尿病発症に関わる因子で補正しても5.4倍有意に高かったと報告している。
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人間ドックなどでFMD低値を指摘されたら、定期的な糖尿病の検査を
一般的な検診や人間ドックにおける糖尿病の検査は、通常、他の血液検査と同時に行う都合上、糖の負荷がかかっていない空腹時に採血する。そのため、境界域の糖尿病や、糖尿病発症前から進行している可能性のある動脈硬化を十分に把握できない可能性が残る。FMD検査を取り入れている人間ドックを利用し仮にFMD値が低いと指摘されたのであれば、定期的な血糖値やHbA1c検査のほかに、からだに糖の負荷をかけて糖代謝を調べる「75gOGTT」などのより詳しい検査を受けたほうが健康管理にさらに役立つかもしれない。
- 75gOGTT(Oral glucose tolerance test):
- 75gのブドウ糖溶液を飲んだ後、血糖値を何度か測定し、その変化から、糖尿病の有無を正確に判定する検査。同時にインスリン値を測定することで、インスリン抵抗性の有無や程度も把握でき、間接的に動脈硬化の進みやすさを推し量ることができる。
◇FMD関連情報:
- FMDは動脈硬化危険因子の集積を鋭敏に反映 CAVI・ABIとの比較
- 食後脂質異常が、食後高血糖よりも血管内皮機能低下に強く影響
- 肥満でEDの中年男性は生活習慣病未発症でも内皮機能が有意に低下
- ACS後の心リハによる運動耐容能向上は血管内皮機能の改善と相関
- DPP-4I追加と併用OHA別にみた内皮機能改善効果 FMDでの検討
- CADでは非糖尿病でも微量アルブミン尿出現率が高く、FMD低下と関連
- 上腕動脈IMT・FMDの同時計測で、冠動脈疾患リスクの層別化が可能
- DPP-4阻害薬の食後高脂血症改善を介した血管内皮保護作用
- 禁煙により酸化ストレスが低下し、血管内皮機能が有意に改善
- 糖尿病細小血管障害とFMD値が相関。短期加療による改善も評価可能
- 血管内皮機能は体温日内変動と相関するが、糖尿病ではその関係が破綻
- 心不全患者の心リハ。急性期のADL改善にも血管内皮機能が関与
- 糖尿病患者の冠疾患スクリーニングにFMDが有用
- 食事由来コレステロールよりはTGとアポB48が血管内皮機能に影響
- 直接レニン阻害薬の多面的効果 透析患者での血管内皮機能を改善
- DPP-4阻害薬の変更による血管内皮機能改善の上乗せ効果
- 塩分の多い食事は、食直後から血管内皮機能(FMD)を低下させる
- 血管内皮機能は血糖変動と逆相関し鋭敏に変化する
- 大豆イソフラボンがTGを低下させ、FMDを改善
- 「血管内皮機能検査」が診療報酬改定で新設される(厚生労働省)
- ミグリトールは冠動脈疾患併発糖尿病患者の血管内皮機能を改善する
- FMD低値は糖尿病発症の予測因子。ドックなどでは精密検査を
- 肥満2型糖尿病では、精神的ストレス軽減が血管内皮機能改善につながる
- 網膜症のある女性糖尿病患者は血管内皮機能(FMD)低下ハイリスク
- HDL-Cの血管内皮機能(FMD)保護作用は糖尿病で相殺される
- 仮面高血圧合併2型糖尿病では血管障害(FMDやPWV)が高度に進展
- DPP-4阻害薬は血管内皮機能(FMD)を改善する
- 脳や心臓の血管が詰まる前に。血管の若返りがわかる検査指標「FMD」
- 動脈硬化が早期にわかるFMD検査装置
- 血管内皮機能、FMD検査のユネクス
- 一般向けサイト 動脈硬化の進展を知る「FMD検査.JP」
[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所
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